日常#26
電気を消した部屋で、discordを繋いでしていたゲームを終わると、突然、部屋に一人になる。今の今まで笑いあっていた仲間の声はタップひとつで消えてしまった。便利だし、それがないともう生きていけないんだけど、電波に乗って、スマホが作る僕の友だちの声はなんだかその人の声じゃないような気がする。寝ようかとベッドを見ると夜がなみなみと溜まっていて、月明かりに照らされて慎ましく光っていた。グラスに一杯掬うと、とぷんと音がした。一杯の夜はこちらが飲み込まれそうなほど深く、澄んでいるかのようにみえて、藍色にも、くすんだ緑色にも、ワインレッドにも見えるのは都会の汚れだとかネオンだとかを吸っているからなんでしょうか。もちろん星なんて入っていない。グラスの夜を呷ると東京の排他的な孤独の味がした。我関せず。自己責任。人を見たら泥棒と思え。お腹に落ちた夜は全身に回って、意識の輪郭がぼやけて、やがて夜と同化した。
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