日常#74

傘を忘れた
忘れた、というのは若干正しくなくて、予報ではずっと晴れだったから積極的に置いてきたのだが、はやり梅の雨の頃は小さい折りたたみ傘を携帯するべきかもしれない
雨とつく単語には好きな言葉がおおい
梅雨や時雨や雨足や驟雨など、最初に名付けた人はどんな人なんだろう
雨の強さを雨足と表現した人はきっと雨に濡れて歩くのが似合う人に違いない
晴雨両用のシンプルな折りたたみ傘がほしい
雨足はさほどつよくない、ゲリラちょい雨って感じ
降り始めの埃くさい小雨が髪をくしけずる
図らずとも水も滴るいい男になってしまった

今日は傘を持っている、雨も降っている
外音取り込み機能を入れて「雨とカプチーノ」をBGMにして雨の音を聞いている
傘にバツバツと雨粒がぶつかる音が好きで雨の日は音楽を聞かないことや極小音で流していることが多い
外に出る=イヤホンをつけるというまでになってしまった近ごろのじぶんたちの行動を見つめ直させてくれるいい日だ
また、傘のなかに香水をさげておくと雨の日が心地いいので、頭の上に金木犀を咲かせている。しかし、前に傘を使ったあとによく乾かしていなかったせいで生乾き臭と手を繋ぎ、頭上に咲くはラフレシアである。ド畜生が。


バイト代がはいった
二回りくらいひろい机を買った
自分にとって物欲や購買欲というのは血液のように存在していて、それを満たすことはもちろん心臓が拍動することと同義で、前のバイトを辞めてからこれまでなんだかずっと緩やかに死んでいるような感じだったのかもしれないと振り返って思う
他にも今すぐに必要じゃないけど、そのうち買いたいなのリストからいくつか買って、バイト終わりのマンションのオートロックを開けたときに宅配ボックスに荷物が届いていることを知らせるポーンという電子音を楽しみの一つとして生きている

日本酒や焼酎や梅酒を飲みながら、先輩方とちゃらちゃらと水面をなでるだけの話をし、お酒のことを教えてもらい、ご機嫌な外国人と会話をしているだけでお金を貰えるなんて、もうほかのバイトはできない
大学3年生になって、ゼミの付き合いや外食がふえたために必要なお小遣いも増え、焦って探したバイトがこの上なくドンピシャリだった
自室に帰ると日をまたいでしまうのが少しだけネックだけれど、次の日に大学がある夜は彼氏の家に寝泊まりさせてもらっているからそこも何とかなっている
彼氏が中野とかそっちの方に住んでいるので、付き合ってからはそっちの方によく行くようになった
中野に行ったのは彼氏とが初めてで「中野ってやっぱガチムチだらけなん?」と聞いたら笑われた
中野という街が特別な意味を持っているのはゲイの間だけであって、当然もう、キャップとハットの区別をなくした黄色い帽子を被った小学生たちも夕方なのについさっき顔を洗ってきたようにこざっぱりとしたお姉さんも鳩にパンをちぎって与えるおじいさんもいる
たまにあーTwitterでみたことあるホモだなぁ〜となる人がいるくらいで、至って普通の街だった


大学を卒業するためにいくつか興味のない講義の単位を取らなくてはならなくて、そのうちの一つにパソコンでデジタルコンテンツを作ろうというものがあって、それの作品発表をしにいくために今電車に揺られている
デジタルコンテンツを作ろうといっても本当に大したものではなくて、教授がつくったフォーマットにそっくりそのまま乗っかって、鼻くそ程度のオリジナリティを混ぜてちょっとおおきな鼻くそを作っている感じです
今から鼻くそを見せ合いに行きます
あなたの鼻くそはちょっとカピカピ、なんですね、鼻血とか大丈夫すか?(笑) あ、そうですか、大丈夫すよね、あっスッあーーー、はい(笑)、あ、そうすよね(笑)
あ、あなたの鼻くそはちょっとネチョってるんですね、風邪とか……? あーーーコロナとか最近また流行ってますもんね、11波?(笑)ですっけ?(笑)あっスッあーーー、はい(笑)
え? あなたは鼻くそ作ってない??? んすか? あーまぁ鼻くそッスもんね、はい(笑)あっスッあーーー、はい(笑)
ってことをしてきます
さようなら、さようなら

また書きます

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