ファッションCGのチーム体制
オムニスCGチームのリード、牛山です。
前回の記事ではチーム設立の経緯や実績についてお話ししました。
今回は、CGチームの中でそれぞれのメンバーがどのような役割で動いているかを説明したいと思います。
ファッションCGの量産
制作体制というのは、どのようなCGを作るかによってかなり変わってくる部分です。
オムニスのCGチームでは、下記のようにカスタマイズできるCGを作っています。
出典:Original Stitch
1つの生地が、複数のモデルに展開され、さらにパーツごとに書き出されます。1生地の制作にあたり、数十枚の画像が書き出され、それがさらに生地数分…。一度の制作で平均1000枚以上の画像を扱います。
そのため、実物の生地のデータ化などのアナログ→デジタルへの変換や、スクリプトによる自動化など、通常のCGプロダクションとは制作体制が異なるものになっています。
チームの制作体制
では、さっそくチームの体制を図解にしてみたいと思います。
現状のチームにおいて、1つの案件が回るまでを、人数や役割で色付けしてみたものです。
リードの自分は、テクニカルアーティストを兼任しています。
Bizは、クライアントと意思疎通を行いクオリティを管理します。
テクニカルアーティストは、制作をスムーズに回すためのアイデアを出し、ルールにします。
エンジニアは、自動化を筆頭にさまざまな制作支援を行います。
そして、CGデザイナーや3Dモデリストは、実際のCGの制作を行います。
それぞれの役割
3Dモデリスト
CG業界では、3Dモデラーという職種があり、ローポリやスカルプトなどで造形を行ったりしますが…
アパレル業界ではモデリストという名称で通っています。
3Dモデリストは、アパレルの知識を元に、パターンのシミュレーションにより形状を作成するので、直感的にシルエットを作成する3Dモデラーとはスキルが大きく異なります。
ただ単にシミュレーションするだけだと「カッコいいモデル」にならないため、様々な調整を行う事も多いです。
オムニスでは3Dモデリストも後述のCGデザイナーを兼任する事が多いです。
CGデザイナー
一般的なCGプロダクションでは、モデリング、モーション、コンポジット等を一通り扱えるジェネラリストのイメージかもしれません。
オムニスでは、2D3D問わず生地に特化した制作を行なっています。
スキャンによる生地の取り込みや、モニターと手元の生地の色差を修正したりなどの実物ベースの制作もあります。
Webを訪れた人が最後に目で見て確かめる部分のため、CGの画像から可能な限り実物を感じられるように制作しています。
テクニカルアーティスト(以下、TA)
各社、TAの解釈は様々です。自分自身でプログラミングを行いツールを作る人だったり、デザイナーの要望をエンジニアへ仕様化する人だったり、各ソフトの技術検証を行う人だったりします。
オムニスでは大量生産・自動化を前提としたワークフローを考案している
自分がこの職種です。プログラムは…書けません!
TAの事は知っていましたが、今日この記事を書くために各職種の定義をするまで自分がTAだとは考えていなかった…。
エンジニア
オムニスはBlenderを使って制作業務を自動化しています。スクリプトはPythonを使っています。
プロジェクトの納期間際に大量のBlenderファイルに重大なエラーが見つかった時でも、エンジニアのバッチ処理で数秒で解決しているのを見ると今でも感動ものです。
また、いわゆるバッチ処理とは違う、画像解析によるBlender内照明の明度の計算など、より複雑な処理も始めています。
Biz
クライアントと、制作チームの橋渡しを行います。
業界によってこの呼び方は制作進行だったり、規模の大小によってPMと呼ばれる事もあります。
オムニスの場合、データも実物の生地の受領もあるので、整理整頓の鬼になる必要があります。
複数の案件が同時進行していると、期日管理やクオリティチェック、コミュニケーションでどの部署よりも忙しくなります。
エンジニアも自動化の魔法が使えますが、Bizも、クライアントとのコミュニケーションによりプロジェクトそのものの方向性に影響を与える事が出来ます。
おわりに
オムニスの場合、大量生産かつファッションという通常のCG制作とは異なる業務を行っています。
とかくCGとは、何でもできる反面、カバーする範囲の広い分野です。
CGの中や外に様々な役割の人がいて成り立つものだと理解して頂ければと思います。