【人財育成論第8回】日本社会で大谷翔平を育てる方法①:大谷のマインドと能力
リアル二刀流。
アメリカ大リーグの野球選手の大谷翔平さん、本場アメリカでリーグMVPを受賞するなど歴史的偉業を成し遂げました。その成績はここでは触れませんが、彼のような人材を輩出したことに自信を持った日本人も多いでしょう。
その成功を分析すると様々なところがあげられます。なんといっても、まずは恵まれていたという点は触れないといけません。
恵まれていた点はというと・・・・
・野球経験のある父親大谷徹(黒沢尻工で外野手→三菱重工横浜野球部で外野手、26歳で引退。トヨタ自動車東日本に転職、長女生誕後は岩手に帰郷、2交代制の仕事)、身長182cm
・バドミントン選手の母親大谷加代子(中学時代、団体で全国準優勝→高校時代インターハイ→横浜立野高→三菱重工横浜バドミントン部)、身長170cm
・兄は長男龍太(前沢高→水沢駒形倶楽部→高知ファイティングドックス→トヨタ自動車東日本硬式野球部にて都市対抗出場、コーチも)、身長187cm。姉は長女結香(花巻東野球部部長流石裕之さんと結婚)、身長168cm。
さらに、お父さんが指導者であったこともあげられます。さらに、幼い時に行っていた水泳は肩肘や肩甲骨周りの柔らかさ、肩の可動域には影響があったとも言われています。ただし、「大谷は恵まれていた。その後の指導者も大谷を大切に育てた」というだけでは本質的な部分が見えてきません。後天的な部分を見ていく必要があると思います。
【要因1】好きなことをしていること
大谷さんにとって大事なのは野球が好きであること、です。キース・ワーマンさん(15、16年にはチーム統括本部国際業務担当であった)が「試合後に食事に行ったことを覚えています。彼は私にいろんな質問をぶつけてきました。明らかに特別な才能を持っていて、人間としても素晴らしい。もっとうまくなろうとハングリーな気持ちがありますね」(参考:佐々木亨「道ひらく、海わたる大谷翔平の素顔(扶桑社BOOKS文庫)」)と答えたように、かなり野球を好きであることが明らかになっています。
野球が好きで、野球の面白さ、奥深さに気付いているのだと思います。野球のためなら犠牲にするものがたくさんあって、先輩に誘われても揺らがなかったと言われています。キャリアの面では、好きなことを仕事にできること、仕事の中に楽しさを見つけられることこそ、非常に大事なファクターであることは皆さんも気づいていると思いますが、本当に大切なことです。
【要因2】挑戦するマインド
そして、なんといっても挑戦するマインドです。高校3年次、大リーガーになることの大変さをわかっていても、挑戦する気を持ち続けたこと、特に、ドラフト指名され、日ハムのスカウトたちに説得されても、「挑戦することが大事」と発言したその心意気です。
さらに、大リーグ入り前年、面談で栗山監督に対して大谷は「成功するとか、失敗するとか関係ない。やってみることのほうが大事」と言っています。彼にとっては挑戦することに価値を置いていることがわかります。
【要因3】その思考力
野球を楽しむ中で芽生えた探求心を支えたのが思考力でしょう。物事を掘り下げて考えるところをインタビューを聞いていると節々に感じます。特にあるインタビューでこんなことを言っています。
「寮生活をした高校の環境は、やっぱりよかったと思います。ちゃんとやるようになりましたね。ちゃんと考えて、ちゃんとやるようになりました。何度も怒られましたよ」
やらされる練習ではなく、自分からやる練習。高校時代にこうした指導者の下で過ごしてきました。そしてプロでの指導者の栗山監督は大谷に対して「宿題を与えれば勝手に成長する」と発言するタイプの指導者でありました。自分で考えて思考錯誤を重ねる。大谷さんの自主的な探究心はクリスマスイブの夜も、合宿所で1人打撃練習していたということも有名です。
そして、花巻東の佐々木監督から聞いた「先入観は可能を不可能にする」という言葉は大谷さんに影響を与えたそうです。この言葉は色々考えさせられます。意味合いとしては常識を疑うことの重要性を言っていると思われます。ただよく考えてみると、先入観を排するためにはまず第一に先入観を把握し、評価し、疑い、そして、先入観を乗り越えるという「思考」が必要です。
好きなことだから挑戦できる、そして探求を続けられる。それを支えたのが思考力。まさにこれらが大谷さんの成功の要因だと思っています。
今後の活躍も期待したいところです。
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