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人的資本の可視化の前提~【解説】人的資本可視化指針(第2回)

人的資本可視化指針がついに公表されました。皆さんから「どうすればいい?」「(KPIの専門家なのだから)KPI設定教えてください」などと言われますが、今私が言えることは人的資本について理解を深め、可視化の前提を知り、対応することだと思っています。

可視化の前提とは何か?

可視化には前提、その前にやらなければいけないことがいくつかあります。具体的な活動は以下のようになります。

1.人的資本への投資について、経営者自らの明確な認識やビジョンを持つ
2.ビジネスモデルや経営戦略を明確化すること
3.経営戦略に合致する人材像を特定・イメージすること
4.そうした人材を獲得・育成する方策の実施、指標・目標の設定などを企画

ということが求められています。1と2は経営戦略、3と4は人事戦略の実施と分けられると思います。1・2はここでは解説しませんが、大事なのは3になるかと思います。

筆者作成

これら4つが示すように、明確な認識や ビジョン、戦略人事を徹底させることが重要なのです。

経営戦略に合致する人材像を特定・イメージすること

特に大事なのは、経営戦略に合致する人材像を構想、企画、具体化、共有、調整、イメージとして作り上げることです。しかし、これがなかなか難しいものです。
本音と建前の中で生きている日本社会の我々にとって、理想の人材像はどうしてもあいまい、誰も傷つかない、標語的なものになりがちだからです。それが悪いともいいとも言えません。そういった傾向が強かったということです。

しかし、人的資本時代は、その経営戦略に合致する人材像が人的資本可視化の背景にあること、そこが投資家から理解されないといけません。

ではどうするか???

社員の中に、会社を代表する、理想とする人物はいるはずです。そのモデルをもとに考えることをお勧めします。大事なのは、理想とする人物のコンピテンシーを具体化することです。

コンピテンシーとは優れた成果を創出する個人の能力・行動特性です。

筆者作成

しかし、今活躍している「社員のモデル」が将来のモデルになるかは注意が必要でしょう。将来の事業環境を考え、どういうビジネスが行われ、役割がどういったものがあり、そこで活躍できる人はどういうった条件が必要か?を考えることが一番大事です。

となると難しい・・・・。エッジのきいた人材像を内部で企画するのが難しいのなら、外部の支援を受けるといいかもしれません。

単なる人事情報の可視化ではだめ

人的資本を可視化することの目的は、人的資本への投資のインプット、アウトプット、アウトカムの情報を整理し、明確化し、相手に分かりやすく伝えることです。「人的資本について単に関連する非財務情報を可視化するのみでは競争力強化や企業価値向上にはつながらない」とも言われています。
可視化の前提、いわゆる「人材戦略」が取締役会や幹部レベルで議論されることが大事です。人事部長にお任せパターンではいけないということです。
1.経営層がきちんとコミット・実施
2.従業員の理解と共感を得る
3.PDCAをまわし、定着・浸透させていく
このプロセスが大事なのです。

・人材戦略に関する経営者の議論とコミットメント
・従業員との対話
・投資家からのフィードバックを通じた経営戦略・人材戦略の磨き 上げ
の一連の循環的な取組みはとっても、とーっても難しいでしょう。しかし、投資家にとって、戦略の実現可能性を評価するための判断基準になるわけですから、しっかり「前提となる4つの作業」に向き合っていくことが必要でしょう。

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