ビットコインに学ぶブロックチェーンの真髄#1
昨今話題のブロックチェーン技術について、その概要と詳細な仕組みを10 回くらいの連載を通じて詳しめに解説していきます。
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ブロックチェーンを知るためにビットコインを知る
いきなりですが、皆さんビットコインをご存知ですか?
「いや、ビットコインじゃなくてブロックチェーンが知りたいんですけど!」
その気持ちはよくわかります。しかし、ビットコインとブロックチェーンは密接にかかわっているものであり、ビットコインを知ることはブロックチェーンを知ることにも繋がります。したがってこの記事では主にビットコインを題材にブロックチェーンを説明していきます。物事を理解するうえで一番大切なことは、基礎知識を体系的に身に着けることです。そしてブロックチェーンでいえばそれは、ビットコインを理解することなのです。
ビットコインの概要
ビットコイン(Bitcoin, 単位表記:BTC)は2008年にサトシ・ナカモトという人物によって考案されたデジタル通貨です。名前は日本人のようですが、その正体は明らかになっていません。サトシ・ナカモトがビットコインの設計を記した論文を暗号理論に関するメーリングリストに投稿したことをきっかけにビットコインのシステムが構築され、2009年1月から実際に稼働し始めました。
ビットコインは通貨なので、ユーザーはビットコンネットワークにアカウントを作成することで、ビットコインを受け取ったり、他のアカウントに送ったりすることが可能です。
ビットコインの登場をきっかけに、イーサリアムやネムなどのようなビットコインを模倣し様々なデジタル通貨(アルトコイン)が登場しました。それらはすべてビットコインと同様に暗号技術に依拠した構造となっていたため、ビットコインやアルトコインを総称して暗号通貨(Cryptocurrency)と呼んでいます。*
つまり、現在存在する無数の暗号通貨の元祖となるのがビットコインなのです。そしてビットコインのコアにあたる技術がブロックチェーンなのです。
*ビットコインやアルトコインの名称は国や組織によって様々です。日本での正式名称は暗号資産となっていますが、国によってはデジタル資産(Digital Asset)、仮想資産(Virtual Asset)と表記する場合もあります。一方で開発者コミュニティでは国内外問わず暗号通貨(Cryptocurrency)が一般的です。
ビットコインって何がすごいのか
ここからは円やドルなどの法定通貨と比較しながら、ビットコインの画期的なポイントを説明していきます。
さて、ビットコインと法定通貨の決定的な違いは何でしょうか?
それは、「中央で管理する機関が存在するかしないか」です。
法定通貨は管理主体が存在します。たとえば日本円であれば、日本銀行が銀行券の流通量をコントロールして円の価値を安定させています。これは日本円が中央集権的に管理されているということを意味します。
一方でビットコインの場合は、法定通貨のように中央で管理する機関が存在しません。その代わりに世界中のコンピュータがみんなでビットコインの管理を行っています。ここで言うビットコインの管理とは「誰が誰に何ビットコイン送った」という取引情報(トランザクション)を一つの帳簿に記入していくことを指します。
つまり、ビットコインにおいては、世界中から送られてくるトランザクションをみんなで協力して一つの帳簿に記入していくことにより、ビットコインという巨大なデジタル通貨システムを維持しているのです。
このように聞くと、「そんな他人任せでちゃんと機能するのか?」や「ハッキングなどの被害に合わないのか?」などといった疑問が湧いてくるはずです。詳しい仕組みは今後説明していきますが、とりあえず実績だけ提示すると、ビットコインは中央管理主体を持たないにもかかわらず、システムがダウンしたことは稼働以来一度もありません。
国内のメガバンクがシステムダウンを起こして取引不可能な状態を頻繁に発生させていることを考慮すると、システム稼働以来10年以上ダウンしていないという実績はビットコインの安定性を象徴する指標であると言えます。
このように、中央管理主体が存在しないにもかかわらず自律してシステムが稼働すること、つまり自律分散型であることがビットコインの最大の利点でもあります。そしてこの自律分散型システムとしてのデジタル通貨を実現させたのがブロックチェーンという技術なのです。
ビットコインとブロックチェーン
ビットコインとブロックチェーンは別のものと思われがちですが、それぞれが登場した時系列は以下のようになります。
ビットコインが世に出る
↓
一部の人々が自律分散型システムの利点に気づく
↓
それを実現させる技術の仕組みがあることに気づく
↓
それらの一連の仕組みを「ブロックチェーン」と呼ぶことにする
したがってブロックチェーンの源流はビットコインにあると言っても過言ではないのです。
おわりに
さて、ここまでブロックチェーンとビットコインの関係やその特徴などに就いてざっくりと説明してきましたが、ここまで読んでもあまりピンとこないと思います。
次回以降のnoteではブロックチェーンがどういった働きをするのかを例示しながら説明し、その後ブロックチェーンを構成するコア技術を詳しく掘り下げていきます。この連載を一通り読むことで、ブロックチェーン(ビットコイン)を脳内で稼働できるようになるはずです。
第2回目はこちら
このシリーズは『あたらしい経済』で私が執筆した「ブロックチェーンは今までのシステムと違って何がすごいのか〜ノンプログラマーでも解るブロックチェーン入門」シリーズを大幅に加筆修正したものになっています。
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