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『お金2.0』の要約

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽、幻冬舎)の比較的良い要約。ビジネスに関心がある人におすすめ。


お金の正体

現実は、お金・感情・テクノロジーの3つのベクトルから成り立っており、どんな組織やサービスもこの3つがなければ成功しない。お金が普及し始めたのはたった300年ほど前である。当初は交換のツールの役割しかなかったが、資本主義が発達するにつれてお金はお金を生み出すものとして捉えられるようになった(手段の目的化)。現在の中央銀行が通貨をコントロールする仕組みはわずか100年前にできたものである。

つい最近、ブロックチェーン技術を使った仮想通貨のひとつであるビットコインが発明され、経済に大きな影響を与えた。しかし、仮想通貨については世論が大きく分かれており、通貨と認めない人も多い。法定通貨と仮想通貨は全くフレームが異なるものであり、区別して捉える必要がある。

経済には明確な特徴とメカニズムがあり、様々なサービスの市場や組織の根底には、普遍性を持った構造が隠れている。経済とは、本能的欲求・金銭欲求・承認欲求の3つからなる現代社会の欲求を起点にしたインセンティブのネットワークである。その特徴は、所得や消費において自動的に格差が発生、拡大してしまうこと、そして繋がりが緊密になるほど不安定性が増すことの2点である。サービスを簡単に作れるようになった現代では、経済は読み解く対象から創り上げる対象に変わってきている。

経済システムは自動的に拡大していく仕組みを持つ必要がある。成功している経済システムには、社会的欲求を満たす報酬が明確であること・時間によって変化すること・実力と運の2つの要素を併せ持つこと・ヒエラルキーが可視化されていること・参加者がコミュニケーションをとれることの5つの共通点がある。上記に加え、持続可能な経済システムを創るには、そのシステムの寿命を考慮することも重要である。完璧なシステムは存在しないので、そのシステムの寿命が来たときに乗り換えられる選択肢を用意する必要がある。そしてその寿命は参加者が共同の理念を持っていると長くなりやすい。ビットコインは以上の点をうまく考慮して設計された成功例のひとつである。また、これらの話は会社やサービスなどの具体的な事例に当てはめて考えることもでき、世界的な企業やSNSなどのサービスは完璧に上記の点を満たしている。つまり、アイデアのみで勝負する時代から経済システム全体で勝負する時代に変わってきているのである。

経済システムと脳の報酬系の仕組みには深い関わりがある。上記の経済システムの特徴はすべて脳の報酬系を刺激することにつながっている。また、脳の報酬系をうまく利用した例としてはゲームが挙げられる。

経済は自然と根本的に同じ構造を持っている。自然の特徴は「絶えずエネルギーが流れるような環境にあり、相互作用を持つ動的なネットワークは、代謝をしながら自動的に秩序を形成して、情報を内部に保存することでその秩序をより強固なものにする。」であり、これは経済システムにも適用可能である。結局のところ、あらゆるシステムは構造として同じものを持っており、自然に近い構造のものほど世の中に浸透しやすい。こういった個が複数個集まってできる組織の構造をどう創っていくかという創発的思考が今後重要になってくる。


テクノロジーが変えるお金のカタチ

社会は中央集権から分散型へ移行しており、仲介者の価値は無くなりつつある。そうすると、経済システムそのものをデザインできる人が勝てる時代になる。そこでは企業側は個人と個人をつなぐ経済を設計してそのサポートに徹することが賢明である。分散化と自動化がもたらす自律分散型の経済システムが現在の状況を大きく変える。お金はコモディティ化し、価値がなくなっていく。大事なのは、経済圏を作ってうまく回すノウハウである。

価値主義とは何か?

資本主義が進み、お金はツールから増やす対象へと変化し、金融経済と実体経済の乖離が激しくなってしまっている。資産経済が拡大し続けているため、資金調達が容易になり、お金の価値が相対的に下がっている。また消費経済と資産経済のバランスも悪くなっている。その結果お金そのものではなく、その根源である価値が重視されるようになる。お金は価値をやり取りする一媒体にすぎず、価値を高めておけば色々な形でアウトプットできるようになる。つまり、価値の保存方法を自分で選択できるようになるのである。

価値には実用的な価値と内面的な価値(感情)と社会的な価値の3つの分類があるが、資本主義では実用的な価値しか測れなかった。内面的な価値を可視化できるようになったことにより、評価経済が一部で発生しているが、それらはまだ単なる関心経済にすぎず、関心に価値があるとは限らない。今後の仕事は利潤ではなく価値を生み出すことが目的になっていく。そう考えると、政治も経済も価値を生み出していることに変わりはないのでその区別がなくなる。ベーシックインカムの導入により、お金のコモディティ化は急速に進み、価値観は大きく変わる。将来、経済システム自体も分散化するため、複数の経済の中から自分に合った経済を選べばよくなる。現状、個人が収入を得ることはできるが、資産を築くことは出来ない。だから著者は時間が資産として機能するような経済を作っている。

お金から解放される生き方

物質的な欠乏が解消された現代では、精神的な充足を求めることに熱心になる。したがって、人生の意義や目的を他人に与えられる存在が価値を持つようになる。内面的な価値の創造は、ミレニアルズより上の世代には理解しがたいのでチャンスである。何かに圧倒的な熱量を持って打ち込むことが結果的にその人の価値を上げる。まず、一日中やっていても飽きないことを探そう。稼ぐためではなく、自己の価値を高めるために仕事をする。そういう観点で仕事を選ぶことが重要である。

加速する人類の進化

上記の経済の枠組みと、大企業の莫大な資産により、いままで投資対象にならなかった最先端の技術研究に資金が流れ、革命的なイノベーションを起こすかもしれない。国家の役割は縮小していき、企業が代替する可能性はおおいにある。政治と経済の垣根がなくなるのと同様に、宗教と経済の境界もなくなっていくだろう。SNSを選ぶように現実自体も選ぶようになるかもしれない。お金は単なるツールにすぎないと肝に銘じて、現状に疑問を持ち続け、新たな枠組みを想像し続けることが大事である。



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