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ビットコインに学ぶブロックチェーンの真髄#2 ブロックチェーンの全体像

昨今話題のブロックチェーン技術について、その概要と詳細な仕組みを10 回くらいの連載を通じて詳しめに解説していくシリーズの第2回目になります。

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ブロックチェーンの全体像をイメージする

さて、ビットコインについての前提知識と、ブロックチェーンとビットコインとの関わりを理解していただけたところで、本題のブロックチェーンについて触れていきます。

「ブロックチェーンが実現した分散型台帳技術によって、自律分散型のデジタル通貨システムが誕生しました」

まだそんなこと言われても、いったい何のことやらさっぱり想像もつかないと思います。まずはブロックチェーンについて、その全体像が想像できるように説明してみます。

まずネットワークを想像してみてください。世界中のスマホやパソコンが繋がって、蜘蛛の巣のようになって地球を覆っている、皆さんも想像しやすいインターネットのイメージです。そう、それがまずブロックチェーンの基盤です。

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ただその繋がり方が、従来の一般的なインターネット上のサーバーやデータベースなどと異なります。もちろん通信にはインターネットを利用していますが、どこか中央で管理するサーバーにみんなが繋がっているのではなく、個々のパソコン同士が個別に繋がってネットワークを作っているのをイメージしてみてください。

自分のパソコンが友達のパソコンと繋がって、その繋がりが世界中に連なってみんなが繋がっているような状態です。

そしてそのネットワーク上で、正しい取引情報を記録した1つの帳簿を、みんなで共有します。もしこのネットワークにサーバーが存在し、そこにデータが集中していれば、各々がそのサーバーを参照することで正しい帳簿を共有できますが、あいにくこのネットワークにはサーバーはなく、個々のコンピューターが平等に接続されています。したがって個々のコンピューターが正しく帳簿を共有できるような仕組みが必要になります。

この仕組みについては追々説明しますが、とりあえずここでは帳簿が共有できているとします。

さらにこのネットワークには毎秒一定量のトランザクションが発生しています。ネットワークを構成する私達はそれらのトランザクションを一定時間でまとめ、それらをすべて記載したひとつのページのようなもの(ブロック)を作り、共有している帳簿にそれをつなげていきます。

ここでもそれぞれのコンピューターが好き勝手に取引情報を記録してしまうと、取引の二重計上や、コンピューターごとに追加されるページの内容が異なるなどといった問題が起こってしまいます。このような問題を解決する仕組みも必要になってきますが、これについても後ほど説明します。

とても抽象的ですが、このようにみんなが平等に繋がって、同じ帳簿を共有して、そして過去から未来までページをどんどんと繋げていく、このデータの管理の仕組みが、ブロックチェーンなのです。

ここまでがブロックチェーンの全体像の説明になります。


もっと分かりやすくたとえると

ブロックチェーンの全体像がつかめたとは思いますが、目に見えない話が多いので、次はもうちょっと具体的な例示をしながら説明していきます。

さて、あなたは先程説明したようなネットワークが存在する世界にいるとします。

そのネットワークの中で例えばあなたが友達のAさんから「お金を貸して欲しい」と言われて、100万円を貸したとします。もしそれが普通の銀行振込やネットバンキングで貸したのであれば、銀行に振込履歴が残ります。仮にAさんが後になって「100万円をあなたから借りた覚えはない」と嘘をついても、銀行の振込履歴がそのAさんの嘘を証明してくれます。

しかし、このネットワーク上には銀行もありません。つまりAさんが「借りていない」と嘘をついても、その嘘を証明する方法がありません。このような状態では、たとえこのネットワーク上に送金システムを作ったとしても、誰も使おうとはしないでしょう。

そこで、このネットワークは特別な仕組みを適用します。その仕組みとは「ネットワークに繋がるみんなが全ての取引を確認する」というものです。

この仕組みにより「あなたがAさんに100万円を貸した」という取引の情報を、世界中で繋がる人たちが確認し、それぞれのコンピューターに記録してくれます。

こうすれば、もしAさんが「借りていない」と嘘をついたり、Aさんのコンピューターに残っている取引情報を削除したりしたとしても、みんなのコンピューターには「あなたがAさんに100万円を貸した」という記録が正確に残っているので、Aさんが嘘をついていることを証明できます。

さて今度はあなたが見ず知らずのBさんにお金を貸したとします。

でもその見ず知らずのBさんは友達のAさんと違ってあなたは一度も会ったこともない人です。Aさんよりもさらに信頼できません。でもあなたはそのネットワークを介すことで安心してお金を貸すことができます。なぜならたとえBさんが嘘つきだったとしても、世界中のみんなが確認してその取引を見張ってくれているからです。

ちなみにこのネットワークにはもう一つの特殊な仕掛けがあります。それは「このネットワーク上の取引を、帳簿の1ページ目から現在のページに至るまで、途中で書き換えられないように繋げてく」というものです。

この仕掛けのおかげで、あなたがAさんにお金を貸したことも、そしてさらにBさんにお金を貸したことも、さらに他の人たちが色々な取引をしたことも、時系列で繋がっていきます。

みんながその繋がった取引の履歴を持って、確認しているので、一部の人々が書き換えようとしても嘘がばれてしまいます。このような仕組みだからこそ、みんなが安心した取引をすることができます。

このようなデータ管理ネットワークそのものをブロックチェーンと呼んでいます。このように考えると、ブロックチェーンというネットワーク上に「送金システム」というアプリケーションを実装したものがビットコインであると言うことができます。

おわりに

さて、ここまで説明すれば、ブロックチェーンの全体像がなんとなくイメージできたのではないでしょうか。ブロックチェーン上では中央で国や銀行が管理しなくても取引を成立させることができる、だからブロックチェーンの仕組みを使えば国や銀行が管理しなくても価値のある「デジタル通貨」を作ることができるのです。

今回はお金を例に出しましたが、この仕組みはもちろんお金の取引以外にも応用できます。ブロックチェーンを利用することで国や企業のような強く大きな組織を介さなくても、あなたの大切なものを扱うことができるようになります。

そしてここまでの説明を通じて「ブロックチェーンのイメージはできたけど、それは具体的にどんな仕組みになっているのだろうか」と疑問が生まれてきたと思います。

ブロックチェーンは以下のようないくつかの技術と仕組みによって構成されています。

・P2P通信
・暗号技術
・コンセンサス・アルゴリズム

これらの技術がどう掛け合わさってブロックチェーンを成立させているのか。次回以降の連載でしっかりと解説していきます。


このシリーズは『あたらしい経済』で私が執筆した「ブロックチェーンは今までのシステムと違って何がすごいのか〜ノンプログラマーでも解るブロックチェーン入門」シリーズを大幅に加筆修正したものになっています。

Web illustrations by Storyset

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