半分実話半分作り話「言いたくても、やりたくても、できないこと。」第13話 図書館
皆さんは普段から、図書館に通われたりしますか?
僕は本屋同様、昔から好きな場所です。
しかし、幼い頃から文字を読むのが苦手なため、小説を借りても返却期間内に読み終わったことが無く。
読めないまま、返却することが多いです。
その日は気分転換のために、図書館へ訪れていました。
有名な作品でも読めば、新たな発想というか、ネタ探しのためにも図書館に来たのですが。
どれも難解な作品に感じて、今日は本を借りるのをやめようかと思っていたころに、それは起きました。
僕の後ろを制服姿の男子高校生と女子高生が、ペチャクチャ喋りながら、通り過ぎていきました。
そして、目当ての本棚に着くと二人の話は盛り上がっていきます。
「あのさ、漱石とかどう? 面白いと思うんだけど」
「漱石ならもう読んだよ! すごく良かった!」
「そっか! じゃあさ、こっちはどう? 太宰とかさ」
「あ! 前から読みたいと思っていたんだよ!」
その二人の話を隣りで聞いていて、僕はこう思いました。
(この距離感……まだヤッてないな。でも、”アオハル”ぽくてすごく好き)
と心の中で、呟いておりました。
また見ていて、とても心が穏やかになります。
あんな時代、もう僕には無いから……と。
しかし、その二人を見て、ひとりの老人が注意します。
「あのねっ! 君たち、ここをどこだと思っているの!? 図書館だよ! 黙って本を読みなさい!」
見たところ、僕の父と同じぐらいの高齢者でした。
言っていることは、間違っていませんが……二人の話し方は、そこまで大きな声だとは感じませんでした。
我慢できなくなった僕は、注意していたおじいさんに向かって、怒鳴り声をあげました。
「ちょっとぉ! まだ若者がイチャついている途中でしょうが!」
これには、高校生カップルも、おじいさんも黙り込んでしまいました。
しかし、僕は話を続けます。
「いいですか!? 漱石や太宰を愛する文学男子と文学女子が今、イチャイチャしているんですよ。想像力を働かせてください!」
僕の言っていることが理解できないのか、おじいさんは首を傾げます。
「君は一体、なにを言っているんだ?」
「だ~か~ら! この二人が燃え上がったら、ホテルへ行くかもしれませんよね? つまり将来二人の間に赤ちゃんが生まれる、可能性があるんですよ」
「はぁ……」
「文学を愛する二人から、生まれたとなれば! きっと太宰や漱石を超える、文豪が誕生するかもしれないと言いたいのです!」
僕の勝手な妄想に振り回された高校生カップルは、顔を真っ赤にしていました。
特に彼氏さんが。
「あ、あのぉ……さっきから勝手に言ってますけど! 僕たちまだ付き合ってないですから!」
「え? そうなの? ごめんなさい……」
この後、図書館の司書さんが現れて僕は、図書館を出禁にされ、警察にも通報された……。