[サチ]ぬかを買う、たけのこを茹でる
「タケノコいる?」
バイト中にお客様に声をかけられた。
聞くところによると、「今朝採ったばかりの立派なタケノコ」だそう。
おお、国産タケノコじゃん。高級品。
しかもタケノコは大好物。これは喜んで頂戴しよう。
後先考えずにホイホイもらったが、車から降ろされたタケノコちゃんのサイズに驚愕。
でかい、でかすぎる。人間の赤子くらいある。
こんなサイズのタケノコを茹でられる鍋は家にはない。
しかしこの時すでに、私の頭はタケノコパーティーだったので、そんなことを考えていられなかった。
「ありがとうございます!」と元気に返事をして、タケノコを受け取った。
こうして、残りのバイトの時間は「もらったタケノコちゃんでどんな料理にしようか」とニヤニヤ過ごした。
帰宅後
でかいわ。明るいところでじっくり見ると余計でかいわ。
私の指先から肘よりも長い。ずっしりである。
これが全部私の胃に収まるのだ。わくわくが止まらない。
まずは皮をむいていく。
これが硬い。指が持っていかれそうになる。
だが、美味しく食べるには耐えねばならぬ。
これは試練だ。この試練を乗り越えた先に広がるのは一面のタケノコ。
むふふ。笑いが止まらない。
そう自分に言い聞かせ、おりゃー、どりゃー、と必死に皮をむく姿を、飼い犬が不思議そうに眺めていた。
ひととおり皮をむき終えると、そこには見慣れたタケノコがいた。
皮だった。ほぼ皮だった。なんなら可食部たぶん全体の3分の2だった。
実は生まれてこの方、皮付きタケノコなど見たことがなく、スーパーで売っている水煮のタケノコサイズはもともとこの大きさなのだと初めて知った。
私の大量タケノコ計画が……。
気を取り直して、皮をむいたタケノコをそれっぽい大きさにカットしていく。
家の一番大きな鍋にギリギリ収まった。セーフ。
タケノコ全体がかぶるくらいの水を入れ、ぬかを足す。
実は生まれてこの方、ぬかを見たことがなかった。
勝手にネチョネチョのまま売ってると思い込んでいたため、漬物コーナーで無駄に探し回ってしまった。
ぬかって最初は粉状態なんですね。初めて知りました。
「テープでいいです」とぬかだけ差し出す女子大生、レジのお姉さんは何人くらい出会ったことがあるのかな。
これを鍋に好きなだけぶちまけたら、沸騰させた後弱火で40分ほど茹でていく。
その間あくを取る。ひたすらあくを取る。
ぬか臭だかタケノコ臭だかわからない臭いに包まれながらあくを取る。
竹串をぶっ刺して手ごたえがなくなるくらいまで柔らかくなったら、火を止める。
このまま一晩置いて、あく抜きが完了するようだ。
現在夜の11時。
最後に一言どうしても言いたい。
こんな夜更けに私はなにやってんだ。