一冊で終わるおもろ漫画①

文庫版で一冊というものも含みます。
こういうテーマであまり紹介されていないものを選んだつもりですが被ってるものもあると思います。
年代、ジャンルはバラバラです。
もっとたくさん紹介したかったのですが体力がもたなかったので元気なときにまた別で記事あげていきます。

美貌の果実/川原泉

ブドウの収穫とワインの仕込みを目前にして、秋月家の母娘は途方にくれておりました。
なぜなら、突然の交通事故で父と兄を一度に失ってしまったからです。
気をとりなおして働き始めた二人を陰ながら助ける為に、葡萄の精が現れて………。
軽快な中にほんわかとした優しさとせつなさが残る、川原教授の愛と家畜と作物の感動物語!!!
3部作「愚者の楽園」「大地の貴族」他「架空の森」「森には心理が落ちている」「パセリを摘みに」の3作を収録。

あらすじは表題作の「美貌の果実」のものです。
上記のあらすじには書かれていませんが、ワイナリーと取引の交渉のために訪れた酒販メーカーの社長と娘が登場します。
一見なんそれとしか思えないこの物語を一つにまとめるのがこの父娘です。
「葡萄の精」というファンタジーな存在が登場するにも関わらずとっちらからずにラスト付近では家族の圧倒的な断絶を一言で見せつける、しかもそこにいやらしさがない。
川原泉様様です。

美貌の果実/川原泉 1995/9/19 白泉社 P129

他に収録されている短編も全て傑作で、それぞれについて語ろうと思うとそれだけで記事が書けるほどです。
その中で自分が特に好きなシーンについてあらすじを全く説明せずに画像だけ貼り付けておきます。
意味はわからないと思います。

<架空の森>
私が初めて漫画で泣いたシーンです。

美貌の果実/川原泉 1995/9/19 白泉社 P172

<森には心理が落ちている>
この話を読むと血液型に詳しくなります。

美貌の果実/川原泉 1995/9/19 白泉社 P202

amazonのリンクを貼るために検索したら同じタイトルの小林恵美のDVDが出てきてすごく懐かしかったです。

あどりぶシネ倶楽部/細野不二彦

とある大学の映画製作サークル「あどりぶシネ倶楽部」の監督、神野は商業作品を意識したエンターテインメントを志していた。
そんなある日、プロデューサーの片桐が長髪の美青年、佐藤をスタッフとして迎える。
当初は反目していた神野と佐藤だったが、やがて打ち解け合う。
優秀なカメラマンである佐藤の加入により、あどりぶシネ倶楽部は興行的にも成功を収めるようになる。
そこへ「神野ファン」と称する女子大学生、沖梓が現れる。神野は次第に彼女に惹かれてゆくが……。

『さすがの猿飛』でお馴染みの細野不二彦の作品です。
「ファインダーさえのぞいてなければフィルムを回しているなんて思わないらしい」
という百理ある理論を元に、通勤ラッシュ時の駅のホームでキャストが派手に喧嘩してその様をバッグにカメラを潜ませてゲリラ撮影をぶっかます。
そんなのワクワクするしかないでしょう。

あどりぶシネ倶楽部/細野不二彦 小学館 1986/9/1 P24
あどりぶシネ倶楽部/細野不二彦 小学館 1986/9/1 P25

ちなみにこの漫画を知ったのは『金魚屋古書店』六巻です。
この話もまあアツい。
アツいポイントを話すとネタバレになってしまうので避けますが、気になる方は読んでみてください。

金魚屋古書店第6巻/芳崎せいむ 小学館 2007/12/31 P74

ヘヴン/遠藤淑子

二十数年前の「戦争」によって荒廃した世界。陸軍を辞めて求職中のマットは、偶然から人型ロボット・ルークのオーナーとなる。
2人は巻き込まれた事件を通じて、人間性の喪失を目の当たりにする一方、荒廃した世界における希望を見つけることとなる。

文庫版で一冊、単行本だと二巻になるので少しズルな気もしますがこれは本当に傑作なのでどうしても紹介したかったです。
なんでこれがハリウッドで映画化されていないのか、未だに訳が分かっていないです。
二部構成になっており、上記のあらすじの内容は一部にあたります。
二部では戦争前に話が戻り、なぜルークが作られたのか、製作者がどんな思いでルークを作ったのかが描かれています。
ヘヴンについて語ろうと思うとめちゃくちゃ長くなってしまうのであまりダラダラ書くのは避けますが、アンドロイドものが好きな人にはとてもとても読んでほしいです。

これは少しネタバレですが、ルークは機能停止の確率が90%を超えると今までの罪を告白するように作られています。
宗教観が組み込まれたロボットという設定だけでも心掴まれるものがあるのですが、二部でそれが実装された経緯を知ったときにはもう・・・ね

ヘヴン/遠藤淑子 文庫版2010/1/15 白泉社 P47
ヘヴン/遠藤淑子 文庫版2010/1/15 白泉社 P47

読んだら必ず泣く漫画二冊のうちの一つです。
もう一つは西原理恵子の『ぼくんち』です。
(彼女は最近ちょっと色々良くない状況ではありますが。)

ネムルバカ/石黒正数

大学の女子寮で同室の<先輩>鯨井ルカ&<後輩>入巣柚実。バンド活動に打ち込む先輩は、いつも金欠ピーピー状態。これといって打ち込むもののない後輩はバイトの日々…。ぬるま湯に頭まで浸かったような、でも当人にはそれなりに切実だったりもする<大学生>という不思議な時間――。ぐるぐる廻る青春のアレやコレやを描いた大学生日常ストーリー!

『それでも町は廻っている』でお馴染みの石黒正数の作品です。
多分これは他でも紹介されていると思いますが、かなり好きなので紹介してしまいます。
といってもここ一、二年で読んだ新参者なんですが・・・。
学生モノあるあるですが、読んだ時期によって刺さり方が違いますよね。
社会人になってもうある程度経ってから読んだのですが、「ああ、こんなこと考えてる時期が私にもあったなあ」って思ってしまうこと自体が苦しくて、でももうそんな青臭い思想に執着がなくなってきていることが少し寂しかったです。
THEモラトリアムなダラダラ感を味わえるかつラストはスパッとした爽快感で締められる、読みやすい一冊です。

ネムルバカ/石黒正数 徳間書店 2008/5/1 P138

地獄色/浄土るる

19歳の鬼才、降臨。衝撃の問題作、爆誕。


彗星のごとく現れ
SNS上の話題を一心に集めた
“浄土るる”。

いじめを題材にし、
SNS上で累計10万いいね獲得『鬼』や、
幸せについて思いをめぐらす
人間ではない生き物たちの苦悩を描いた『猫殴り』など
目を離せないラインナップ。

さらに未発表の短編『こども』も収録し、
圧倒的密度であなたに濃密な“気持ち”をお届けいたします。

あらすじをamazonから引っ張ってきたんですが、話の内容全くわかりませんね。
浄土るるはここ最近で一番注目している漫画家です。
『鬼』がバズったときに知ったのですが、ここまで無駄が削ぎ落とされた残酷な話を描ける人を他に知りません。
(いたら読みたいので教えてください。)
そこに美しさも一切ありません。
てか一瞬美しいものを見せてからそれを瞬時に叩き潰してきます。
こっちはただただ途方に暮れることしかできません。
世が世ならガロの看板作家になっていたでしょう。ガロ読んだことないけど・・・。
新連載が始まるらしいのでもうはちゃめちゃに楽しみにしています。

それぞれの話について、言葉を重ねるほど陳腐なものになっていくような気がするので話を一切紹介せず好きなコマの画像だけ貼り付けておきます。
意味はわからないと思います。

<猫殴り>

地獄色/浄土るる 小学館 2020/12/5 P34

<鬼>

地獄色/浄土るる 小学館 2020/12/5 P136

<神の沈黙>

地獄色/浄土るる 小学館 2020/12/5 P193

まとめ

文章が稚拙なので作品の魅力が伝わらなかったかもしれませんが、どれもとても面白いので興味が出たらぜひ読んでみてください。
逆に一冊で終わるおすすめの面白い漫画があったら教えてください。

ほなね

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