見出し画像

今日も今日とて、運貯金。〜餃子のかくし味〜

何かをまとめるのには、U字のクリップよりもホチキスの方が好き。

クリップはうっかりしていると、他の資料まで巻き込んだりホールド力はそんなに強くないので何かのタイミングでするりと抜けてしまうこともある。

その点ホチキスは、一度パッチンしてしまえばみんなを結束するリーダーになる。
小さな針なのに、一生ついていきたくなるようなカリスマ性もあり圧倒的な信頼感。

紙に傷をつけるかつけないか、そんな問題もあるので時と場合によっての使い分けはするけれど。

いつもあちこち散らかしているわたしの相棒ホチキス。
これからもお世話になります。

ひとつの仕事に区切りがついたところで、では打ち上げますかと居酒屋に行くことになったわたしたち。

ご褒美と言って思い浮かぶのか、からあげか餃子。じゃぁどっちもおいしいあそこのお店に行こうと選んだ馴染みの店でまずは喉をうるおす。がんばった日は黄色くてシュワッとした飲み物がうまいんだ。

餃子にからあげ、そしてフライドポテトまで。何年分かの盆と正月とクリスマスみたいなメニューを一気に注文し、申し訳程度にお皿に乗った枝豆をつまみながら待った。

先陣切って、餃子が揚げ物よりも早く到着する。
肉がぎっしり、皮がぱんぱんに膨らんだ餃子は
餃子はいいよね。太っている方が褒められる。痩せたらかわいくないよ、ってわたしと逆のこと言われてる。
肉や野菜のあんだけじゃない、この皮の中にはロマンまで詰まっている。

大好物の餃子がうれしくて、箸上げの写真を撮ったり顔の脇に持ってきて餃子モデルのような写真を撮ったりしてわくわくを高め、いざ実食。

「あぁ。ジューシーなんだよなぁこの、餃子。おいしすぎて飲み物みたい…この肉汁のためなら余裕で火傷だってできる」

ってグルメリポーターじゃないけれど勝手に食レポをしていたわたしの口の中になんとも言えない食感が。

粗挽き肉が売りだとしても、こんなにゴリっとした食感は明らかにおかしいしちょっと刺さる感じで痛かった。
何がこんなにも口当たりを悪くしているのか、お下品ながらもティッシュに出し調べてみたところなんとそこにいたのは
使い終わったホチキスの針だったのだった。

あんなに絶賛していたホチキスに、意外なところで会うとものすごい嫌悪感が生まれるのはなんでなのだろう。

家ではお母さん大好きなのに、友達と一緒にいる時にばったり外で会ったりすると気まずいあの感じと似ている…いや、似てないか。
そんなレベルをとうに越した予想外の異物が混入していた。

これは名探偵を呼びたいほどの事件だ。

ねぇ店員さん。
どこで包んだの、その餃子のあん。

もしかしてわたしが仕事場から連れてきたホチキスの針だったのか…いや違う。

少しでも仕事が楽しくなれば、と私はその日色付きの針を使っていた。
銀色のその針は、わたしの相棒ではない。

「なんでうみのだけホチキス入りなのー?ずるくなーい?」と言って笑う人がいた。

「ごめーんね。あたり引きました」

っておい神様。

複数名いて、針のロシアンルーレットを引いてしまうのはわたし。
大当たりを引く奇跡。

ラッキーなことに餃子代は無料で、新しいものを焼いてきてくれるということ。
デザートにアイスクリームを全員分サービスしてくれるって。

やったー!なんてわたしはラッキーガール。
両手を上げてバンザイだよ。

なんてな。
わたしはまた混入していたらどうしようという恐怖に負け、箸を置き、口を固く閉じた。

そう、まさかのあのホチキスに口を閉じられてしまっていたのだった。

あの日のお会計は、1円単位で割り勘だったのもいい思い出。


考えてみれば、命を取られたわけではない。
体内に入らず口で排出できたんだから。
みんな、サービスのアイスも喜んでいた。星野のおかげだ、とも。
結果はやはりラッキーガール。ってことでいいかな?


今日も今日とて、運貯金。
運を貯めて貯めて貯めまくって、いつかでっかい何かの時に貯金をおろすわたしの物語。



コロナ禍以前のお話です。
またこんな風に、大人数でわいわい餃子を食べたいものです。
出来ればホチキスの針が入っていない餃子をね。

いいなと思ったら応援しよう!

星野うみ。
優しくそっと背中を押していただけたら、歩んできた道がムダじゃなかったことを再確認できます。頂いたサポートは、文字にして大切にnoteの中に綴ってゆきたいと思っております。