Forget-me-not (2)
数日後、廊下を歩いていたら、駐車場を歩いていくアストラの姿が見えた。彼女が帰るころなら、もう五時過ぎか、などと思い、腕時計をちらりと見て、再び目を上げたときに、そいつが視野に入った。アストラはまだ気付いていなかったが、そいつは、彼女の背後から、素っ頓狂なスピードで走っていた。足音を耳にしたのだろうか、アストラが振り向いた。その瞬間に、そいつがアストラに殴りかかったように見えた。
オレは咄嗟に廊下の窓を開け、窓枠を飛び越えて外に出た。アストラまでの距離は、百メートルもなか