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『婚活1000本ノック』感想②

二話

無事に二話を視聴した。一話だけ面白く二話はいまいちというドラマもあるが、こちらは無事二話も面白かったので安心だ。
山田クソ男の過去話から第二話がスタート。親がくれたこの顔でモテた。というフレーズが素晴らしい。クソ男はどうしようもねえクソ男ではあるが、それが顔、つまり親のおかげだとわかっているのだ。さすがエリートなだけあって、意外と頭の良いやつだ。自分のことがわかってないやつは存外世の中に蔓延っている。その点自分の実力を冷静に見極めているクソ男はまだ言葉が通じるタイプのクソ男である。こういう顔が良くて幼い頃からモテたエリートはよく「女にはうんざりだ。顔じゃなく中身を見て欲しい」みたいになりがちなのに、ストレートに顔を利用しとりたててそれを気に病んでないところも良い。清々しいクソ男だ。あっぱれ。
余談であるがクソ男はなぜかカラオケでモンパチを歌う。誤解ないように言っておくが、『小さな恋のうた』はとても良い曲である。健気でひたむきでまっすぐなラブソングだ。だがなぜだろう。私はこれを歌う男が優しく誠実だったところを見たことがない。私とて数多のクソ男を見てきたクソ男ソムリエの1人であるが、このメンサの一億倍入会が簡単な組織において、おそらく私と同じこの主張をする女は少なくないのではないかと思う。クソ男はなぜかカラオケでモンパチを歌う。なぜだ。お前にこそ響け。

それはともかく、今回の婚活はペアシート婚活。なんだそりゃ。初めて聞いたぞ。浦島太郎の気持ちだ。
ペアシート婚活とは、薄暗い部屋で2人用の席に座り1対1で会話をする。一度全員と顔を合わせないので、第一印象を対比せずじっくり一人一人と向き合えるというシステムだ。
今回のキーパーソンは『ハートパイ』。源氏パイは商品名なのでアウトだったのだろう。その名の通りハート型のあのパイに似ているからハートパイ。
クソ男百鬼夜行になるのかと思われたこのドラマだが、二話目にして早くもめちゃくちゃハートフルな男性の登場である。ハートパイというニックネームには関係ないが、彼はとてもハートフルであった。
そしてこのキーパーソンを話の中心に据えて、今回のキーワードは『生理的に無理』。
山田クソ男の言う通り、確かにこの言葉は男性からはあまり聞くことはない。女性が使うことの方が多いように思える。
『生理的に無理』とはなんなのだろう。もちろん私にも『生理的に無理』なタイプは存在するが、今回はその多用される『生理的に無理』より少し根深い意味での生理的に無理だったような気がする。
たとえば私は男性の胸毛が苦手である。フレディ・マーキュリーの胸毛を見ていると、彼個人への好き嫌いとは関係なくゾッとなってしまう。これこそが『生理的に無理』というやつだと思う。しかし今まで、顔はタイプ!でも胸毛ボーボーで無理!となった経験があるわけではない。これはどうなのだろう。実際に生理的嫌悪感が好意を上回った経験がないのに、私は本当に胸毛が無理だと言えるのだろうか。顔が松岡充で体がザンギエフだとしたら、私はノーというのだろうか。ノーと言えて初めての生理的嫌悪感ではないのか。
今回ハートパイに重ねられた『生理的に無理』という言葉は、これよりもっと深いところにある。
なんか知らんけどなんかどーにもセックスしたくないんだよな…という曖昧で、けれどとてつもなく強大な凶器だ。一般的に語られる『生理的に無理』ではなく、自分にも他人にも認識できない『なんとなく』という呪いなのである。
しかし理由も原因もわからないこれには、ハートパイはもとより綾子自身でさえ手の施しようがない。
新井理恵先生の名作『ペケ』収録の漫画にて、相手の何を重視するか、と女性が語らうものがあった。「私は初見でその男とセックスする気になるかどうかね」と答えた女性に、周りは戸惑う。「え、でも、人間性とか良いかもしれないし…」遠慮がちにかけられたその言葉に、女性は答える。
「人間性とはセックスはできないわ」
これこそが今回のハートパイ編の主軸なのだろう。
人間性とはセックスはできない。なんと甘い言葉なのだろうか。

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