思春の森のブラッディ・マリア
暗い暗い森の中
揺れる蝋燭の炎が闇を切り裂く。
私はわたしを見つけて、そっと手を伸ばす。
「ここにいた」
わたしはその手を掴む。
指先は凍るように冷たい。暖かい手がそれを包み込んだ。
「眠ってた。ここはとても、静かだから」
誰も来ない、いや、来られないところまで来たつもりだった。
けれどやっぱり、私はわたし。
どんなに姿を隠しても、必ずわたしを見つけ出す。
「今度はまた、随分と遠くまで来たのね」
私はそう言って、わたしの隣に腰掛けた。
「外の光はとにかく眩しくて、お肌にピリピリしみるんだもの」
わたしはずっと、暗いところを探していた。
暗いところで、やわらかな陽が注ぐのを待っていた。
「それならドレスを着ればいい。誰よりも美しく着飾れば、それはあなたを守る鎧になるわ」
蝋燭の灯りに目を凝らすと、私はとても綺麗なお洋服を着ていた。
深い赤で出来た闇の中で、ターコイズブルーが来たる道筋を照らしている。
「わたしも強くなれるかしら……」
そう言いかけて口をつぐむ。
いいえ。わたしは私。きっと、きっと大丈夫。
暖かい手を握り返して、わたしは、闇を抜け出した。