わたしが映画として見た「Tokyo Summer」(公開されなかったプロット)
Mounties - Tokyo Summer
https://www.youtube.com/watch?v=YAq1EUg15bk
8月は不思議な月だ。
時間の感覚がわからなくなるし、生死の境目もあいまいになる。
僕はベッドで目を覚ます。寝る前に見た天気予報は酷暑を告げていたが、目を覚ました僕は長袖のシャツを着ている。
窓際では「彼女」が髪を乾かしている。
「ああ、またか。」
くたびれた顔でため息をつく。僕はまた、戻ってきてしまったのだった。
「君は本当に変わらないね」
届かないとわかっていながら、声をかけて思い出した。
あの時の僕は、「君はまるで変わってしまった」と怒ってばかりいたんだっけ。
8月は不思議な月だ。
時間の感覚がわからなくなるし、夢と現実の境目もあいまいになる。
僕は「彼女」とデートする。遠い異国のアミューズメントパークに行って、蝋で出来た人形を一緒に眺める。
珍しい、おもしろい、とはしゃぐ彼女を、今の僕は冷めた目で見ている。
そうして、「慣れ」とはこういうことなんだろうか、と考える。
あの時の僕は、とにかく彼女を独占したかった。
誰にも渡したくなくて、自分だけのものにしたくて、蝋人形にさえ嫉妬した。
どうしようもなく余裕がなくて、一緒に過ごしていても気が気じゃなかった。
今になって思えば、僕は蜃気楼を追いかけていたのかもしれない。
逃げ水のような彼女の心は、結局掴むことができなかった。
何度目かの景色を見ながら、僕は都度、後悔する。
終わったことは取り戻せないのに、記憶ばかりが甦る。
そうして僕は、いつも寂しくなってしまう。
「彼女」の姿を焼きつけたくて、スマートフォンのカメラを向ける。
これは夢だと気づいている。世界は思い出補正によるニセモノだった。
しかし僕は、カメラを向けずにいられない。
端末を使い、自らに聖痕を刻み付けようと躍起になっている。
季節はいつしか、冬になっていた。
温度なんて気にもならなかったが、長袖のシャツがようやく馴染んでくる。
二人で大きな滝の近くを歩く。「彼女」が何か話しているが、水音が大きくて聞こえない。
僕たちは最初からすれ違っていたのかもしれない。
同じ場所に行き、同じ景色を見て、同じ気持ちになったように錯覚していたけれど、実は互いにまったく違うものを見ていたのかもしれない。
僕は初めから、彼女の声を聞こうとしていなかったのかもしれない。
僕はレストランで食事をとる。
ローストされた肉を切り分けながら、死体になった「彼女」を見ている。