わるぐち
いつもニコニコしていて、明るくて、可愛らしい活発な印象を持っていた女の子が、電話をしながら誰かの悪口で盛り上がっているのを見てしまった。
みなければよかったと思った。
今、わたしは留学をしていて、違う国の外国人寮に住んでいる。
その女の子は日本人で、日本人の留学生達の中でも少し目立った存在だったから、わたしも知っていた。もちろん同じ寮に住んでいるし、どうやら同じ階でもあるようだ。2人部屋のはずだから、ルームメイトの邪魔にならないよう、外に出て電話していたのだろう。
地下にあるコインランドリーからエレベーターに乗り、わたしの部屋がある階で降りた瞬間、日本人の「アハハッ」という笑い声がした。談話スペースのソファに、少し崩した体操座りで女の子が電話していた。「あ、あのいつもニコニコしてみんなに声をかけてる女の子だ」と思った。わたしは軽くペコっと会釈をした。一瞬目があったけれど、風呂上がりのわたしが、いろんな国の外国人しかいないこの寮では、日本人にはみえなかったのかもしれない。「誰?」という顔をされただけだった。
前を通り過ぎ、談話スペースから部屋が並ぶ廊下にさしかかり、姿が見えなくなった辺りで、耳を疑って立ち止まってしまった。
「だからさぁ〜○○ちゃんも!あいつも結局そうやんね!意味わからんでしょう?は〜腹立つ」
いくら友だちだって、結局は他人だから、自分とは違う相手に不満が出てくるのは当たり前のことだと思う。
それを第三者に話すか話さないか。
本人に不満をぶつけるかぶつけないか。
第三者に誰かの悪口を言うとき、その人の素顔が見える気がする。
嫌なものを聞いてしまったなぁ。
わたしはもう、あの女の子のことを“可愛らしい活発な女の子”なんて決して思えないのだ。