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2024年7月25日木曜日、一宮七夕まつりであったとてもとても小さなできごと。

愛知県一宮市で催される一宮七夕まつりは例年、7月最終週の木曜日から日曜日まで実施される。
木曜日ならば平日デスクワーク終わりで電車に駆け込んで、それも一宮駅前幹線道路で催されるものだからアクセス利便も丁度良く、私は一月ほど前から名古屋の伏見駅と名古屋駅の中間地点あたりに転職していたので名古屋駅までも徒歩で15分、名古屋駅からJRで尾張一宮駅へ向かう。

一宮へ着いたのが18:15で、雲がかかり夕立ちが降る降らないの怪しき雲行きとなった。まあ一雨降ったくらいで盆踊りは始まるだろうと、盆踊り開始19:00までにまだ時間があったので、まず先に真清田神社にお参りしておこうと少し歩いてアーケードを通り抜けようとしたその時、「本日の盆踊りは中止になりました」とのアナウンスがスピーカーから流れる。

急いで盆踊り会場へ引き返すと踊り仲間のMさんと合流。盆踊りの開催是非について浴衣をまとった人々の間で情報錯綜が巻き起こっていた。
次第に一宮踊ろまい会の方々がきて、中止が正確な情報だと判明し、盆踊り中止をついに認めざるをえなくなった。
ため息と嘆きの声が漏れ、さてどうするかと集った面々が立ち往生する。諦め帰路につく人、本日開催予定の小牧市田縣神社、名古屋市中村公園へと急遽で向かう人もいる中で、歌うのが大好きHさんがどうにか一宮で踊れないかと粘り、どこぞに場所さえあれば野良盆踊りはできる、と盟友であるNさんに電話をかけた。

Nさんは踊り愛好家の顔とは別に、様々なイベント運営ボランティアスタッフを勤めるプロボランティアスタッフであり、地元一宮での活動は特に熱を入れて動いている。
Nさんはすぐに我々のもとにかけつけ、野良盆踊りのできそうなサブ会場に目星をつけて手配の連絡をする。一宮七夕まつりにはサブ会場がいくつもあり、とある駐車場では音楽ショーがキッチンカーに囲まれて催されていた。
その会場の音楽ステージからやや離れた隅っこを借りて、Hさんが歌って音頭を取って野良盆踊りが始まった。
2、30分ほど踊ったあたりだろうか、ステージ出演していた女性デュオが持ちネタにダンシングヒーローがあるから歌えるとのことで、予定演目が終わったあとにダンシングヒーローを歌ってくれる手筈となった。ダンシングヒーローは一宮七夕まつりの肝であると言っていいほどで、それがなければ画竜点睛であると言える。

しかしHさんの野良盆踊りは白鳥拝殿踊りをベースとしたスタイルなので、一宮の踊り好きの方々はなかなか馴染み乏しく、我々の踊りの輪に入り辛そうだった。
しかしこのあとにはダンシングヒーローが踊れるということがあるから、それまでのつなぎ的に野良盆踊りがダンシングヒーローの前座や余興のようなかたちとなり、ふざけてちゃらけたノリで皆踊る。

そして皆が飢えて待ち焦がれたダンシングヒーローが生歌唱で始まる。
会場スタッフもノリノリでわーきゃー声を上げてスポットライトを踊りの輪にガンガン焚き付けてくる。
皆様踊って踊ってと、女性デュオもノリノリで、なぜかステージ上にはバランスボールダンス隊も配置されてカオスとはこのこと、20人ほどの踊りの輪が大きな声でHEY!HEY!HEY!HEY!エッサホーイエッサホーイエッサホーイサッサー。盛り上がりにアンコールは不可避となりもう一度歌ってくれた。

先ほどまでのHさん中心の野良盆踊りは当然生歌、そして巡り合わせの女性デュオによるダンシングヒーローまでもが生歌唱。
この日は結局全ての踊りを生歌で踊った。

身一つあればできる野良盆踊りをHさんのそれなりの頻度で仕組んでくれるけど、手練れのNさんの調整手配能力の遺憾なき発揮によってこの日は突如の生歌ダンシングヒーローの機会創出が成された。
Hさんが粘りに粘って野良盆踊りをし続けなければ生歌ダンシングヒーローのサプライズに繋がってないし、皆も早々と帰っていたはず。そしてNさんが七夕まつり手練れスタッフとして腕を磨いてきてなかったらばあんなに迅速にサブ会場の手配と調整はできない。

つまりはHさんとNさんがいなければ存在し得なかった状況であり、しかしHさんとNさんが結託すれば、このような状況創出はさほど珍しくもないことだな、と思えてしまった。

この日、予定通り七夕祭りで盆踊りが実施されていたとしても、また田縣神社や中村公園へ行って踊っていたとしても充分に楽しめていただろう。だけどもこの日の七夕祭り盆踊りの中止が生み出した、人々が踊りたくて熱と知恵を協力させて紡いだ状況こそは、私が心底から楽しいと感じるものだと、信じてやまない。


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