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日隅一雄・情報流通促進賞2023奨励賞受賞・藤田早苗氏スピーチ全文

今回で11回目を迎える日隅一雄・情報流通促進賞2023の奨励賞に、日本で発生する人権侵害について国内外で人権問題として発信する藤田早苗さんの書籍「武器としての国際人権」執筆を含む国際人権活動が選ばれました。
https://www.hizumikikin.net/20230509taishokettei/

23/6/10に東京で行われた授賞式に、藤田さんはZoomで参加しました。
https://note.com/sanae_fujita/n/n4adcdad74d90



本人の許可を得たので、スピーチを転載します。

藤田さんは2023年6月下旬-7月まで国連人権機関を訪問しますので、よろしければ交通費・滞在費のカンパをお願い致します。
https://hyogen-tsutaeru.jimdofree.com/


日隅一雄・情報流通促進賞2023奨励賞受賞・藤田早苗スピーチ

日隅一雄・情報流通促進賞について
表現の自由、情報公開、国民主権の促進に生涯を捧げた日隅一雄さんという弁護士がおられました。2012年に惜しまれつつも亡くなられたのですが、彼の理念を基に日隅一雄・情報流通促進基金が設立され、公正な情報の流通の促進をし、真の国民主権の実現に貢献している個人や団体を顕彰し、支援を行うことを目的として「日隅一雄・情報流通促進賞」が設立されました。

今年の11回目を迎える名誉ある日隅一雄・情報流通促進賞の受賞者が先日発表され、私も「武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別」執筆を含む国際人権活動を評価していただき、奨励賞をいただきました。

こちらに受賞された方の作品や活動は紹介されています。
https://www.hizumikikin.net/20230509taishokettei/

授賞式は東京で6月10日に行われました。残念ながら私は会場には行けなかったのですが、ZOOM参加でスピーチして、これまでの活動や、先日3回目の訪問をしたアウシュビッツとのかかわりで国際人権の起源などについて短くお話ししました。

記念撮影には左端の海渡弁護士のパソコンの画面に映っています。

下にスピーチを日本語でご紹介します。 


2023日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞 藤田早苗受賞スピーチ

今回、推薦してくださった愛知の会と日隅基金の事務局のみなさま、ありがとうございました。

このような賞を受けるのは私の人生で初めてのことで、会場で式に参加できずとても残念なのですが、受賞者の一人に加えていただき、大変光栄です。

私は20年ほど前にイギリスのエセックス大学の国際人権法コースで学ぶために留学しました。その頃、私は日本は民主国家で大丈夫な国だ、と思っており、人権問題とはほかのもっと大変な国のことだ、と思っていたのです。

しかし、2013年の9月にまさに私が今いるこの部屋でFacebookをみたとき、日本政府が国際人権基準を逸脱した特定秘密保護法なるものを、民主的な過程を全く経ずに作成していると知って、驚愕しました。

当時の私は日本の人とのつながりがほとんどなかったのですが、私にできることは国際世論に訴えることだ、と思い、友人と法案を英訳して国連特別報告者に情報提供したところ、強い懸念表明と勧告が出されました。
それが、私の日本に関する国際人権活動の始まりでした。

その後も様々な問題を国連人権機関や国際社会に伝えてきましたが、日本は豊かな民主国家だから問題がないと思われて、理解されないこともありました。それはまるで、家の中でDVや虐待が起きていても、外からは問題のない平和な家庭に見えているので、問題が周りの人に認知されていないような感じで、葛藤を感じてきました。

だからこそ、ジュネーブの国連人権機関に何度も足を運んできたのですが、ジュネーブの物価は日本の約3倍もします。だから、ジュネーブに行く前は毎回イギリスで食料を調達し、ゆでたブロッコリーなどを持参して国連に行ってます。今月もまた行く予定です。

愛知の会がカンパを呼びかけてくれて、それに応えてたくさんの方が少しずつポケットマネーを寄付して支えてきてくださいました。この活動はそういう方たちと一緒にやってきたのだ、と思っています。

2016年4月には海渡弁護士たちと協力して表現の自由の特別報告者、デビッドケイ氏の日本調査訪問が実現しました。が、その期間中ずっと政府から監視を受けていたことが後でわかりました。

このように、どこの国でも人権活動はリスクを負います。そいういうことに対しても、恩師の助言や日本の家族の理解があることをありがたく思います。

実は、私は昨日まで4日ほどポーランドにいました。。アウシュビッツを訪問するためです。私にとっては3回目のアウシュビッツ訪問でしたが、今回は日本からエセックス大学に留学している大学院生二人も一緒でした。そして、「これが、私たちがやっている国際人権の原点だよね」という話をしました。

日本では人権と思いやりが混同されていますが、両者は別ものです。
人は自分の仲間には思いやりを持ち、親切にすることはさほど難しいことではないでしょう。

でも、自分と異質な人たち、好きになれない、偏見をもつ相手には違う態度で接したり、差別的な扱いをする傾向があるのではないでしょうか。それが、特定の民族集団への人種差別政策、迫害へとなった、その究極のものがナチスによるホロコーストでした。

そして、だれもあの大規模人権侵害をとめることはできませんでした。

当時の世界では、いかなる人権問題もその国の国内事情とされていて、他国は干渉しないことになっていました。もちろん、今のような国際人権機関もありませんでした。その結果、600万もの人が犠牲になった、あの大規模人権侵害を食い止めることができなかったのです。

その大きな反省に基づき、第2次大戦後、今の国連を作るときに、国際社会は「一国の人権問題は国際関心事項だ」と決めました。だから、日本の問題も国際関心事です。これは「人権の国際化」と言われています。

そして、1948年に世界人権宣言が採択され、国連人権機関も作られていき、複数の人権条約も一つ一つ作られて行きました。それらは、過去から現在に至る、世界中で人権侵害をうけ、またそのために闘ってきた、無数の人の悲しみや絶望、怒り、そして希望の結晶であり、人類の英知の集まりともいえます。

そして、国際人権条約や人権機関は決して遠い世界のものではなく、私たち日本の問題にも直結しています。例えば、関西生コン事件についてはすでに国連の人権専門家に情報提供されていますが、今日受賞された方が関わっておられる問題にも国際人権が活用できるはずです。

そういうことをもっと知ってもらうためにも、私は、今日会場に来てくれているお二人の編集者の多大な助けを得て、昨年12月に『武器としての国際人権』の出版に至りました。

普遍的な人権意識がもっと社会に根付き、国際人権が多くの人にとって身近なものとなり、もっと活用されていくなら、日本は必ず変わると思います。

今日、私が賞をいただいたことが、またいろんな人にとって、国際人権に関心を向けるきっかけになることを希望して、受賞の挨拶とさせていただきます。

ご清聴ありがとうございました



・日本の表現の自由を伝える会
 https://hyogen-tsutaeru.jimdofree.com/

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