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名古屋城天守台・周辺石垣保存対策 全体整備検討会議でおおむね承認

24/8/7(水)特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第61回)が開催されました。
長年懸念されていた「天守台及び周辺石垣の保存対策」について、おおむね承認され、文化庁への現状変更許可申請を認めました。

・24/8/7(水)特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第61回)配布資料
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/240807.pdf
 名古屋市民オンブズマンによるメモ
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/240807-1.pdf
 
大小天守台・周辺石垣は、空襲の被熱ならびに地震等で劣化しており、早急に保存対策が必要です。
今回示されたU65石垣(大天守北対面)の具体的な対策は以下です。
・間詰石の締め直し、補充
・築石間の空隙の充填
・築石間の鉄筋挿入
・袋に詰めた小石等による対策
・破損石材の修理

名古屋城総合事務所は「今回保存対策をし、何十年かわからないが観察を行う。その後劣化が激しいとなれば、積みなおしを行うかもしれない」とのこと。

他石垣面についてはさらに慎重に検討を重ね、有識者に諮りながら順次保存対策を進めるとのこと。

その他、西北隅櫓付近のボーリング調査をすることも提案され、今後部会で詳細が諮られます。

水堀の活用については、船着場の整備方針案が示されました。
バリアフリー対策や安全対策について検討し、再度全体整備検討会議に諮られることになりました。

報告事案として、園内サイン改修について出され、名古屋城総合事務所は「去年1年間城内のサイン調査を行い、現状を把握した。老朽化していたり、意匠がバラバラだったサインを統一したい。すでにコンサルに今年度発注済み」といきなり報告しました。

副座長の丸山宏・名城大学名誉教授は「サインを統一するのは結構な話だが、『報告』ではなく、現状を示して『計画』を提案してもらいたい。」と述べました。

三浦正幸・広島大学名誉教授は「サイン計画について、通常はどの位置にどの種類の看板を設けるか、平面図を出して提案する。
また案内板に何を書くか、『図版等整備基本委員会』で内容を見てもらって諮る。看板が設置された後『内容がおかしいのでは?』となると税金の無駄遣いだ」と述べました。

最後に、オブザーバーの平澤毅・文化庁文化財第二課主任文化財調査官は「たくさんの事業計画が諮られたが、全体としてどういう位置にあり、どういう関係かわかりにくかった。毎回全体図をつけていただいた方がよい。
また、公園のサインであれば『何とか広場はここ。こっちに行けばよい』でよいが、『名古屋城のなにをどう伝えていくのか』は全体整備検討会議の重要な主題の一つ。
次回具体的な提案していただき、
 ・今はこうだがいらないものもある
 ・ここはこういうことを伝えた方がいい
という議論をしていただきたい」と述べました。

オブザーバーの岡田邦裕・愛知県県民文化局文化部文化芸術課文化財室室長補佐は「石材の劣化が激しいU65石垣以外でも、全体的な石垣保存対策が石垣部会でも保存方針が議論されている。ぜひとも計画的に議論をお願いしたい」と述べました。


以下感想

大小天守台・周辺石垣の保存対策がようやくまとまりました。
U65石垣について早急な対策を望みます。

一方、大小天守西対面石垣であるU66、「鵜の首」S10については、「優先的に保存対策を行うこととする」とありますが、今回は具体的な検討がされませんでした。

「鵜の首」については、以前から極めて危険だと石垣部会で指摘され続けてきています。
https://ombuds.exblog.jp/29479852/

「来場者動線沿い」なので、ほかの事業を行うより先に、優先して保存対策をすべきではないでしょうか。
名古屋城総合事務所の職員、予算も限られています。
2024年7月松山城土砂崩れを見るまでもなく、「最優先は人命・安全」であることを肝に銘じてもらいたいです。

また、21/3/25午後、特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 天守閣部会(第23回)で、三浦正幸・広島大学名誉教授は「『被熱によって表面がはがれかかった石材は、必要措置を講じる』と限定修飾語を用いてはどうか。記載の通りだと、自らの首を絞めるようなもの。天守閣石垣の表面の被熱と劣化をすべて直すと、それだけで5年くらいかかりそう」と述べました。
https://ombuds.exblog.jp/28511642/

早急な対応を求めます。


また、園内サイン改修について、全体整備検討会議にも諮らずに「去年実は調査していた」と述べたことは、「名古屋城総合事務所の体質が全く変わっていない」と印象を受けました。

名古屋城総合事務所は20/3/5に、名古屋城重要文化財等展示収蔵施設外構工事に伴い、特別史跡の遺構(石列)をき損したと発表しました。
https://ombuds.exblog.jp/27999435/

その際も、事前に全体整備検討会議に工事を諮っていなかったことが大問題になりました。

別に全体整備検討会議に隠すようなことではないし、むしろ堂々と行って承認をとって行えばよいのに、なぜかこそこそと事業を行うのはどうしてなのでしょうか。

サイン改修について、「見やすく」するのは当然ですが、「年齢、国籍、障害の有無、来場目的の違いなど」コンサル任せにするのではなく、当事者の声を聴いて作り上げることも大事なのではないでしょうか。

また、名古屋城総合事務所は「新規掘削を行わない」方針ですが、本当に良いサインを作るのであれば、文化庁への現状変更許可申請を行っても、「新規掘削を行った上でのサイン改修」を検討してはどうかと思います。
よりよいものを作り、来城者に楽しんでもらえるようにするのが真の目的だと思います。


最後に平澤文化財調査官が「各事業の全体の位置づけが分かりにくかった」というのは、岡田愛知県室長補佐の「全体的な石垣保存対策が石垣部会でも保存方針が議論されている。」に対応しているのではないでしょうか。

24/8/5に開催された、特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 石垣・埋蔵文化財部会(第61回)では、文化庁からだれもオブザーバーは参加せず、愛知県県民文化局文化部文化芸術課文化財室のオブザーバー参加はありました。
https://ombuds.exblog.jp/30308171/

その2日後に開かれた今回の全体整備検討会議では、石垣・埋蔵文化財部会の議論は全く報告されませんでした。
どうしてこのような風通しの悪さが続くのでしょうか。

名古屋城総合事務所の体質を一言でいえば「殿様商売」。
今の名古屋城総合事務所に、特別史跡名古屋城跡の管理をこのまま任せていていいのか疑問に感じました。


今後の予定

・24/8/10(土)14時~ 名古屋市立大学寄附講座
 「名古屋城と庭園」-日本の歴史と文化の象徴― 
 講師 堀内亮介(名古屋城調査研究センター学芸員) 
 講師 千田嘉博(名古屋市立大学 教授)
 https://www.nagoya-cu.ac.jp/event-list/20240626/
・24/8/19(月)10時半~ 河村たかし市長定例会見
 https://www.youtube.com/user/nagoyakoho758
・24/8/24(土)14時~ 名古屋城天守の有形文化財登録を求める会 例会
 https://peraichi.com/landing_pages/view/protect-nagoya-castle/
・24/8/24(土)18時半~ 特別対談企画「名古屋城論争の落とし穴」
 https://nameken.theletter.jp/posts/b4b95b80-512a-11ef-8fa5-55afc9e57ab8
・24/9/8(日)14時~ 名古屋城検定 教養講座
 城郭建築の第一人者 三浦正幸氏 講演会「日本城郭史の到達点、名古屋城。」
 https://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000176066.html


・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
 http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm 
・名古屋市民オンブズマンブログ 名古屋城問題
 https://ombuds.exblog.jp/i33/


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