韓国京畿道監査公務員の視察受け入れ
23/8/30に、韓国京畿道監査公務員15名が全国市民オンブズマン連絡会議事務局を視察に来ました。
全国市民オンブズマン連絡会議から見た日本の監査制度、全国市民オンブズマン連絡会議の概要説明、活動内容、情報公開の流れ、オンブズマン制度の効果を知りたいとのこと。
全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士が対応しました。
・手違いで翻訳されなかった資料
https://www.ombudsman.jp/data/230830.pdf
以下、新海弁護士による説明の要約です。
日本の地方自治体の監査制度には、自らが監査するという役割の外に、住民が住民監査請求を申し立てたことを監査するという役割がある。
30年以上前は、税金が無駄に使われていると思った市民は、噂や新聞記事を元に住民監査請求をしていた。
しかしながら、監査委員は「いつ、どこで、だれが、なんという費目で」税金を使ったのかを特定しないと実際の監査に入らなかった。監査委員は、住民監査請求をはねつける「門番」の役割をしていた。
しかしながら、30年ほど前から、徐々に自治体に情報公開条例が作られてきた。
市民が情報公開請求をすれば、「いつ、どこで、誰が、なんという費目で」税金を使ったのか分かる。
当時、公共事業の約1割は、雑費として何に使ってもよいお金が国から出ていた。自治体はそれを使って「食糧費」として身内で飲み食いしたり、官僚を接待したり、裏金になっていた。
これらも情報公開請求ではじめてわかった。
誰を接待したかは黒塗りで分からなかったが、日時と金額は分かった。
また、役人が出張したことにして、実は出張していない「カラ出張」も情報公開請求で調査した。
出張する際は、当該自治体で書類を作るだけでなく、必ず出張先に「出張受入簿」がある。
クロスチェックをすることで、カラ出張がバレたり、1995年阪神大震災当日、新幹線が止まっていたにもかかわらず出張したことになっていたことでカラ出張がバレた。
30年前、各地にできた市民オンブズマンを名乗る市民団体(英語ではタックスペイヤー、ウォッチドッグ)は、ノウハウを連携するために「全国市民オンブズマン連絡会議」を立ち上げた。
阪神大震災の新幹線の話を聞いた新潟の市民オンブズマンは、佐渡島の汽船の欠航日の出張を探しあてた。
監査委員はそれでも住民監査請求をはねつけ続け、「死んだ監査委員」と私たちは呼んでいた。
住民監査請求で請求が認められるのは100件中5-6件程度。その後住民訴訟を裁判所で争ってきた。
最近は監査委員も徐々に仕事をするようになったのか、地方議会の議員の政務活動費をめぐる住民監査請求は請求を認められることが多くなった。
兵庫県のある議員は、カラ出張ではないかと記者に追及されて、記者会見で号泣して有名になった。
また、1999年からは内部監査委員とは別に、都道府県・政令市・中核市では、弁護士や公認会計士など「外部監査人」と契約が義務づけられており、外部監査委員が自分で選んだテーマを毎年監査している。
全国市民オンブズマン連絡会議は「外部監査人」が発表したレポートを毎年チェックして、これはよいレポートかどうかを公表している。
また、自治体がどうレポートに対応したかも評価している。
全国市民オンブズマン連絡会議は、住民監査請求をするだけでなく、情報公開度を高める活動もしてきた。
30年以上前の書類はみんな個人名が黒塗りだった。
全国市民オンブズマン連絡会議を結成後、全国の自治体に対して同じ文書を一斉に情報公開請求し、公開度を採点して公表した。
公開度最下位になった自治体は恥ずかしいので、知事や市長が交代する度に、情報公開度が高まっていった。
毎年夏に、各地の市民オンブズマンが集まって活動発表をしている。2023年は30回大会で、仙台で行う。
テーマは「デジタルで情報公開度はどうなったのか」だ。
残念ながら、日本ではまだオンラインで情報公開請求できる自治体が少ない。
もっと気軽に情報公開請求ができないかと考えている。
情報公開や住民監査請求は、民主主義を進展させると考えている。
韓国でも私たちの経験が活かされれば幸いである。
参加者から、「どうやって活動の独立性を保っているのか」「公的オンブズマンと市民オンブズマンの違いは」「どうして情報公開請求しても黒塗りなのか」「情報公開請求する人を増やすにはどうすればよいのか」など活発な質問が出ました。
「韓国では、情報公開請求はすべてオンラインでできる」と述べられたのが印象的でした。
全国市民オンブズマン連絡会議 包括外部監査の通信簿
https://www.ombudsman.jp/houkatsu
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