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おいしい勉強
昨年、簿記3級を取得した。
理由は、NPO法人への転職が決まっていたので、行政事務では使わない複式簿記を学ぼうと思ったから。
勉強してみて思ったこと。勉強って、こんなに楽しいんだ。
私が簿記の勉強を楽しく感じたことには、2つの理由があると思う。
1つ目は「転職先で使う必要がある」という具体的な用途があり、希望した転職だったので、転職後の未来にワクワクしていたこと。勉強することが望む未来に繋がっている気がして、ただただ楽しかった。
そして2つ目は、少し近い仕事をしてきたため、なじみが無いわけではなかったことだ。
30年近くの公務員生活の中で、行政上の会計の仕方は知っている。また一部の関係団体は複式簿記を使っており、決算書類等の提出があったりすると、読み込む必要があったから、それなりに読み方を勉強したこともある。
だから、一部の用語はなんとなく分かる。
そんなこんなで、なんとなく近くにあって、切れ端だけ耳にしていたものを、一から学ぶことになった。それは、とても面白いものだった。
よく、パズルのピースに例える人がいるが、まさにそんな感じ。
頭のキャンバスに、単語や場面の記憶が散らばっている。でもその単語はどんな文脈の中で使われていたのか、あの場面でどのような会話が交わされていたのか、それが分からない。記憶のかけらは全体の4/1ぐらいで、あとは真っ白。
そんなスカスカかつ散らかったキャンバスを、下からきれいにくみ上げていく。単語や場面は流れの中の適切な位置に配置され、いくつもの流れが交差しあっていく。最終的に、1枚の織物ができあがる。
体系立てた学びは、ある程度記憶のかけらを頭に投げ込んでから学ぶと面白い。つぎつぎと繋がって定位置に収まっていくのが、とても快感だからだ。
だからこそ、学生さんで勉強が得意な人たちを尊敬する。私にとっては、ゼロからいきなり体系立てて学ぶことほど無理矢理感がある勉強は無い。日常で見聞きした記憶も実体験のとっかかりも無いのに、机上だけでよくあれだけ理解して覚えられるものだ。
やはり実地の体験があったり、日常で触れる機会があったりしてから、全体像を把握してすっきりする。そういう勉強法が、私には合っているみたいだ。
今はFP3級を勉強している。自分自身の人生後半のライフプランを立てたいから。
これまた、用途がはっきりと具体的なので、ひとつひとつの勉強が未来に直結していることを実感し、とても楽しい。私は行政職員だった時代に、税や年金、社会保険等の部署を経験してこなかったのだが、そこは同じ組織で働く者同士、普段の会話で見聞きすることも多かった。投資もここ数年でいろんな話を聞いているので、また簿記3級のような快感が味わえるのかと、ワクワクする。
資格を取りたい、というよりは、具体的に使いたいから、分からなさを解消して腹落ちしたくなる。しっかり噛んで味わって、消化したい。自分の血肉にしたい。こういう勉強は、おいしい食事みたいだなあ、と思う。
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「みんなのフォトギャラリー」からkomekoさんのイラストを使用させていただきました。ありがとうございました。