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くいしんぼばあさん その2 びっくり煮凝り 

ある日、スーパーに出かけ、目的の買い物以外に、メバチマグロの冷凍カマが目に入った。
普段手の込んだ料理は一切しないし、大きなカマなんて、独り暮らしには不向きだ。しかし、急にスイッチが入ってしまい、不当に大きな、たっぷり実が付いたカマ、大根半分(鰤大根からの連想か?)、剝きやすそうにころっと丸い根生姜を吟味して、買い物籠に入れてしまった。全部で800円もしない。

さて、帰宅してから、カマを煮たことなんてないよなあ、まあ兎も角やかん一杯のお湯を沸かし、先ずは熱湯消毒でしょう・・・とネットで調べもせずに、台所の洗い場に底の浅い大皿を置き、大カマを載せ、半量の熱湯掛けたら裏返ししてもう半分も熱湯を掛けた。洗い場はとんでもなく生臭くなった。換気扇大活躍。
思った通り、所有している一番の底広鍋でも、カマの方が大き過ぎ、入らぬ。料理不可能か?
大平皿の上のカマに包丁を入れるが、力が弱く、半分にならない。仕方なく両手で持って、切れ目を作用点に、殆どねじ切るようにして、鍋に互い違いの向きで収めた。手が生臭く、何もできないので、石鹸で三回洗ったが、気のせいかまだ生臭い。ああ、洗い場のせいかもと洗い場を洗ったら、大分良くなった。

鍋に適当に水を入れ、周りにいちょう切りの大根を詰め込み、粉末だし、砂糖、しょうゆを適当に入れ、火をつけた。酒みりん関係はご法度。いくら煮込んでもアルコールが超微量残り、頭痛がするので。
そうだ、落し蓋って言うよなあ…と、クッキングシートを適当に切り、端は折り曲げ、沸騰したら火を弱め、煮汁の味を見て、適当に砂糖や醤油、水を足していった。
生姜は、最初に丸1個の半分だけ薄切りにして入れ、食べる直前にもう半分をみじん切りで入れた。
「味は冷えるときに染み込む」ということを、どこかで学んだので、弱火で煮込んだら、火を止め数時間おくを数回繰り返した。

最初の食事でも、大根にはそれなり味が染み込み、またカマを崩して、食べられるだけ盛った魚肉も美味しかった。しかし何しろ大カマである、大部分がまだ鍋に残っている。「明日、明日」と粗熱をとってから、鍋ごと冷蔵庫に入れた。
そして今日の夕食に残りに手をつけようと、鍋を冷蔵庫から取り出し、蓋をあけたら、煮汁が固まっている。「あ、これが有名な煮凝りでは?」とスプーンと小鉢をもってきて、カマと大根の隙間をしゃくり、口に入れたら、カマのからのアミノ酸もろもろと入れすぎの生姜の味と香りで、わたしが作ったとは思えない美味!!!!
残りのカマと大根を食べ終わったら、汁だけもう一度冷蔵庫に入れて、煮凝りだけを食そうと、今から楽しみである。

お酒が飲める方には、いいアテなんだろうが、アルコールディテクター並みの圧倒的下戸のわたしは、濃い日本茶を脇に、本を片手に、煮凝りを食べるとしよう。うふふふ…


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