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毒を吐く その14 「推し」とは何か

カレン・キングストン氏の「ガラクタ捨てれば自分が見える」という文庫本2005年第9刷をやっと手放すことが出来る気持ちになった。
山下ひでこ氏の「断捨離」と近藤麻理恵氏「こんまり」という言葉が、時世に疎いわたしの耳に届くより前に、この本をいつもの本屋歩きで偶然に見つけ、手に入れて以来、折に触れて読んでいた。

この本のタイトルには「風水」という単語が入っているので、わたしの本棚に並ぶのは奇跡だ。「宗教」「占い」という頑強な壁を乗り越えて10年以上、何度も読み返す愛読書のひとつになったわけだ。
脱線するが、わたしにとって、「宗教」と「占い」を敬遠することと、理解することとは異なる。信じていないが、「宗教」と「占い」が存在する意義と人々の要求は頭でも心でも理解できる。正に敬して遠ざけているだけである。

この本を知らない方に、文庫本のカバーの後ろにある、素晴らしいまとめをそのまま引用する。
(引用開始)中国四千年の知恵「風水」は願望を叶える現実的な手段だけではなく、自分を見つける最良の道なのです。フレッシュで澄んだ空間を創って初めて効果がでます。「スペース・クリアリング」により身辺を整理し、余計な『ガラクタ』を捨て、滞った”気”を除き、自然の流れにそって自らを見つめる法です。精神を停滞させる不要品の整理についてのアドバイスは心があらわれます。清らかな空間で、誠実に、真の人生を生きることが大切です。本書を読み進め、実践していくうちに、あなたは知らず知らずに、新しい生き方を発見していくことでしょう。(引用終わり)

「推し」はどこ行っちゃったんだ、論理性はどこだというお声が聴こえる。もう少しだけご辛抱を…

職業人時代は、子育てと仕事を全て独りでこなし、その上職業人としての3分の1は外国暮らしでストレスはそれなりにあった。正直、ショッピングでストレス解消もしていた。まあ、依存症だ。物が減るわけない。日本とドイツに二か所に生活の場があったことも、物を増やす原因だった。

だから物減らしに思いっきり惹かれたのだ。自分の体重増加に気づいて、ダイエットしなくちゃとは思うのだが、正しい食事制限と見合った運動が出来ずに、痩せない(今のわたし)のと同じだ。

だから、キングストン氏、やました氏、こんまり氏がずっとずっと長い間「推し」だったのだ。

職業人時代の前半は「リラックマ」が「推し」だったし、後半はハチャメチャばかりしている「ミニオン」が「推し」だった。会社の事前レポート提出(チェックのため)にリラックマの書類ファイルに入れて上司に出し、怒られたことさえある。

今は、退職し、「終活」と称して、家中をずうっと「物減らし」で何周もしている。特に今年は大型家具を車に載せて、ごみ処理場を何往復もし、目に見えて床面積が増え、物入れの内部も隙間が空いてきた。
完璧ではないが、やっと自分なりの「物減らし術」を体得した。だから「本」が必要なくなり、手放すことができるようになったのだ。

「リラックマ」も「ミニオン」も、退職後は、自分がリラックスし、好みを優先した日々を過ごせることが格段に増え、憑き物が落ちたようだ。

わたしの「推し」というのは、自分の「憧れ」、特に自分がもっていないものを体現している人や物に傾くのだということがやっとわかった。劣等感の裏返しと言ってもいい。

次のわたしの「推し」ができたときには、ただ推すのではなく、一体どこに劣等感があるのかを先ず考えようと思う。
因みに今の推しは、ロサンゼルスで大枚はたいてユニフォームまで購入した大谷翔平選手だ。これは自分が運動能力ゼロだからと、理由は明白、対策は当然無し、応援するだけである。

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