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私と映画〜映画を好きになりたい

今までの人生、映画にあまり興味がなかった。

そもそも育った町に映画館はなかったし、レンタルビデオ屋も長らくなかった。テレビのチャンネルも少なく、テレビの放送の人気番組すら1〜2週間遅れていた。新聞に書いてある番組が放送されないこともあり、ABC放送にいたっては全く映らないので幻の放送局だと思っていた。

こんな環境だから、映画が好きな人は町に少なかったと思う。「オレ映画館行ったんだぜ!」なんてこどもにも、ほぼ会ったことがない。町のこどもたちはみんな等しく、ときどき学校前で配られる50円引き券を握りしめて町の公民館に集合し、移動映画館が見せてくれるドラえもんだとかなんとかレンジャーとかの、謎の二本立て映画を観るばかりだった。

私が小学校高学年のとき、電力会社が小さなホールを作ってときどきタダで映画を放映するようになった。初めての放映は忘れもしない『フランダースの犬』。初めての映画館(ホールだが)にワクワクしながら観に行くと、町中の人間がそこに集まっていた。ホール前は人でごったがえし、なんと立ち見まで出ていた。もう一度言うが放映されるのは『フランダースの犬』である。

急遽二回連続放映されることになり、なんとか席に滑り込んで映画館を堪能した。ポップコーンもなければ立ち見はいるし、帰りはみんなお通夜状態になっていたし、私もネロとパトラッシュが哀れすぎて泣きながら帰ったけれど、あれが私のなかでは確かに映画館デビューだった。

その後、多分ホールでは色々な作品を放映したのだと思うが、こども向けはフランダースの犬しかないらしく、二回目に見に行って再度しゅんとなって以来、行かなくなってしまった。いい作品だと思うが、こどもが何度も観たい作品ではない。思春期の私は人前で泣いてしまうのも恥ずかしかったし。

その後数年が経ち、私が高校生になった頃にやっとレンタルビデオ屋ができた。またも町中の人間が来たのか、私がはじめて店に行った時にはすでに棚はガラガラだった。とにかく田舎にはとくに娯楽が少ない時代だった。

スカスカの棚から、親に薦められたチャップリンの映画を借りた。『モダン・タイムス』だ。その後チャップリンにハマった我が家は『黄金狂時代』『独裁者』『ライムライト』『街の灯』と有名どころを続けて見た。そして、我が家族は靴を見るとヨダレを垂らすようになった。チャップリンにハマったもの全員がかかる病に、我々もやっと罹患することができたのだ。 

しかし、そもそも映画に大して興味のない我が家にレンタル文化は根付かず、私がひとりで『セーラームーン』と『マジック騎士レイアース』のアニメシリーズを借りて観るにとどまった。

テレビではシュワちゃんが妊娠して子供を産む映画と『ベイブ』『マスク』がやたら放送されていた気がする。気がするだけかもしれない。あとは『アダムスファミリー』。あれは怖くて観られなかった。『リング』はいとこが借りてきたのを一緒に見て、怖すぎて眠れなくなった。ビデオ恐怖症に陥り、家中のビデオを箱に封印した。『仄暗い水の底から』『チャイルド・プレイ』なども怖すぎてチラチラと指の隙間から観るにとどまったが、チラチラ見ただけで怯えて眠れなくなった。人形とエレベーターが恐怖の対象に加わった。あの頃、ホラー映画もテレビで平気で流れていたように思う。田舎のこどもにとって、夜のホラー映画は日常に潜むとんでもない恐怖であった。

『バックトゥザフューチャー』『ホームアローン』はシリーズで楽しんだ。子供心にワクワクして、とくに『バックトゥザフューチャー』シリーズは大好きだった。

私がもっとも好きな映画『フォレスト・ガンプ』と出会ったのも、確かテレビだった。

あとジブリ作品!!『となりのトトロ』はビデオ録画していて、刷りきれるほど見た。庭にドングリを植えては踊った。どうにも見たものに影響されやすい性格らしい。『紅の豚』や『おもひでぽろぽろ』はこどもだったので途中で飽きてしまったが『耳すませば』は何度も真剣に見た。

そうだ、初めて本物の映画館で映画を観たのもジブリだった。当時話題だった『もののけ姫』を、なぜか大阪まで観に行ったのだ。

あとはいつだか忘れたが、なぜか『タイタニック』も映画館で観た記憶がある。どちらも両親が連れていってくれたのだが、『タイタニック』は濃厚なエロシーンが長くて気まずかったのが強烈な思い出だ。多分、誰でもあのシーンは長いと感じるんじゃないだろうか?ただ、一度しか観ていないから今の私が見たら意外となんでもないシーンなのかもしれない。

私が20歳までに真面目に(?)観た映画は、この程度だ。

映画好きでなくとも誰でも知っている作品ばかりだろうし、映画好きなら多分ここまで読んだだけで、私がどれだけ映画に興味なく過ごしてきたかわかるだろう。

映画が嫌いなわけではない。バックグラウンド(=ド田舎)もあり、単純にそこまで興味がなかったのだ。

むしろ、もっと映画を好きになりたい。

きっと今まで見てきた以上におもしろい映画はたくさんあるはずだ。知らないまま歳を重ねていっても多分支障はないんだろうけど、単純に楽しいことは積極的に人生に取り入れたいじゃないか!

一応近年少しずつ借りて観たり、映画館に行ってみたりしているのだが、まだまだだ。というか、恥ずかしながら知識が無さすぎてどこから観たらいいのかさっぱりわからない。

こどもが生まれてからは映画を見る暇もなくなっていたのだけれども、最近少し大きくなってきたので逆にこども向け映画を観るようになってきた。幸い今はそこまでの田舎でもないので、TSUTAYAもあればGEOもある。映画館もある。それに今はAmazonプライムなどの動画サイトも充実している。映画を見るための環境は昔よりもずっと良くなった。

ここから少しずつ、こどもと一緒におもしろい映画を探して、映画を好きになれたら。そんな風に思っている次第である。

地道に観てたら、いつかこどもが大人になる頃には「映画?結構好きですね〜」くらいは言えるようになるんじゃないかしら。どうかな?

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