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仕事ネタ/経営と人事を連動させようとすればするほど、人事がしんどくなる理由
40手前で、何の縁もゆかりもない三重県は菰野町というところに移住したmitaniです。
人事に携わって一年近くになるのですが、必然的に比較的経営層と近いところでお仕事することによって見えてきたことがあるので、言語化してみようと思います。
人事=事業成長のための組織づくり
身も蓋もない話ですが、経営や事業運営の観点における人事の役割は「事業成長のための組織づくり」に集約されると考えてます。
採用、組織変更、昇進/異動、報酬設計、評価制度、教育etcの人事企画/施策は、自ずと経営戦略や事業戦略実現のための手段になりますし、人事としては経営/事業の理解なしには、本質的に意味を成さないものになってしまいます。
とまあ、言うは易しなのですが、これがとにかく難しい。
経営/事業戦略と人事の関係性
経営という観点で言えば、組織におけるリーダーシップを短期・中長期的な視点でどのように実装していくのか(マネジメント力強化/後継者育成)になるし、事業戦略としては戦略実現のための組織的な戦力強化を図っていくことが、もう一歩踏み込んだ人事の役割だと考えております。
いわゆる人的資本経営は、端的に言えば、経営観点で会社としての「ありたき姿」から逆算して、打ち手の実行と進捗モニタリングを繰り返し、戦略的に「ありたき姿」に近づけることであり、人的資本開示は、それらの戦略と達成進捗を開示することで、将来的な企業価値向上に向けた経営者のアカウンタビリティを投資家が求めていること、と理解しています。
(上場企業に対する開示義務について、思うところは色々ありますが、一旦今回はそこには触れません。)
極論、10年後の会社の姿をイメージした時に、例えば「事業が多角化して今の売上や収益が〇〇倍になって、社員が〇〇〇人くらいになった時、組織としてどういう状態になっている必要ある」というのから逆算した時に、どういう人材がいないといけないとか、そういう観点で、採用とか教育とか制度とかを考えていくような話。
事業戦略という意味だともう少しタイムスパンとしては短くて、よくある中期事業計画とかの単位で、目標達成のためのリソースや組織的なレバレッジを効かせる仕組みを、人事施策に落とし込むということ。
言わずもがな事業戦略による目標達成は、その先の会社としての目指す姿の実現に向けたマイルストーンでもあるので、タイムスパンの違いでしかないので、結局は地続きであり、経営そのものに直結するとはそういうことなのである。
経営や事業運営における一番の不確定要素は「人」
戦略人事と、一般的に言われるものの考え方は、「経営目標を達成するための事業戦略実現のため」のものであり、そのための「組織を作ること」が人事の役割ということになる。
HRBPがもてはやされるのも、事業戦略のための組織づくりを、より事業側に踏み込んで機動力高く実行するための手段である一方、組織課題は組織ごとに異なるので、全社で画一的な人事施策が必ずしも各組織運営にプラスの作用を及ぼすとは限らないという点も、あると思っております。
ジョブ型雇用含め、それ自体が組織をサイロ化させていく要因にもなるという見方もできる一方で、組織課題はつまるところ「人」による問題であり、非常に不確定要素の高い問題だからこそ、一定の組織規模になると組織によって課題感が異なるといったことが起こり得ます。
例えば、極端にエンゲージメントが低いが、個々の成果主義が強い個人商店型組織と、極端にエンゲージメントが高いが、組織に依存しすぎて個々の主張やオーナーシップ/リーダーシップが低い組織が同じ会社に共存するようなこともあり得ます。
目標達成する上でどっちが良いのか?でいえば、個人成果主義が強い方が近道な場合もあります。
「早く行きたいなら一人で行きなさい、遠くへ行きたいならみんなで行きなさい」という言葉がありますが、早く目的に達成するために、個人成果主義が強いことを是とするのも事業戦略としては間違いではありません。
ただし、組織としての綻びが出始めると、「人」に起因する問題は、あっという間に組織全体の空気を悪化させることもあります。
結果、マイナスをゼロにするための、生産性のない組織内の問題解決に労力と時間をかけないといけなくなること起こり得ます。
それも「人」の問題なので、価値観や考え方が異なる人たちが全員腹落ち感のある落着に持っていくのは、かなり難易度の高いものになります。
組織的に安定している方がトータルで見てロスは少なくなるので、組織の安定を一定作り上げる方が良いのではないかと思う一方で、安定=慣性の高い組織でもあるため、現状維持のバイアスによる保守的な風土が醸成されてしまうと、それらを変革も難易度が高くなります。
組織づくりにおける不確実性の高いリスクが「人」そのものに起因しており、それらに向き合うのは、経営や事業運営上、とてもカロリーがいることであり、マネジメントとしてできることなら避けたいし、ビジネスグロースに頭も時間も使いたいと考えるのは至極当然。
だからこそ、経営/事業戦略のための「組織づくり」に関して、リーダーの「本音」としては、できるだけ「人」に向き合いたくないから、事情やその気持ちを理解してくれて託せる相手として人事に期待をするのではないかと。
そういう意味で経営や事業成長に資する「組織づくり」が人事の役割とするのであれば、はっきり言ってめちゃくちゃ重い。
「人」という不確実性の高いリスクによる問題の解決は言い方良くないけど「汚れ仕事」という一面も否定はできないし、そこを経営やリーダーが人事に託したくなる気持ちもよくわかります。
最終的に、誰かが悪者にならざるを得ないこともあるので、人事が悪者にならざるを得ない場合もあるとは思いますが、人事もつまるところは会社に仕える身ではあるので、結局はそういった本音をリーダーと曝け出し合える信頼関係を作った上でやっていかないと、ただただ重くてしんどいだけになるんだろうなと思いますし、組織に向き合えば向き合うほど、正論や綺麗事だけで罷り通るほどイージーな話ではないのもわかります。
持ちつ持たれつ、経営や事業レベルの視座で組織づくりを伴走するというとてつもなく重たいミッションこそが、経営者や事業責任者が本当に求める人事だと思いますし、それだけ組織づくりは難しいってことを人事が理解しないといけないわけなのです。