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息子は誰と遊んだ? 怪談・逢魔が時物語「クワガタの山」

 息子がまだ幼稚園児だった頃の話。

 我が家の裏に、浅間山(せんげんやま)という
 低山がある。
 昔、古戦場となった場所で地元では有名な山。

 夏にはクワガタやカブトムシが獲れるので、
 夜に懐中電灯持参でよく行った。

 その夜九時頃、小学2年の息子と弟、カミさんの
 四人で向かった。

 カミさんは怖いと言い、木にヘッドライトを
 照らしたまま車中で待機していた。

 息子たちと懐中電灯で虫がいそうな木を探照しつつ
 林の中へ。
 下の息子はいちばん後からついて来る。

 三十分くらい経った頃。
 収穫もあり、帰ろうとすると下の息子がいない。

 「お~いっ! どこだ?」
 大声で探していると、奥の方から駆け戻って来た。

 「あんた、あんなとこで何してたの?」

 車に戻ると、車中から見ていたカミさんが
 下の息子に訊く。

 カミさんの話によると、下の息子は林の奥へ
 ピョンピョンと飛び跳ねながら、
 何か楽しそうに入って行ったらしい。

 ただ、息子の答えは不可解なものだった。

 
「知らない爺ちゃんがね、一緒に遊んでくれたんだ。
 楽しかったよ」

 
一緒にもっと奥へ行こうと言われたので、
 途中までついて行ったらしい。

 すると、父親の呼び声がしたので戻って来たという。

 もちろん、真っ暗な夜の山に人などいない。
 カミさんと思わず目を合わせた。

 「うわぁ~っ!」
 叫びながら、慌てて車を発進させた。


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       投稿 T・Mさん(男性・東京都)

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