異形の怪物
テクノの大御所、オウテカが「大化けした」といわれている作品が2001年の“Confield”である。
引用にもあるとおりだが、注目すべきはMax/MSPを導入した点にある。
なお私もリアルタイムで購入して聴いた当事者であるがそれまでのテクノ/エレクトロニカに慣れ親しんだ耳ですらガチャガチャしてて一聴しただけでは構造を理解できなかった記憶。
ちょうど同じころスクエアプッシャーの“Go Plastic“がリリース。やっぱりガチャガチャしてて、困惑。
あのころ、Max/MSPによるプログラミングが猛威をふるい音楽に革命が起きていた。ただテクノアーティストがMaxをうまく運用制御して制作しているのかあるいはアーティストの脳みそがMaxに「ハック」されて延々とソフト用デモを作らされているのか、よくわからないところがあった。どの作品もなんとなく似通っていたのだ。
この懸念はトム・ジェンキンソンも密かにもっていたようで”Go Plastic”から数作を経てまったく異なる方法論を模索し始めた。対してオウテカはスタンスを堅持しつつ20年、すっかりMaxのセールスマンみたいになってしまったのは周知の通り。
2020年以降のAI画像生成を使ったアート作品とその隆盛にあの頃抱いたのと似た感興を覚える。最先端のテクノロジーに夢中になったアーティスト達の作品がみな一様に面構えが似てしまうというこの現象と。さすがに牽強付会とまではいえまい。
どうも「理系」を中心とした新しいアートのムーブメントが水面下で開発/新興している模様。例えばMITとかからまったく新しいアートが誕生する、とか。全然普通にありえると思う。別言すればバンクシーの時代が終わり理系オタクの時代へ。
最近だと脳科学者の中野信子もたびたび「美」やら「アート」云々と口にしている。いっぽう大衆もAIアートには早々にフィットして爆発的に広まっているわけで、これは決して一過性のブームではない。2030年までに新たなアートのスターが生まれて「革命」が起きるのか、それとも単なる初期衝動で終わってしまうのか…
あ、スプツニ子!は