お前の噺は面白くねぇな
小三治は師匠の小さんに「お前の噺は面白くねぇな」といわれて、救われたと言っている。
たいへん有名な話である。
本人が救われたっていうのだから結構だが、たったこれっぽっちでは、聞かされている側は、よくわからない。
救われた、とは…?
この、よく分からない言葉が、ときおりふっと頭によぎるのだ。
国宝級の大名人の至言だ。きっと私には一生わからないだろう。
でも、どうやら一生わからないような良い言葉なのは、理解してきた。
面白い話、なんていう、分かりやすいものより、もっと良いものがあるということなのだろうな。