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第15回 お寺でビブリオバトルオンライン (報告)
第15回 お寺でビブリオバトルオンライン (報告)
3月30日(水)20時〜22時30分、zoomで。8名参加。
【今月の紹介作品】
①『いま、地方で生きるということ』
西村佳哲 ミシマ者
『自分の仕事をつくる』などで「働き・生きること」を考察してきた著者が、「場所」から「生きること」を考えた、働き方研究家の新境地。
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②『岸』
中勘助・寺田寅彦・永井荷風 ポプラ社
夜半の雨が葉を散らし、晴れた朝には浜で顔を洗う。湖の小島で暮らした日々を深まりゆく秋の寂寥のなかに描いた。中勘助『島守』
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③『カルト宗教信じてました。』
たもさん 彩図社
私が私であることを認めてほしい。何かに頼りたい。頼っていたものを失いたくない。否定されるとかたくなになる…。それは誰しもが抱える心の本当の姿なのかもしれない。
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④『人はなぜ物語を求めるのか』
千野帽子 ちくまプリマー文庫
物語とは求めて読むものではなくて、呼吸したら二酸化炭素が出るように、自ら生み出してしまう。人は誰しも物語る生き物。
時間の流れを自分にとって都合の良い因果で理解して決めつけてしまう。なぜなら理解すること、分かることは快感だから。
それがどんなに人から見たらいびつであっても、自分で物語を生成してその中でもがき苦しんでいる。だが救うのもまた物語。あ、これも決めつけか。
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⑤『証言モーオタ』
吉田豪 白夜書房
宗教の始原を想わせる血涙の叙事詩、奇跡の出版。
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◎⑥『こんにちは、昔話です』
小澤俊夫 小澤俊夫昔ばなし研究所
昔話は大人が計り知れない、生きることのうんと基本のところを話す。だから力強い。子どもの感受性と大人の感受性は違う。子どもは子どもの感受性でお話を受け取る。大人の理屈(倫理観や道徳)でお話(語り口やストーリー)を変えて、それを邪魔してはならない。'昔話は残酷'というのも大人の理屈。
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⑦『ことり』
小川洋子 朝日文庫
人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりをよく理解し、こよなく愛する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。
小鳥たちの声だけに耳を澄ましながら、世の片隅で生きた二人の物語。
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◎⑧『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』
岡田美智男
自らはゴミを拾えない〈ゴミ箱ロボット〉、たどたどしく話す〈トーキング・アリー〉、一緒に手をつないで歩くだけの〈マコのて〉・・・ひとりでは何もできないロボットとともに、コミュニケーションについて考えてみた。
〈弱いロボット〉の研究で知られる著者が、自己、他者、関係について行きつ戻りつしながら思索した軌跡。
ロボット自体は不完全。でも、相手に委ねることで目的を実現する。まさに〈弱さ〉が周囲との関わりを駆り立てている。
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◎は今回のチャンプ本
毎月一回、月末に開催している。
今回もビブリオバトルをする中で、多くの魅力的なテーマ、論点があげられた。
「どこに住んでも今ここ」「名文とは何か?」「カルト性はどこでもある」「不器用」「物語について様々な見方」「昔話の意義」「言葉にならないものを言葉にすること」「弱さを認める」などなど。
自分が薄っすらと考えていたことを、他の参加者が言葉にしてくれたり、そのテーマについての本を紹介してくれたりする。