退職
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終わりが始まる。
2月で会社を退職した。
新卒で入社した日刊スポーツ新聞社。
目標だった中央競馬の記者も担当できた。
未練はない。とりあえずは。
(思い出すだけで殴りたいほど腹が立つ元上司のことは、書かないでおく)。
社会人3年目を終えようとしている25歳。
普通であれば、キャリアアップの為にクラスが上がった会社に転職するのが常だろう。
私は4月から吉本興業の養成所、NSCに入学する。
夢だった芸人の道へと進むことになる。
まだ奨学金の返済が180万残っているというのに。
心の中のエヴァンゲリオン・アスカが「あんたバカァ?」を連呼している。
これを読んで頂いている知人の皆様。
今後はライブの告知などでSNSがうるさくなるかも知れない。
予め、謝罪しておく。申し訳ない。
「金のないバカが何か言ってるわ」と、受け流して欲しい。
そして偶に「あのバカに生卵でも投げつけるか」と、ライブを見に来てくれるとありがたい。
当てやすいように天パを数倍誇張してお待ちしておく。
またも予め謝罪させてほしい。
芸歴数年目までの若手が作るネタは基本的につまらない。
来ても満足させられないことの方が多いかもしれない。申し訳ない。
見に来てくれる人はテレビで見る芸人の像を捨てて欲しい。
キッザニアで我が子がお笑い芸人のお仕事体験をしていると思って見に来て欲しい。
4月から私は、貴方がお腹を痛めて産んだ子供に生まれ変わる。
奇しくも漫画「推しの子」である。そう、私はアクアなのだ。
これからは私のことを阿部アクアリウム泰斉とお呼びいただきたい。
もちろん、数年後にはアイお母さんを満足させるネタをご用意する。
これは保証する。
最後に、記者を辞める時のエピソードを1つだけ。
取材相手に自分が仕事を辞めることは、殆ど言わなかった。
中央競馬には最後の1年しかいることが出来ず、人間関係を構築出来るまでに至らなかった。
というのは言い訳。
そもそも私は友達が極端に少ない人間。
人と仲が良くなる方法がわからない。
特に心の開き方が分からない。
アニメ・名探偵コナンのCM明けの様に、勢い良く開く扉が普通の人間。
銀行の金庫のように物理的に重く、そもそも扉が何重にもなっているのが私だ。
友達なんて簡単にできる訳がないのだ!
しょうがないのだ!
そんな私に温かい惜別の言葉をくれた関係者の方がいる。
柴田善臣騎手。言わずと知れた、名ジョッキーだ。
日刊スポーツでは柴田善騎手のコラムを掲載しており、取材する機会が多かった。
競馬の話以外もたくさんしてもらった。
お笑いが好きだそうで、特にアメトークの運動神経悪い芸人はツボだと言っていた。
最後の電話取材。辞めて芸人になるんですと伝えた。
「ええ、本当に!?なにそれは、コンビで入るの?1人で?」
逆取材のような形をとってくれた。
ひとしきり説明し、電話の最後。
私はこれからは競馬好きに戻って柴田騎手を応援しますと伝えた。
すると善臣さん。
「もちろん、これからは僕もファンとして応援するよ」。
すごく嬉しかった。
善臣騎手だけではない。
芸人になると話すと「応援する」と言ってくれる人が沢山いた。
友達は少ないと思っていた私なだけに、意外だった。
忘れられない言葉がいくつかある。
サンケイスポーツの名物ベテラン記者、水戸さん。
「お前な、阿部はな、目がいいんだ。いい目をしてる。だから売れる。売れるから、絶対に辞めるな」。
言葉にするとびっくりするくらいに中身が無かったが、本当に私のことを応援してくれていた。ありがたかった。
もう1人。東スポで元々芸能も担当していた垰野さん。
軽々しく望みを持たせるのではなく、地に足がついた言葉だった。
「そうか。これから(売れるまでは)長いよ。それに耐えるんだよ」。
私が万が一売れた場合、「芸人阿部、社会人時代はつまらないコミュ障だった!」という事実に基づいた週刊誌ネタを仕立てて来そうだが、とにかく嬉しかった。
いろんな人が実は期待してくれている私の人生。
ネガティブな性格の持ち主の自分だが、少しだけこれからの人生に期待が持てた。
頑張ってみようと思う。
俺が記者を辞めた後
「あいつ芸人で売れると思います?売れないですよねwwwwwwww」
と陰口を話していた元上司、
日刊スポーツ桑原幹久の目が節穴だったということを証明する為にも!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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