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【エッセイ】高校生の頃、部活動の体験入部で少し迷った話

高校生の頃、僕は部活動に青春の全てを注いだ。そう言い切れるくらいにはバスケットボールという競技に熱中していた。通っていた高校は県内で1番偏差値の高い高校だったが、3年間で勉強した記憶はほとんどない。一応、映像授業の塾に通ってはいたが、まともに受けたのは林修先生の現代文の講座くらいだ。おかげでセンター試験の現代文は模試でも本番でもほとんど点数を落としたことがない。現役時のセンター試験の国語の点数は186点だった。14点は古文と漢文で落とした。別に自慢がしたいわけではない。少し話が脱線しただけだ。話を戻すと、僕は高校に入ってバスケ部に入部した。とは言っても、入学当初は他の競技にも興味があり、部体験の期間は色々な部活動を見て回った。バスケ部以外の候補は野球部、ボート部、ハンド部の3つである。僕は中学生の時、野球部からバスケ部への転部を経験しているので、バスケと野球はそこそこ上手い方だったと思う。ボートとハンドに関してはほとんどの人が高校から始めるので、その2つも候補に加えた。

部体験の1日目はバスケ部の練習に参加した。もちろん練習は楽しかったし、友達も何人かできた。それだけではなく、同じ中学のバスケ部の先輩である清水君が同じ高校のバスケ部にも所属していて、その人が次期キャプテン候補であるという話を聞いた。その人は信頼できる人だったので、僕の不安な気持ちはだいぶ和らいだ。そして、部の雰囲気的にもバスケ部に入ったら楽しい高校生活が送れる気がした。

部体験の2日目は野球部の練習に参加した。練習は楽しかったが、練習終わりに謎の声出しをさせられた。全員で円陣を組んで好きな女優の名前を叫んでいくという本当にくだらないものだった。先輩から声出しが始まり、続いて体験入部の1年生も順番に叫んでいった。僕の前の人が「新垣結衣です!」と叫んだので、僕も適当に「広瀬すずです!」と叫んだ。中途半端な大きさの声だったと思う。別に恥ずかしさはなかったが、心の底から馬鹿馬鹿しいと感じていた。そして、最後を締めた先輩がAV女優の名前を叫んで周りの皆んなは大爆笑していた。何が面白いのか全く分からなかったし、非常に気分が悪かった。僕は「この集団にだけは入りたくない」と思って野球部を候補から消去した。

部体験の3日目はボート部の練習に参加した。先輩と一緒に乗り込み、生まれて初めてボートを漕いだ。それはそれはとても楽しい体験だった。ボートから降りると、筋トレルームに案内され、ローイングマシンの体験もさせてもらった。ローイングマシンとはボート専用の筋トレ器具みたいなものである。そのマシンのスコアみたいなものを他の1年生と競ってしばらく遊んでいた。そして、全ての体験を終え、仲良くなった他の1年生と帰りの準備をしながら談笑している時、1人の先輩がやってきて「ところで君らコンダクターっていう英単語の意味分かる?」と聞いてきた。僕は分からなかったので素直に「分かりません」と首を振った。他の1年生も続いて首を振った。すると先輩は「コンダクターは指揮者って意味だよ」と笑いながら答えた。すかさず隣にいた1年生の女の子が「ボートと何か関係あるんですか?」と尋ねると、その先輩は「いや、僕はバカなやつが嫌いでね。試しただけだよ。」と再び笑いながら答えた。僕は「なんだオマエ」と言いそうになったが、その場ではグッと堪えて愛想笑いをした。まあいい。変な人はどのコミュニティでも何人かはいるものだ。そう思って気にしないふりをした。ボート自体はとても楽しかったし、競技の珍しさも相まって、大満足の1日だった。そして、外も暗くなり、僕たちは帰路に着く。が、そこで、最悪の事実が発覚した。僕とコンダクター先輩の最寄り駅が一緒だったのだ。僕は高校入学を機に県内で引っ越しをしたので、家の周辺には知り合いがいなかった。つまり、初めてできた知り合いがコンダクター先輩になってしまったのだ。その日の帰り道、電車の中で、コンダクター先輩は聞いてもないのにおすすめの数学の参考書の話をずっとしていた。僕は「この人と毎日一緒に帰るのは地獄だ」と思ってボート部を候補から消去した。

部体験4日目はハンド部の練習に参加した。アップをした後、シュートの練習が始まり、先輩からボールを渡された。が、その瞬間に僕は「あ、これ無理だ」と悟った。僕は身長は日本人男性の平均くらいなのだが、手が人より随分と小さいのだ。ゴールに向かってボールを投げてみると、やはり僕の手では上手く投げられなかった。その場で優しそうな顔をした先輩に「君はちょっと向いてないかもね〜」とはっきり言われ、悲しくなった。僕は「用事があるので帰ります」と言って途中で練習から離脱した。そして、バスケ部の練習場所まで足を運ぶ。体育館の扉を開けると先輩のマネージャーさんが「いらっしゃい!よく来たね!」と歓迎してくれた。僕はその日バッシュを持ってきてなかったので練習には参加しなかった。代わりにマネージャーさんのお手伝いをさせてもらった。マネージャーさんはとても良い人で、思わず僕が他の部で体験してきた愚痴を話すと、「あー、ちなみにうちの部にも変なやつはいるけど、1番変なのは君と同じ中学の清水だね。」と言って笑っていた。それを聞いて僕は「よしバスケ部に入ろう」と決めて、その場で入部の署名をした。

と、ここまで書いてきたけれど、最初は高校の部活動全体を通してのエッセイを書くつもりだったのだが、部体験のエピソードだけで1本のエッセイになってしまった。もう脳が疲れてパニック発作が起きそうなので、続きはまた日を改めて書きたいと思う。

最後まで読んで頂きありがとうございました。他のエッセイも良かったら読んでみてください。

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