<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.1/ 私のカメラ選び
文、写真:小竹直人
OM-1の魅力とはなにか。本題にはいる前に、ちょっとだけ私自身の鉄ちゃん経歴を書きます。
私がカメラに求めているもの
1990年より中国の鉄道取材を始めSLから満鉄遺構など撮影に取り組んできました。コロナ禍によって失われた3年間を引いたなら丸30年間、絶え間なく日本と中国を往来し、渡航回数は90回以上になりました。
中国での撮影は過酷なものでした。特に内陸北部では、冬になると氷点下40度にも達し、砂塵や粉塵が絶え間なく吹き付けてつけてくるのです。バッテリーは電圧低下で瞬く間に消耗し、レンズの絞りも機能せずに開放値以外は使えない状態になったりもするのです。そうした状況下での撮影は、全幅の信頼を寄せられる機材でなければなりません。私の機材選びはスペック機能よりもカメラ、レンズの信頼性というか堅牢性を最重要視しています。
OM-1に魅かれた理由
さて、本題にはいりましょう。
私はこれまでにOM SYSTEM(旧OLYMPUS)のOM-D E-M5MarkⅡ、E -M1MarkⅡ、M-1MarkⅢ、E-M1Xと使用してきました。それらの機材に共通するのは他社の追随を許さない優れたダストリダクション、手ぶれ補正機能です。
中国取材撮影で得た知見というか治験からOM SYSTEMのカメラを使うようになりました。その集大成がOM-1なのです。手ぶれ補正機能は最大で8段(M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO使用時)。そしてなによりIP53に対応した防塵防滴機能を備えています。
IP53ってなに?既にご承知かとも存じますがこちらをご覧ください。
ご覧頂けたでしょうか。
土砂降りの雨でもカメラもレンズもへっちゃらよ!ということです。もっというなら、川に落としたとしてもしっかり拭き取って問題なく作動したとい逸話があるように、超絶レベルな防滴性能と言っても過言ではないでしょう(水没はメーカー保証外なのでご自身の責任でご使用ください)。カメラやレンズに施されたシーリング配置図をみての通り、カメラレンズ内にホコリ水滴を極限まで排除するこだわりです。これこそが、私にとってカメラ選びの1丁目1番地なのです。
氷点下40度極寒の地や冬山登山などにおいてダウンジャケットとはライフジャケットすなわち生命維持装具です。高級なダウンジャケットはシームレスですね。縫い目のあるモノは縫い目から寒気が入り体温を奪います。死活問題です。言い換えればカメラレンズ内の徹底的なシーリングとは、ダウンジャケットにおけるシームレスと同義なのです。人体の体温保持と同様にカメラのバッテリーの電圧低下も緩慢にしてくれるのです。こうした細部に至る作り込みこそが、OM-1の魅力なのです。
コンピュテーショナルフォトグラフィ
機能・性能も向上しました。
特にデジタル技術を駆使して新たな表現を可能にするコンピュテーショナルフォトグラフィが進化しました。
OM SYSTEMの独自機能と言えるライブコンポジットやデジタルシフトはもとより、圧倒的な高画素を実現するハイレゾショットも手持ち撮影が可能となりました。E-M1Xから引き継いだインテリジェント被写体認識の鉄道モードもブラッシュアップされました。究極の瞬間をとらえるプロキャプチャーは従来の倍速の秒120コマとなり、高感度特性も常用ISO25600にまでなりました。
次回予告
コンピュテーショナルフォトグラフィ機能の魅力はまだまだたくさんあります。ライブコンポジット、深度合成、プロキャプチャーモードなど、OM SYSTEMにはユニークな機能が満載されています。
次回から、これらの機能による鉄道写真表現について深堀りし、OM-1の魅力をお伝えしていきます。
ご期待ください。
OM-1作品
東武日光行のふたら71号のロケハンで路地に入ると民家の軒先に洗濯物を干しある風景に出会いました。そこで思わず足が止まり、SLの通過を待ったところです。
東武鉄道の「SL・DL大樹に手を振ろう」のキャッチコピーのお手本のような光景に遭遇しました。
進化したAI被写体認識AF(鉄道モード)で正面撮りからズーミングで機関車サイドを引き寄せて撮影しました。
金網越しから長い直線区間を狙いました。煙を吐き出すタイミングと光の当たり具合を確認しながら撮影しました。こうした条件ではAI被写体認識AF(鉄道モード)が非常に役にたちます。常に機関車をロックオンしてくれるのでフレーミングに集中して撮れます。
筆者紹介
小竹直人(こたけなおと)
1969年新潟市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後。フォトジャーナリスト樋口健二氏に師事。
1990年より中国各地の蒸気機関車を取材し、2012年~17にかけて中朝国境から中露国境の満鉄遺構の撮影に取り組む。近年は、郷里新潟県及び近県の鉄道撮影に奔走し、新潟日報朝刊連載「原初鉄路」は200回にわたり掲載され、以降も各地の鉄道を訪ね歩いている。
近著に「国境鉄路~満鉄の遺産7本の橋を訪ねて~」(えにし書房)などがある。