秋風荒ぶ日本の五輪運動〜オリンピックの費用対効果〜
やっと小さな秋が見えてセンチメンタルな感情にひとときの安息を思う。そこにどこからともなく秋風が吹いてきた。スイスはローザンヌの方からだった。
10月1日にブリヂストンが今年限りでオリンピックの最上位スポンサー(TOP)を降りると発表した。トヨタ、そしてパナソニックに続いて「石橋お前もか?」と逆説的ギャグの一つも言いたくなる。(ブリヂストンの創始者石橋は自らの名前を逆立ちさせて会社名とした)2014年にブリヂストンはまさに「石橋を叩いて」TOPに参入したのだった。前年の東京五輪2020の決定が背中を押した。
これで日本企業の名前はTOPから消えることになった。
トヨタ、パナソニック、ブリヂストンの離脱は、日本がオリンピック・ムーブメントから離れていくことを示すものに思える。コロナのパンデミックにより一年遅れで開催された東京五輪2020への向き合い方、その五輪に関連する汚職スキャンダルの発覚、そして五輪への信頼を取り戻す意志の見えない札幌冬季五輪招致辞退の流れの中で、大物企業が理性を持って五輪から去ったのだ。
五輪汚職スキャンダルに関わった本人が自らの潔白を「正当な利益」として主張すればするほど、正当な企業家精神にとって、五輪は対費用効果のないものに見えただろう。五輪収賄容疑の高橋治之が保釈後にメディアで大々的に自己弁護を展開したのは三社の撤退には非常に効果的だった。日本経済の大物たちは五輪から撤退するが、スポーツから目を背けているわけではなく、より直接的な視聴者獲得方法を模索しているようだ。
方や国際オリンピック委員会(IOC)はどう思っているのだろうか?大物三社の撤退であるが、心配には及ばないようだ。インドの企業が名乗りをあげ交渉に入っている。中国ブランドはそれに先立って参入するだろう。
そうなると問題は日本の五輪運動そのものである。果たして五輪の費用対効果とは何か?と問うべき時だ。本質的にそれは世界平和構築である。そのためにIOCは汗をかいている。しかしそのことが日本では全くスルーされている。オリンピックスポーンサー獲得、放映権料拡大による商業主義化された五輪という古いレッテルが剥がされることのない状況が1984年以降続いているのだ。
先週ニューヨークで開催された「未来のサミット」および第79回国連総会のハイレベル討論会に出席したトーマス・バッハIOC会長は、30カ国以上の国家元首や政府首脳、国連事務総長に個別に会って「スポーツによる世界平和構築」のために勢力的に動いている。
オリンピック運動が世界平和構築に貢献するものであること自体を日本の社会に理解してもらう努力が必要なのだ。でなければ日本から五輪精神は去ってしまうだろう。大物三社の五輪撤退についても「五輪に価値がないから」という固定観念で裁く空気が醸成される社会
を世界の五輪運動が見捨ててしまうことになる。
ブリヂストンのTOP撤退は一つの時代の終わりを告げている。
私の胸中をローザンヌからの秋風が通り抜けていく。寂しい。
(敬称略)
2024年10月3日
明日香 羊
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編集好奇
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秋の香を感じるとかつては言いようの無い至福に包まれたものです。春のような揚々とした幸福とは違う、少し大人になったような少し人生がわかったような、その一瞬がとても永遠のような。今年の秋はちょっと違うな。自省して世を見つめ直せと言われている気がする。美しい日本の奇跡があることを祈るばかりだ。「汝の敵を愛せよ」
「2024パリ大会 徹底、実践五輪批判」日刊ゲンダイ連載、全18話公開中です。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4728/495
Forbes Japanで開会式について五輪アナリスト春日良一が分析。詩的スポーツ思考。
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YouTube Channel「春日良一の哲学するスポーツ」は下記から
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