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セバスチャン・コーの勇足〜オリンピックのアピアランスマネー〜

アピアランスマネーという言葉をご存知だろうか?

1984年ロサンゼルオリンピック開催前にメディアを騒がせた言葉だ。出場する(appear)ことによって得る対価としての金銭のことである。

当時、五輪にプロの選手の出場を可能にするかどうかで国際スポーツ界はもめた。1980年に国際オリンピック委員会(IOC)会長となったサマランチは五輪のプロ化に舵を切ろうとしていた。

日本でもアマチュアリズムの権化が健在し、議論は白熱した。

しかし、サマランチは最後の砦は用意していた。たとえプロの参加を認めたとしても五輪参加によって報酬を得ることはできない。それが五輪がアマチュアリズムをその内に秘めたものであることを保証する唯一の手立てであった。

オリンピックにアピアランスマネーは存在してはならないと。ところが・・・

世界陸連(WA)は10日、今夏のパリ五輪で金メダル受賞者に5万ドル(約760万円)の賞金を贈ると発表した。国際競技団体としては128年で初の試みとなる。近代五輪はアマチュア選手の大会として始まったため、国際オリンピック委員会(IOC)は賞金の授与は行っておらず、世界陸連の決定は大きな転換点となる。ロイター通信が本日伝えた。

WA(World Athletics)の会長はセバスチャン・コー。西側諸国のボイコットがあった1980年のモスクワ五輪にも英国政府の反対を押し切って参加し、陸上1500メートルで金メダルを獲得したアマチュアアスリートの鏡のような存在である。

そのコーが一部のメダリストたちが母国の政府や競技団体、スポンサーから報奨金を受け取っているとの認識を示したうえで、「それに加わる、ささやかな貢献だ。私は選手たちに、ここで完全に孤立しているわけではないことを認識してほしいと思っている。私は選手たちのパフォーマンスとスポーツの成長との関連性を理解している。スポーツが成長するにつれて、彼らもまたその恩恵にあずかるということを知ってほしい」と述べたそうだ。

驚いた。

オリンピック憲章の基本を覆す思想表明だからだ。1974年までオリンピック憲章には「アマチュア」という概念が存在し、スポーツを行うことで対価を得た経験のある者はオリンピックに参加できなかった。

しかし冷戦下、社会主義国はスポーツによる対価としての報酬は受けていないが、国家が全てを支援したトップアスリートを育てており、それは資本主義国のプロフェッショナルと同等であった。そのバランスを保つにはプロの五輪参加の道が必然であった。

1988年にオリンピックにプロフェッショナルが参加するが、オリンピック憲章は最後の砦を守った。金銭的対価を条件とする競技者のオリンピック競技大会への参加にはNOを貫いた。その心は「オリンピックに参加するのはお金のためではない」ということだ。

賞金もないのにプロの選手が参加する大会としてオリンピックの意義があった。その価値があるからプロフェッショナルも無報酬で参加してきた。

コーは「五輪のムーブメントが成長するにつれ、その恩恵にあずかるのはスポーツであり、最終的には選手だ。だからこの賞金は、IOCが掲げる理念や哲学にしっかりと沿ったものだと思う」と言い張っている。

しかし事実は違う。

「何人もオリンピックに参加することによって金銭的対価を得ない」それが「アマチュア」の概念を捨象したオリンピズムの最後の砦であった。

コーは気が狂ったのだろうか?

総額240万ドルの賞金について発表前に事前協議もなしに国際オリンピック委員会(IOC)に通知したと言う。

商業主義と批判されるオリンピックが「そうでない」と言えるのは参加することによって金銭的対価を得ることができない大命題が存在したからだ。

バッハIOC会長に喧嘩を売っているとしか私には思えない。

果たしてバッハがどう出るか?しばし私は静観するがバッハの出方によってはオリンピックがまた危機を迎えるかもしれない。

(敬称略)

2024年4月11日

明日香 羊
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編集好奇
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「ピンポンさん」と言う本がありました。初めて読んだのですが、私が敬愛してやまないMr.卓球、荻村伊智朗さんについて角度を変えた伝記でした。私にとって彼と共にしたオリンピックの仕事は短かったが濃厚な時間でした。この本で私は知らなかった彼の中に自分との同質性を知り驚きました。荻村さんが本気で求めた「スポーツで世界平和」その志をこの歳で改めて引き継がなければと思ったのです。荻村亡き後は、コーがリーダーと思っていたのですが、どうも何か違うかも知れない。
https://www.youtube.com/watch?v=5EXzc60wP3c

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春日良一
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