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オリンピックウォッシング〜スポーツ外交の磁場〜

 人新世の「資本論」を書いた斎藤幸平ほどの知性でもオリンピックの秘儀を理解することは難しいらしい。側聞するにあるテレビ番組で「パリ五輪を見ないことで、五輪をボイコットしている。商業主義への嫌悪とスポーツウォッシング加担拒否が理由」とのことだ。
 商業主義への非難についてはオリンピックマーケティングがなぜ作られたか?について、それが「スポーツで世界平和構築」のための政治からの自律のためであることを理解すべきであり、スポーツウォッシングの批判はまず国内オリンピック委員会が国家から自律した別の権威であることを学ぶべきだ。(本紙前号参照)
 スポーツウォッシングがスポーツを利用して自らのイメージを高め、不都合な事実から衆目を回避することだとすれば、パリ五輪の場合、イスラエルの参加容認という事実をオリンピックの感動で忘れさせるということになる。
 しかし、オリンピックはガザ紛争もウクライナでの戦争も容認しているわけではなく、イスラエル政府から独立しているイスラエルオリンピック委員会が派遣した代表選手団を認め、ロシア政府と一体であるロシアオリンピック委員会は認めていないという事実の上で、もしイスラエルの選手とパレスチナの選手がオリンピックという場でフェアな闘いをして、その上で友情を示すことがあれば、それはイスラエルという国家へのデモンストレーションとなろう。
 実際にそういう場面にはまだ遭遇していないが、北朝鮮と韓国の選手の間ではこの感動的な場面が出現した。オリンピックの表彰台で一緒にセルフィーショットをするということが起きた。五輪スポンサー「サムソン」が選手団に配布した携帯電話で撮影された写真は瞬く間に広まった。そこには銅メダルを獲得した韓国のイム・ジョンフンとシン・ユビン、銀メダルを獲得した北朝鮮のイ・ジョンシクとキム・クムヨンが写っていた。この瞬間に参加した金メダリスト王楚琴と孫英芳は中国なのが象徴的だった。
このところ北朝鮮では金正恩が北と南の統一を放棄し、韓国を第一の敵対国という言葉を出すなど、対抗心を増長していた。そのような情勢にある時、スポーツが、対戦相手が出会い、競争し、そして個人としてつながることができる中立的な場を提供することができることを示した。そこにスポーツの磁場がある。
 それは政治的に分断が進んでいく世界にあり、五輪休戦期間に武器による解決をエスカレートさせるような国家に対して、向けられたコミュニケーションのチャンネルでもあるのだ。対話を促進し、連帯の精神を育むためオリンピックによる洗濯と言えるのではないか?
人間の能力を称え、スポーツの卓越性を追求すれば、政治的でイデオロギーに縛られた汚れを落とし、本来のポジティブで普遍的な価値を軸にした人と人を結ぶスポーツの可能性を輝かせる。
 あえてそれをオリンピックウォッシングと私は呼ぼう。
 
(敬称略)
 
2024年8月4日
 
明日香 羊
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編集好奇
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昨日はほぼ一日、柔道混合団体戦をテレビで観戦した。長〜い1日だった。解説の五輪二連覇した柔道家、大野将平氏が「きちんと組んで投げる。それが柔道。勝つか負けるかはその後の話」と言っている先から、NHK実況は「これに勝てば金メダル」「これに勝てばリベンジ」と真逆の精神。疲れる。

三四郎の柔道はいいなと見ていましたが、彼は立に大学団体戦で勝っているのでした。90kg+も行けたかもしれませんねw
https://youtube.com/clip/UgkxZnzPqESJUbugraSunZX0SbjCSGFFe26r?si=WHhQjdwxeea837AE

開会式について五輪アナリスト春日良一が分析しました。Forbes Japanをご覧ください。
https://forbesjapan.com/articles/detail/72709

「7.26パリ五輪開幕!徹底、実践五輪批判」が日刊ゲンダイで毎週木曜日に連載されています。オリンピックと平和について激論しております。ご高覧いただければ幸いです。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4728/495
 
YouTube Channel「春日良一の哲学するスポーツ」は下記から
https://www.youtube.com/@user-jx6qo6zm9f
 
『NOTE』でスポーツ思考
https://note.com/olympism
 
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次号はvol.508です。
 
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