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ロシアは五輪から永久追放されるべきか?〜呉越同舟の論理〜

前号ウクライナでの2030年冬季五輪開催を提案したのは、それに向かって世界のスポーツ界が努力すれば、ロシアのウクライナ侵攻を終焉に導くゴールが見えるとの思いからである。その実現には国際オリンピック委員会(IOC)のリーダーシップが不可欠である。

プーチンはオリンピック休戦を三度も破っているのであるから、ロシアが永久に五輪から追放されても当然としか言いようがない。

2016年リオ五輪、2018年平昌冬季五輪、そして2021年(2020)東京五輪、そして2022年北京冬季五輪、いずれもロシアの選手は国旗なし、金メダリストに国歌なしの状況での参加であった。このままではパリ五輪で三連続夏季五輪ロシアなしの状況になる。IOCは「中立の選手」しか認めないからだ。

問題はオリンピック休戦決議である。今年の9月の国連総会で果たしてロシアはこの決議に賛同するのか?休戦決議は五輪前年に挙行されることになっている。ロシアはこれまでも休戦決議にも賛同してきたのだから、平然と賛成票を投じるかも知れない。それは本当に四年に一度は武器を置く古代オリンピアの故事を尊重する結果になるのか?2014年クリミアではソチ五輪終了間際に、2022年は北京五輪終了2日後にプーチンはウクライナに侵攻した。国連決議は破ってもオリンピックの期間は尊重したのか?だとしたら彼はパラリンピックを平和の祭典と思っていないのか?

いずれにしろパリ五輪開催時にオリンピック休戦が守られなければ、流石にロシアからの「中立の選手」も参加を憚られるのではないだろうか?選手を守る立場であるIOCも決心するだろう。北京冬季パラリンピックの状況と同じになる。北京では急遽、ロシアの参加が拒否された。

この隘路を潜り抜けるには、オリンピック運動を支える三巨頭会議、すなわちIOC、国際競技連盟(IF)、国内オリンピック委員会(NOC)が、IOCのリーダシップの下、スポーツによる平和構築運動のために動かなければならない。それぞれのIFは自身の競技には全責任を持ち、独自の判断でロシアの選手の参加を決めることができる。しかし、オリンピックについてはIOCが絶対的な権限を持つ。
 
なんとか戦争を止めるように頑張るとすれば、政治との戦いとなり、NOCの真摯な努力が求められる。特に戦争を起こした(武器を最初に取った)ロシア国の領域にあるロシアオリンピック委員会にしっかりしてもらいたいところだ。が、IOCが「中立の選手」を求めれば、逆にロシア政府の肩を持って、IOCを批判する始末。オリンピズムに基づいて戦争をやめるようにプーチンを説得すべきだろう。

「我々はロシア国旗の下で五輪に参加し、表彰台ではロシア国歌を聞きたいのです。そのためにはどうか戦争を止めるようにしてください。閣下はスポーツ愛好家であり柔道家です。精力善用、自他共栄をご存じです。どうか我々の選手のためにそのお力をお貸し下さい」と言って、バッハとの会談に漕ぎ着ける。そして、戦争終結と五輪復帰を謳う。

NOCはオリンピズムを実践するその限りでIOCからの承認を得ているのだから。オリンピズムに反する戦争を治める努力ができないで何がオリンピックムーブメントだろう。

同じくウクライナのオリンピック委員会会長Vadym Guttsaiも「ロシアとベラルーシの選手の国際スポーツ大会への参加を認めるなど言語道断!」とIOCを非難している。彼は同国のスポーツ大臣でもある。スポーツと政治がベッタリの世界であれば仕方がないだろうが、であれば余計、スポーツの論理で政府を宥め、和平への狭き道を見つける努力をしてもらえないか?ロシア侵攻当初からIOCは3000名のウクライナの選手を援助する行動に出た。そして昨年7月にはバッハ会長がゼレンスキー大統領をウクライナに訪問し、最初の支援金250万ドルを750万ドルに増額することを約している。

この間、ウクライナ出身でもある1988年ソウル五輪棒高跳びゴールドメダリスト、鳥人セルゲイ・ブブカがIOC委員として、支援プロジェクトの先頭に立って働いている。

しかし一方で、最新情報によれば273名ものアスリートが戦死し、350の競技施設が破壊されたウクライナのスポーツ大臣がロシアを許せるはずがない。その思いも分かる。彼は1992年バルセロナ五輪のゴールドメダリスト、フェンサーである。1976年モントリオール五輪の同じくゴールドメダリスト、フェンサーのバッハとの勝負は始まったばかりだ。

二人のフェンサーが武器を捨ててオリンピアに会する日が来ることを祈るばかりだ。

オリンピック運動はスポーツで平和を作る運動である。その舟には様々な思いを描いて206のNOC、40余のIF、99名のIOC、多くの選手、多くのファン、多くの企業そして各国政府など様々な運動賛同者が乗っているのだ。しかし、彼らの視点は多種多様である。あるものは純粋にスポーツによる世界平和構築を求め、あるものは名誉のゴールドメダルを求め、あるものは得られる利益を求める。それも善しとしよう。その舟が向かう先がオリンピックというゴールであれば。戦争という危機を反目しつつも共に乗り越えようとする。呉越同舟。その道がオリンピズムに従うことなのだ。その心をオリンピック精神というのである。

それ故に私はIOCのリーダーシップを求めるのである。

(敬称略)

2023年4月18日

明日香 羊

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編集好奇
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札幌冬季五輪についてNewYorkTimesのインタビューを受け、それが発表されました。
https://www.nytimes.com/2023/03/30/sports/olympics/sapporo-winter-games.html
気がつくと小生の氏名がRyuichi Kasugaになっていた(汗)
坂本龍一さんの影響でしょうか?

YouTubeChannel「春日良一の哲学するスポーツ」次は4月20日に「オリンピズムとナショナリズム」を公開します。ご登録の上、ご視聴ください。
https://www.youtube.com/@user-jx6qo6zm9f

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春日良一
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