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改めてスポーツ思考とは何か?〜オリンピックデー前夜のつぶやき〜

6月23日はオリンピックデーである。オリンピックデーとは1894年6月23日にパリはソルボンヌ大学での会議で古代オリンピア祭を復興するべく国際オリンピック委員会(IOC)が誕生した日である。スポーツによる世界平和構築の思想が具現化する産声が挙げられた日である。IOCの誕生日を如何に祝うべきか?
 
オリンピックを4回も開催した国である日本でこの日の意味を知っている人がどのくらいいるのか?5回目となるはずだった札幌冬季五輪を諦めた日本オリンピック委員会(JOC)の言い訳が「今の日本の状況ではオリンピック開催への理解が得られない。地道な努力しかない」だった。6月23日の意味を日本国民の心に届ける努力をすることが最も緊急かつ不可避的に重要だと思うが、その活動を見る限り曖昧である。
 
まず五輪招致を志すならオリンピックデーの記念日化が最初の仕事だとかつて石原都政にも伝えたが、馬耳東風。スポーツを理解しているはずの森喜朗も「体育の日」の相対化に反対することはなかった。1964年東京オリンピック開会式が行われた10月10日を『体育の日』に定め国民の祝日としたのは、敗戦国日本が復興を果たし世界に人々をつなぐ平和の祭典を挙行できた記念だった。いわば日本にスポートが生まれた日だった。しかし、その誕生日は、2000年から移動祝日にされた。誕生日とするならば毎年期日が変わるのはおかしい。
 
JOCは10月にオリンピックコンサートを開催してお茶を濁す。パリのオリンピックとパラリンピックが成功裡に終わって、活躍した選手を登場させて祝うイベントを行う前に、6月23日が何かとその当日に日本国民の心のど真ん中に直球を投げる勇気がない。それではいつまで経っても日本に五輪が来ることはないだろう。
 
IOCのバッハ会長が、昨日世界に呼びかけた。「さあ動こう!(Let’s Move!)」キャンペーンはオリンピックデーに自分自身の身体活動をソーシャルメディアで発信しようというものだ。考えているだけでは一歩も進まない。まさにスポーツ思考的発想である。オリンピックデーを考えよう!ではなくてまずは動いて見せようというわけである。
 
我が「スポーツ思考」は1998年にスタート。フランスでサッカーW杯が開催された年で、私も現地に飛んだ。今年は26年目で、折下、パリ五輪の年である。飛ぶべきか飛ばざるべきか、それが問題だ。という時点ですでにスポーツ思考ではない。スポーツ思考とは、意識的に考えず、身体的に思考するという意味である。「スポーツ思考」とはスポーツを考えるメルマガと思っている方が大部分であると思うが、真意はそうではない。哲学的思考方法(一般的な思考の敷衍)とは違う方法で真理に迫ろうという試みである。
 
例えば、ウクライナの戦争を和平に導くにはどうすべきか?と考える時に、我々はまず腕組みをし、立ち止まってこれまでの経験と知識、そして現在有している情報を駆使して、結論を引き出す。前提となる社会構造にその思考は制約される。スポーツ思考はそうではない。思考を始めた瞬間にボールを蹴るのである。蹴ったボールの展開に合わせて、思考を働かせるのである。これは日常的な思考法と真逆になるので、スポーツ思考を継続するのは至難の業である。そこでスポーツと同様に時間ルールを設けたりして訓練していく。
 
実際、振り返れば小「スポーツ思考」も通常の哲学的思弁の展開だけで終わっていたりすることがある。ただ最も大事にしていることは固定観念はできるだけ捨てるところからボールを蹴り出すということだ。
 
私は自身の「スポーツ思考」を26年かかってもうまく説明できないできたが、この度、ダニエル・カーネマンが「ファスト&スロー」で提示していることが見事にわかりやすいことを為末大の論文で出会ったので、引用する。人間が使う二つの思考法。一つは反射的で深く考えずに早く動く。もう一つは内省も含み、自分自身が間違えていないか反省できる。それはミスを減少するが雑念も引き起こす。
スポーツをする時にはじっくりと思考する暇がないので、前者を使わざるを得ない。
 
私自身の体験で展開する。サッカーのシーン。私は左から敵ゴールに向かっている。右サイドの味方から鋭いセンタリングが私の目前に流れてくる。私にはそのボールが私のキックを待っているほどにスローモーションで動く。何の疑いもなく私はそのボールを蹴る。ボールはあっという間に敵のゴールをつんざく。これは実際にあった話で、その時のスコアブックには「場内が静まりかえるほどの絶賛に値するシュート」と記されていた。
 
人間の動作は無意識によってコントロールされている。身体は自律的に制御されている。意識の範囲を狭めていけば、スポーツをする時に体験する瞬時に全ての動作が合理的に整合する瞬間が理解できるだろう。意識を点にできればその思考は最善の所作を生み出すことができる。
 
スポーツ的に意識を一点に集中させることで、世の中が最も合理的に動く。この仮定法を論証するとしたら・・・私がオリンピックにおける休戦の実現を唄う意味がわかっていただけないだろうか?
 
Let’s Move!を投稿し、自らの身体活動を展開することで、オリンピック休戦への賛同が体で示される。

それがウクライナでの戦争休止への一歩になるだろう。
 
(敬称略)
 
2024年6月22日
 
明日香 羊
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編集好奇
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パリ五輪のサーフィン会場はタヒチ。タヒチで見るパリ五輪もいいなと思っている今日この頃です。
戦時を俯瞰できるロケーションでもあるので。
 
「7.26パリ五輪開幕!徹底、実践五輪批判」が日刊ゲンダイで毎週木曜日に連載されています。オリンピックと平和について激論しております。ご高覧いただければ幸いです。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4728/495
 
YouTube Channel「春日良一の哲学するスポーツ」は下記から
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『NOTE』でスポーツ思考
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次号はvol.505です。
 
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