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「暁星国の王」 プロローグ:星渡りの王


冷たい風が頬を打つ。

空を見上げると、無数の星が夜空に散りばめられていた。

しかし、その夜空には異様な光景が広がっていた。星々の一つが異様に輝き、まるで意思を持って他の星を押しのけるように瞬いている。


「何だ、あれ……?」

明日香(あすか)は立ち止まり、夜空に目を凝らした。いつもの帰り道。学校の部活帰りで遅くなったが、こんな夜空を見たのは初めてだった。


その時、胸が強く脈打った。

鼓動が早まる。まるで星の光が自分に何かを語りかけているような――そんな不思議な感覚が全身を包む。



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「天城 明日香。」

突然、声が聞こえた。澄んだ声だったが、それがどこから聞こえたのか分からない。振り返るが、周囲には誰もいない。


「誰……?」

明日香は思わず声を上げた。しかし返事はなく、代わりに足元から淡い光が広がり始めた。光は次第に強くなり、地面に紋様を描き出す。星座のような形をしたその模様は、どこか神秘的で、触れてはいけないような威圧感を放っていた。


「え……何、これ……?」

恐怖と好奇心が入り混じる中、光がさらに強まり、彼女の視界が一瞬で白に染まる。



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次に目を開けた時、周囲の景色は一変していた。

青白い霧が漂う大地。遠くにそびえる黒い山々。その上には見たこともない色彩で輝く大きな月が浮かんでいた。


「ここは……どこ?」

明日香は呆然と立ち尽くした。自分がいる場所が現実世界でないことは直感的に理解できた。周囲には見たこともない植物や建物が広がり、空気そのものがどこか異質だ。



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「よく来たな、王よ。」

再び声が聞こえる。今度ははっきりとした女性の声だった。明日香が振り返ると、霧の中から一人の女性が姿を現した。

白い衣を纏い、長い銀髪が風に揺れる。その瞳は深い碧色で、まるで全てを見透かしているかのようだった。


「王……? 何を言ってるの?」

混乱する明日香に、女性は静かに一歩近づく。


「私はユスラ。この国、暁星国(ぎょうせいこく)を守る星霊だ。あなたがこの国の新たな王として選ばれた。」


「……は?」

言葉の意味を理解するのに数秒かかった。王? 自分が? 一体何の冗談だというのだ。普通の高校生である自分が、こんな異世界で王に選ばれる理由などどこにもない。


「いや、ちょっと待って。何かの間違いでしょ? 私はただの高校生で……」

言い終える前に、ユスラは冷たい声で言葉を遮った。


「天意に従え。選ばれたのはお前だ。逃れることはできない。」



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その時、遠くから悲鳴が聞こえた。

「助けてくれ! 誰か……!」


明日香は反射的に声のする方向を見た。霧の中、無数の人影が走り回っている。よく見ると、それは人ではなく何か異形の獣――狼にも似た黒い生物が民衆を襲っていた。


「……あれは何?」

「闇の獣。暁星国が無王状態で荒廃した結果、天意が歪み生じたものだ。」

「天意……?」

明日香の頭の中は混乱していた。しかし、民の悲鳴が再び聞こえた時、彼女は自然と走り出していた。


「何をする気だ!」

ユスラが静止する声も聞かず、明日香は倒れた人々に駆け寄る。



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獣の一体が彼女に向かって牙を剥いた。明日香は恐怖で動けなくなり、ただ目を見開いた。

その瞬間、ユスラが割り込むようにして手を伸ばし、光の刃を放った。獣は光に焼かれ、一瞬で消え去る。


「……なぜ、無力な状態で前に出る?」

ユスラが冷たく問いかける。


「……助けたかっただけ。」

明日香の声は震えていた。自分では何もできないことが分かっていた。それでも、放っておけなかったのだ。


「その心が天意に触れるのかもしれない。」

ユスラは明日香を一瞥し、静かに言った。「だが、その覚悟が本物かどうか試させてもらう。王となるのならば、無力ではいられない。」



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その後、ユスラに連れられ、明日香は荒れ果てた宮殿に案内される。

そこにはかつて繁栄を誇った暁星国の残骸が広がっていた。民衆は飢え、国は内乱で崩壊寸前だという。


「これが暁星国。前王の死によって全てが歪み、今や滅びを待つだけの存在だ。」

ユスラが淡々と告げる。「そして、お前がこれを救う王だ。」


明日香は震えながら立ち尽くした。そんなことが自分にできるのか? しかし、民衆の苦しむ顔が脳裏から離れない。

――逃げるべきだ。それでも、彼女の足は一歩も動かなかった。



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「分かった……やってみる。」

かすかな声で明日香は答えた。その瞬間、宮殿の天井に星座が浮かび上がり、一筋の光が彼女の頭上を照らす。


それが、彼女が王になる覚悟を決めた瞬間だった。

しかし、それが同時に過酷な運命の始まりでもあることを、まだ彼女は知らない。



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プロローグのポイント


1. 主人公の召喚と世界観の提示


異世界への召喚と暁星国の荒廃した状況を通じて、物語の舞台を分かりやすく描写。




2. 主人公の葛藤と覚悟


王としての責務を突きつけられた明日香が、恐怖と混乱の中で最初の覚悟を決める流れをドラマチックに演出。




3. 緊迫感のある導入


異形の獣や民衆の悲鳴などで緊張感を高め、読者の関心を引き付ける。






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このプロローグを基に、第一章で明日香が具体的に王としての最初の試練に挑む展開を描けます。追加の要望や修正案があれば教えてください!

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