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debupinoko
祖母の教え
結婚することになり、家から離れる日が近づいてきた頃のこと。祖母が私の部屋に来た。私のために貯めてあったものを、いくらか渡してくれた。そして言った。「このことは、旦那さんに言ってはいけないよ」
私が不思議そうな顔をすると、だいたい次のようなことを言った。「女は、自分だけのものも持っていなくてはいけない。何もないと頼るばかりになる。心の拠り所に」
これから結婚するのに、私がすぐ一人になるように思ってるのかな、とその時感じた。
祖母の結婚は1度では終わらなかった。お姑さんにいびられ飛び出したり、夫になった人を病気で失ったり。祖父と出会って結婚する時、うまくいかないのではと不安になった話も聞いた。大事な孫が苦労しないようにと、ずっと考えていてくれたようだった。ありがたかった。
祖母はもういないが、その優しさ、力強さはいつも憧れだった。あの時教えてくれたことは、今になって理解できるようになってきた。祖母が生きた時代は、女性にとっては厳しい時代。女が自立するには、と一生懸命考えて生きてきたのだと思う。