鏡と写真
風呂場で、ひじを見るとあざが出来ていた。どこでぶつけたのか覚えがないが、結構な衝撃だったのだろうか。こういう事が、最近よくある。毎日バタバタ過ごしていると、どこかにぶつけた事も忘れてしまう。お風呂だと、日中見ない部分も見えるから、足にアザがあるのを見つけるのは、しょっちゅうだ。
若い頃から、自分の姿を見るのが嫌だ。写真も苦手。遠足や修学旅行の後で集合写真の販売がある。自分がどんな風に写っているか気になる。写りの悪さに落胆し、隣の子と比べて、また落ち込む。自信なさげな暗い表情で私は立っている。
写真を撮る時、満面の笑みを浮かべられる子が信じられなかった。だから、プリクラが流行った時も自分からやりたいとは思わなかった。トイレの洗面台も苦手。手洗いのところに鏡がある。嫌でも自分の姿がうつるから、鏡をわざと見ない。コンタクトレンズを長時間つけているのが苦になりメガネにしたのだが、メガネをかけた姿はもっと嫌なので、自分で鏡を見るときはメガネを外す。
そんなふうに自分をしっかり見ないので、いつのまにか出来たケガを見ると、自分の体でないように思うこともある。普段見ない場所を見ると、年をとって、太ってきたのが分かる。家族に太い腕と言われて腹がたつこともあるが、自分でそれを実感すると、どうしようもなく悲しい気持ちになる。
メガネをかけた自分も、体型が変わっていく自分も、鏡は正しくうつす。
私は「かわいいおばあちゃん」になりたいのだ。写真に写るのはいくつになっても苦手だし鏡も嫌いだけれど、いつも機嫌の悪い顔をしていたくない。これが自分だと認めたくない時もあるけれど、こうなりたいという目標は常に持って生きていきたい。