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肝生検からの退院(3日目/2泊3日)

窓から日の光が差し込んできた。決して眺めはよくないけど、高台にあるこの病院の窓からはちょうど日の出が見える。この日もとてもいい天気で、すがすがしい朝の空気を感じられるのは元気をもらえる気がした。

そしてその太陽の陽ざしを浴びながら現れる看護婦さん。まだ眠気眼な私に言った一言。

「採血しますね」。

朝から抜かれる一本。キッツイナー。でもこれが最後の検査なら頑張るしかない。抜かれていく血のスピードがいつもより少し遅い気がした。朝だからかもしれない。

左手には点滴の針だけが刺されたままだった。何かあった時にすぐ点滴に対応できるようにするためだろうか。体調はすこぶるいいんだが、この針の部分だけが異様にかゆかった。針が刺さったままという段階でまだ患者なのかという意識を持つが、短いようで長くて、長いようであっという間だった入院生活もきっと今日で最後なんだと私は信じていた。

最終日にして初めての朝ご飯は、がんもどき、小松菜の煮びたし、お味噌汁、そしてもちろんのごはん220gと海苔の佃煮、オレンジジュースだった。パンもサラダもないこと。それがほんとにつらかった。

入院前の食事相談の際、趣味嗜好にはこたえられないという話に、牛乳はほんと無理ってごり押しした自分を褒めてあげたかった。その成果のオレンジジュース。これで牛乳とごはん220gだったら私は終わっていたと思う。ほんとに牛乳無理ですをごり押ししてよかったと、この時は自分を自分で心から褒めた。

ふりかけ同様海苔の佃煮、いわゆる「ごはんですよ」的なものも私はあまり好まない。案の定ごはん220gは食べきれなかった。この入院生活、一番の敵はこのごはん220gだったのかもしれない。

食後に先生がベッドに来た。初診の時に診てくれた面白い先生だった。

「傷口見せてください」

というと、確認したのち、消毒とガーゼを当ててくれた。そして、

「血液検査も……」

と言ったとたん、あっという不自然な仕草を挟み、

「プリント忘れちゃったけど、血液検査も大丈夫だったから退院していいですよ。ちょっとプリント取ってくるね。」

と言った。合間に入る軽い突っ込みどころ。やっぱりこの先生は面白い。そして急いでとってきたプリントを私に渡した。

入院した日、肝生検2時間後、肝生検翌日朝の結果が記されていた。

【入院日(3/4) → 肝生検2時間後(3/5) → 肝生検翌日朝(3/6)】
白血球数: 5.1 → 5.6 → 5.5
赤血球数: 4.75  → 4.43 → 4.61
ヘモグロビン: 15.0H  → 13.8 → 14.4 
ヘマトクリット: 44.6H → 41.5 → 43.2
MCV: 93.9 → 93.7 → 93.8
MCH: 31.5 → 31.1 → 31.4
MCHC: 33.6 → 33.2 → 33.4
RDW: 14.3H → 13.6 → 14.1H
血小板数: 209 → 195 → 193
MPV: 9.0 → 9.4 → 9.8
PDW: 17.0 → 17.3H → 17.3H 
総蛋白: 7.7 → なし → 7.3
総ビリルビン: 1.0 → なし → 1.3H
AST: 117H → なし → 88H
ALT: 231H → なし → 173H
LD: 172 → なし → 138
ALP: 334 → なし → 273
γGT: 85H → なし → 79H

おいおい、ものすごくよくなってるんですけど。肝生検で悪い部分きれいにとっちゃったんじゃないのと思われる数字が並んでいた。特にASTが2ケタになっているなんて驚いた。まったく何が起きているんだろう。

面白い先生も不思議がっていた。そういえば、通常飲んでいる胃薬などを入院中だけ院内処方の薬に変えた。それが効いていたのかとも思ったようだったが、ただ、成分はほとんど変わらないので、やっぱりよくわからなかった。あまりに驚いた私は先生にやっぱり言った。

「仕事休んでるから、数値よくなったんですかね。」

先生は答える。

「それもあるかもしれないけど、ストレスでここまで上がったりはしないからね。その原因を今回の検査の結果診て、確かめようね。」

やっぱり医者だ。面白いだけの人ではなかった。確かな知見できちんと指導してくれた。いずれにしても、回復しているのはいい傾向ということで、今日は無事退院することが決まった。

服を着替え、荷物をまとめる。看護婦さんにお礼をして、全く必要なかったうえに一晩中刺されててかゆみだけが残った点滴針を抜いてもらい、病室をあとにした。

今回の2泊3日の入院+肝生検、お値段は52,860円。

高いのか、安いのか。安くはないよね。でもこれだけお医者さんたちに診てもらって、普段見れないお医者さんたちのドラマも楽しませていただいて、今までずっと気になっていた体調を調べてもらう代金としては仕方ないと思うことにした。

怖いはずだった肝生検をこれだけ楽しめたのは、いい先生方のおかげとしか言えない。患者の緊張を解きほぐして、信頼を与え安心して医療を受けてもらうことが医師の最初の一歩であるならば、この先生たちは素晴らしいと思った。入院しただけで数値が改善したという奇跡も含めて。

帰りのバスを待つ間、風がとても気持ちよかった。病室がすごく暑かったからか。心が軽やかになったからなのか。少し肌寒いはずなのに、とても「心地よかったことだけを鮮明に覚えている。屋外で初めてこの曲を聞いたときのようにとっても心地よかったんだ。

結果は3月30日。どんな結果が出るにしても、前向きに頑張ろう。

前段はこちらから
肝生検入院(1日目/2泊3日)
肝生検(2日目/2泊3日)




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