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エッセイ㊺ 『浮立に参加した話』

どうも、シンスケです!

突然ですが、皆さん『浮立』(フリュウ)という言葉を聞いた事がありますでしょうか?

浮立(ふりゅう)は、佐賀県を中心に同じ肥前国の長崎県と、筑後地方の一部に伝わる伝統的な民俗芸能である。多くは太鼓・鉦を用い、装束や面を身に着けた演舞者が楽器の囃子に合わせて踊る

wikipediaより引用

私も最近知った言葉で、もともと雨乞いや収穫への感謝、子供の安全、豊作祈願、諸病退散などを目的として、地元の神社に奉納されていたそうです。

浮立の起源は、1530年頃に神埼郡田手畷(佐賀県神埼市)で戦があった際に、龍造寺家の豪将、鍋島平右衛門が一族郎党とともに鬼の面を着けて戦い、勝利を納め、そのままの姿で踊ったことが始まりと言われています。

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新しい地域に引越して来て3ヶ月。そんなある日、仕事から帰りポストを覗くと1枚のチラシが折り込まれていました。

(なになに、「浮立の練習に参加してみませんか?」小学生以上の方は8月◯日◯◯神社にお集まり下さい)

そこには、呼び込みと共に太鼓と笛の挿し絵があしらわれておりました。

と言っても、上の子はまだ年長。おそらく周りの子よりも一回り大きいので、小学生と勘違いされたのでしょう。

それでも地域の方達に、顔と名前を覚えてもらう為にも、家族総出で参加してみる事にいたしました。

当日、神社に顔を出すと境内には、なんとも立派な御神木が生えており、その隣にブルーシートが敷かれて一台の大太鼓に向かい合うように、締太鼓が並べられていました。

「それでは、定刻となりましたのでご集合下さ〜い」

バツが悪そうにその場に佇んでいると、役員の方が声を掛けて下さいました。

おじさん「この前、越して来た田嶋さんやろ?上の子は小学何年生やったっけ?」

私「こんばんは。上の子はまだ年長で、来年小学生なんですよね」

おじさん「あら~、大きかけん小学生に見えた。まぁよかたい。一緒に入って練習せんね」

すると、野太い大太鼓の三拍子のカウントと共に演奏が始まりました。

ドンッ ドドンッ・・・

大太鼓のリズミカルな節に、締太鼓の甲高い音が混じり合います。

カンカンカンカン・・・
ドンッ ドドンッ・・・

更に、その上から篠笛の涼しげな音色が響き合います。

初めは、周りの独特な雰囲気と見知らぬ小学生たちに、私の背中に顔をうずめていた長男でした。

しかし、この夜の境内に響き渡る愉しげな音色に私の手を引きながらではあったが、手元に準備された太鼓のバチを手に取ったのでした。

目の前に立ち、手拍子でリズムを取ってくれている地域のおじさんに混じって、私も息子の肩を叩きながらリズムを先導します。

すると、強張っていた顔も、いつしか緊張がほぐれ楽しそうに太鼓を叩きはじめました。

しかし、ドラムを演奏する私の血を引いている為か、だんだんとテンションが上がっていく息子。

いつしか手拍子のリズムをも超える速さになってしまう息子。

XjapanのYOSIKIを彷彿とさせる連打、連打のまた連打の息子。

最後は、締太鼓を蹴り上げて大太鼓にダイブするんじゃないかなと思い、息子に耳打ちします。

「前のおじさんの手拍子をよく聞いてごらん。大太鼓の速さにも合わせんばとよ」

そしてまた、息子の肩をトントンと叩いてあげました。

これがきっかけで少しでも、楽器を手に取り演奏する事の楽しさを、息子が経験出来ればいいなと思った出来事でした。

自宅に帰って息子に「また明日も練習行く?」と聞くと「行くっ!」と前のめりに返答してきました。

ヨシヨシと思った矢先、練習に行きたい理由は『最後にジュースが貰えるから』らしいです・・・

子供の頃の初めるキッカケなんてそんなもんか、と思いながら息子と湯船に入って、汗ばんだ体を洗い流すのでした。

ーーーおわり


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