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英語の発音が良い、とか、ネイティブみたいに話せるのが、そんなにスゴいことなのか?

世の中がどんどん変わる様に、英語に対する考え方もどんどん変わっている・・ことに驚かされる。
 それが、建設的、発展的な方向に変わるのであれば、大変良いことなのだが、だめな方向に変わっている。

 英語の発音が良い、とか、ネイティブみたいに話せることが、一般ピーポーの間で大きな価値観を持っている様だ。
 高校入試、大学の共通テストを見ても、ヒアリングの比重がすごく高まっている。共通テストは50%がヒアリングである。
 また、東京都の公立高校の試験では、スピークングの試験も取り入れたそうだ。
 なるほど。こうなると、英語をネイティブみたいな発音で話せたり、英会話がある程度流暢に出来ることが、絶対的な価値観を、特に若い世代、受験世代の若者が共有することになろう。

しかし、何も塾や予備校に行って特別な努力をしなくても、このようなこと・・英語をネイティブみたいな発音で話せたり、英会話がある程度流暢に出来る・・集団が存在する。お分かりだろうか。以下の3つである。
1)外国人 特に、英語を母国語とする国の人 アメリカ人、イギリス人、の他に、インド人、フィリピン人など。あと、ヨーロッパの言葉は英語と親戚なのでこの国の人も英語には強い。
2)帰国子女 アメリカなどに5-6年、親の仕事、留学などで住んでいて、小学校の高学年くらいで帰ってくる人たち。今では特に珍しくはないが、この様な人は英語の発音は良いし、会話も流暢だろう。
3)両親が、あるいは、どちらかの親がネイティブである場合。

 私は彼らの英語というものを、3年ほどアメリカに住んでいたことがあるので知っているつもりだ。
 両親が日本人でアメリカの学校に通っている子供たち。
 小学校の高学年になっている人。
 我々が日本語で「アメリカの学校は楽しいかい」などと尋ねるときちんと日本語で「楽しいよ」と答える。両親と日本語で話しているのも聞いている。違和感は全くない。
 ところが驚いたことに兄弟同士で話す時には英語で話しているのである。これも違和感はない。アメリカ人が話しているのと同じである。もちろん発音も完璧だ。
 高校生くらいの人もいたが、同じである。
 しかし、高校生くらいに政治の話題、経済の話題を振ると、まったく日本語では答えられない、というか、会話にならない。というか、ちょっとした論理立てがもはや日本語では出来ない様子であった。

 このようなものではないのかな、と思った。
 このようなもの、とは、彼らの英語というものはあくまでもその年齢に見合ったものである、ということ。
 小学生くらいでも、発音は完璧であるが、会話はあくまでも家庭内で話すレベル。いわゆる、domestic English(家庭の英語)。

 この程度のものでも、先に述べた、共通テスト、高校入試のヒアリング、東京都の高校入試のスピーキングのテストのレベルでは十分だろう。何もしなくても普通の日本人生徒を圧倒できる。

 「この程度のもの」と書いたが、それを聞いた読者諸君の中には「それでも大変なレベルではないか。羨ましい」とお考えになる方が大勢いらっしゃるかもしれないので論を続けよう。

 アメリカ留学中に、一人の日本人の向こうの医学部に通う大学生と知り合った。
 彼は小学5年生までアメリカで暮らして、小学5年から中学3年まで日本で。そして高校はまた、アメリカにいてアメリカの学校に通っていたという人。英語はもちろん困らない。日本語でも私との会話はちょっとした医学的なものも含めて完璧だ。
 そんな彼でも、ですよ。
 アメリカで高校を卒業して大学に行こうとしたら、向こうの大学から「英語力が不十分なので1年くらい英語学校に通って英語を鍛え直せ」と言われたそうである。
 英語の読解能力、英作文能力が向こうの大学の要求するレベルに達していなかったのである。

 向こうの大学に入学しようと日本から行っては見たが良いけれど、試験ではこのように言われる日本人は非常に多い。彼も同様なことを言われたわけだが、流石に向こうに長いし、向こうの高校に通っていたわけだから英語のレベルは相当だ。1年猛勉強と言わないまでも多少勉強して、大学に入学していた。

 このような話を参考にすると・・・・
 皆様は英語を勉強して将来に役立てようと思っている。
 このような時代ですから、仕事で世界を股にかけ仕事をしたいと思っているのであろう。
 でもその時に必要な英語は、今の高校入試、共通テストで要求される英語力とはまったく異なったものである、ということ。下地にすらならない。
 発音など流暢でなくても自分の意見が相手に伝われば良い。
 また、条約、契約、説明書など書かれたものをきちんと読めて、同時にきちんとしたものを書けないといけない。
 それは、今の高校入試、共通テストで要求されるいわゆる「家庭内英語 Domestic English」ではない。
 この「老人と海」を読み込んだり、英語のことわざを暗記してみたり、日本最高峰の英語参考書「新々英文解釈研究」で培うような英語力であると私は思っている。賢明なる読者諸君にも首肯していただけると思っているが、如何であろうか。



 

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