Project A.I.D 1stLive-BIOS-現地レポ「私達の2年半の期待と希望」
クリエイターチームを冠し、VTuber3人を主軸に活動するProject A.I.D。同チームは2022年10月31日に2年半越しの1stワンマンライブ「-BIOS-」を開催した。本記事は、1stライブの背景とその様子についてお伝えする。
序文: あらすじと背景
声に驚き、希望に満ちた2019
2019年、VTuber激動の年。
クリエイターチームを冠し、VTuber3人を主軸に活動するProject A.I.Dは、動画冒頭のアバンの声にVTuberグループのゲーム部の初代声優たちが起用されているのではないか? という話題を起爆剤に一躍業界に名を知れ渡らせた。
その背景には突如、当時大人気だったゲーム部の声優が交代となり、ファンなどを中心にゲーム部運営に対する憤りが募っており、VTuberユニットのヒメヒナのライブにも声で出演していたことが起因したものだった。
そうした爆発的な拡散力は、10万人のチャンネル登録者数を集めただけでなく、2019年末の「VTuberアワード」にて新人賞にノミネートされるほどの注目だった。
待望。しかし、停滞。またも、停滞。でもファンは……。
そして2020年には、待望1stワンマンライブ開催とアルバム制作に向けたクラウド・ファンディングの開始を発表。
ファンはこの発表に胸を踊らせ、672万円の支援を集める。
しかし、その一方で黒い影が忍び寄っていた。
新型コロナウイルスだった。
ここから暫く活動が続くが、その調子は2020年6月頃には鈍化をはじめ、ぱたりと更新が無くなる時期が発生。2021年4月に活動再開の宣言が出るが、後にこれも活動が止まる。クラウドファンディングのリターン品が届くまでには1年を要した。
この止まる間、ファンたちはどうしていたか。
実は、歩みを完全に止めることはなかった。
筆者が設立したDiscordサーバー「ID_Area(旧名: Project A.I.D完全非公式サーバー)」のメンバーやTwitterコミュニティから生まれた「遊ぼう」というファン身内用サーバーでは、独自のコミュニティを形成。
「遊ぼう」は、ファン同士の日常的な交流場として使用され、そこでファンがイラストの腕をあげたり、ファンアートを描くなどのファン活動が長期にわたって行われていた。
Project A.I.Dに限らず、日常的な交流につながったことが大きい(もちろん更新頻度は途中から落ちてしまい、発表前直近まではファン同士の交流は個人個人であっても、ほぼ途絶えていた)。
また、このサーバーに参加するメンバーのファン活動なしにおそらく今のProject A.I.Dはなかったのではないかとも思う。根拠としては、休止期間「#ProjectAID」にあげられたファンアートの作者の多くはこのサーバーに所属するものであった。そういったファンアートはきっとメンバーに届いていたのだと思う。
3周年。まさかの更新。
まさかだった。3周年で更新が来るなど考えもしなかった。
ただ更新が来るだけでも驚きだが、ライブが決まったことにファンは皆興奮した。実に7か月ぶり。更新だけでも2022年では、はじめてだった。
9月にはライブの日程と場所が決定。残念ながら、ほぼ1か月先の月曜日というかなり遠方のファンには厳しい状況だった。だが、このためにすぐに有給休暇を取る申請をしたファンも少なくないと聞いている。私も仕事に変更を加えてもらうことでやっと行くことが出来た。
そして、この日にはすでにファンの一部は動き始めており、フラワースタンドを建てようという計画を進め始めていた。ファンのつながりが途絶えていないからこそ、出来ることだが、何よりも主催は1か月でフラワースタンドを準備しようと懸命に連携をとっていた。メールでの10件にわたるやり取り。綿密な運営とのやり取りが裏では行われていた。
そして、リハーサルを踏み……。
徐々にチケットが届く中、「私には届いていない!」と2日前に阿鼻叫喚が聞こえていたが、ほぼ無事にライブは前日を迎えていく。
前夜祭
地方のファンの多くは前日入りをしなくてはならないこともあり、ライブ前日には「前夜祭」としてオフ会が身内で執り行われた。
参加人数も多く、その場に参加したメンバーの多くは名前や顔を知るものばかり。
しかし、ほとんどのファン同士は2年ぶりか、名前だけを知る人ばかりでお互いに「やっと会えたね」という面持ちでその場を楽しんでいた。
終電ギリギリまで集まっていた私たちは、ただただこの2年の時を埋めるように「いやー本当に待ったね(笑)」と安堵を語り合った。
写真は前夜祭に参加した、とあるファンのスマートフォンカバーだ。こんなにボロボロになっても使い続けるのには、それだけの愛と気持ちがあるからだろう。このように、愛着を持ってボロボロになるまで、このデザインのスマートフォンカバーを使うファンがこの場に複数いて、あるあるとして語られていた。
待機列: 現地に集う猛者たち
そして、10月31日。現地の気温は17度。暗くなった空に、少し肌寒いくらいの風。パーカー1枚で来た筆者には少々寒く感じた。
2年半の時を経て、開場よりもいち早く集まったファンたちは各々が名を知る人ばかり。
開演前に集まった「おぉー! 〇〇さんだ!」という声が何度か上がっていた。
「Sのチケットをお持ちの方ご案内しまーす」の声から18時10分頃から整列開始。私達顔もよく知るサーバーメンバー4人を先頭に、整列開始から20分で50人以上が集結。
年代は20代後半から30代後半と思しき客層を中心に、親世代のお客さんも中には見られた。
入場開始すると、17時頃に発表されていたProject A.I.Dとワイヤレス・イヤホン・ブランド、Zeenyのコラボ製品のフライヤーがサプライズ配布。
バーカウンターの上には滾々と映し出されるメンバー3人。
バーカン脇には、ファンサーバーのメンバーからのフラワースタンドと、もう1つフラワースタンドが見られた(誰から宛てられたものかは書かれていなかった。)。
入場: 「黙して待つ」ファン アクシデントに臆することなく
会場の中に入る瞬間、筆者は胸の鼓動を感じるほどに緊張していた。
これまで2年半待ち浴びたライブが今ここで行われる。そう思うと、オレンジ色に輝く会場前明かりすらも眩しく思えた。
顔をステージ中央に向けると、3人のメインビジュアルが映し出されており、緊張した面持ちは少し揺らぎ、ニヤッとしてしまった。
今回のライブは新型コロナウイルス感染症を加味してか、会場床に敷かれた線の中に観客が立つスタンディングスタイルだった。
開演前の約100人ほどのファンは自分の持ち場につくと、皆「黙して待つ」といった様子。筆者の知り合いのファンたちが少し談笑することはあっても、皆思い思いに時を待っていた。その表情はどこか硬さすら感じられた。
アクシデントに臆せず接する、ファンの優しさ
開演前にあった出来事として、1つ特筆すべきことがある。
私と同じく2列目に立つ横の青年が貰ったドリンクをこぼしてしまったのだ。
私もクラブやライブハウスに行った際に自分にかけてしまったり、床を水たまりにした経験は何度かある。失敗は誰にでもある。別にレポートに書く上で、筆者は彼の失敗を咎めたいわけではない。
彼がドリンクをこぼしてしまった際に、本当に申し訳無さそうに周囲に詫ていた。
それに対して、ファンたちは話しかけることを臆することなく、「もしよかったら」とティッシュを渡したり、自分のティッシュを取り出して濡れた床を拭き始め、その様子を見た他のファンが「ビニール袋いりますか?」と拭いたティッシュのゴミを入れるための袋を差し出すなど、自主的に行動をし始めたのだ。
以前に私がクラブイベントで粗相をしてしまったときに言われた言葉がある。本当に申し訳ない状況になったときに、何度も何度も謝る私に対して
「大丈夫ですよ。一緒に楽しみましょうね。」
と言ってくれた観客がいた。私はその時すごくその言葉に救われ、イベントを楽しむことができた。
筆者はその時の経験を咄嗟に思い出し、彼には
「大丈夫ですよ、開演前で良かったじゃないですか」
と共に床を拭きながら、声をかけた。
前方にいる、Project A.I.Dを全力で応援したいと思うファンたちがその場のアクシデントに対して、優しく気にかけ、皆で解決する。
普通のことかもしれない。しかし、私にはその様子が不幸中の幸いであり、とても嬉しく思えた。
暗転の安堵 一刻の「重さ」
こうしたアクシデントは過ぎ去り、幕前のBGMが急に大きくなり、暗転。
ステージにはDr.・Hyu-ga、Ba.・まんま、Gt.・秋山健介、Key.・翔馬-Shoma-の4人のゲストバンドメンバーが登場し、ここで本当にライブをするのだということが確信に変わった。
これから公演されるライブは、発表から〇〇〇日に及ぶ長い時間の間、期待し、時に失望し、本当に開かれるか不安を抱きつつも、開催を望んだ。1秒1秒の重さは他のVTuberのライブとはまるでもって違う。
「ここで終わってしまうかもしれない」。
そんな杞憂を抱えたファンも少なくないだろう。
そして、スクリーンに電子音と共にライブタイトルの「BIOS」の文字列が表示。音楽と共にムービーが流れ始める。メンバーのMana、Io、NoAの3人が映し出され、オーディエンスからは久方ぶりの3人の姿に息がこぼれる。
「この物語を始めたのは、誰なのだろう」——そんなManaの語りから
Project A.I.Dのストーリーと関連すると見られる内容が垣間見れ、
そしていつもの動画のアバンが流れ、ロゴが表れる。
「Project A.I.D」。彼ら、彼女らのブートアップが始まった。
1 .「A.I.D」
力強いDr.のシンバルを合図に、生バンドの演奏が鳴り響き、プロジェクトの名前を冠したオリジナル曲「A.I.D」の迫力のあるバンドパフォーマンスが始まった。
ステージ上には、まるで転送されてきたかのようにNoA、Ioの2人が登場。NoAは「ようこそ、Project A.I.D 1stLive-BIOS-!」と声を出し、Ioは「全力で楽しもうぜ!」と会場を煽り、2人の力強い歌声が会場を響き渡る。
生バンドの演奏は、オリジナル版にはないKey.が加わることで、音に豊かさが広がっておりリリックの「輪廻輪廻輪廻」や間奏の語りパートに合わせたピアノメロディーが、すでに序盤で涙を誘おうとしてくる。
「A.I.D」のラスサビにかけての「同じ~」の歌いだしでは、ドラムのハイハットが高く響き、2人のボーカルに力強さが増す。また、そのパフォーマンスに応えるかのように、ファンのサイリウムや手も大きく振られていた。
演奏の最後に「待ちに待った今日1日を」「素敵な1日にしよう」と呼びかけ、曲目はそのまま2曲目「ジョイ☆ロック」へと移る。
2. 「ジョイ☆ロック」
実はこの「ジョイ☆ロック」。今回のライブのクラウドファンディングに支援し、対象プランをサポートした支援者のみに返礼品としてもらえるアルバムにしか収録されておらず、トレーラの内容にもないのだ。
そのため、現地まで足を踏み入れて、応援するファンの中にも、聞きなじみがないと思う人がいたことも事実だ。
プロジェクトが一時的に活動を再開していた時期に、新規ファンとして応援を始めた人も中にはいるため、そういった数少ない当時の新規からすれば1年から2年にわたって聞くことのできなかった、待望の新曲として聞こえたことだろう。
パフォーマンスでは、Ba.の低音が会場を鳴り響き、体を揺らす。メロディーに入ると、キーボードの鮮やかな音が加わり、ドラムとベースラインに彩りが生まれる。本来アルバムではIoのソロ曲だが、ライブバージョンとして今回は2人が歌うことでより「最&高」なボーカルに。
サビに入ると、曲調が一気にロック路線に。リリックのシャウトの盛り上がりに合わせて、オーディエンスも思いっきり拳やサイリウムをあげる。
ただ、認知度が低いためか、最初は拳の上がる数も少なかったのだが、曲も後半になってくると会場は息の合った応援が目立つようになっていた。
11か月ぶりの声 MCへ
Project A.I.Dが最後に活動を行っていたのは、2021年12月27日。そう考えれば、中には約11か月ぶりに声を聞くファンもいたことだろう。
曲が終わると、MCが始まり、一部のファンはその声を聞くだけで泣き出してしまっていた。
3人は登場からとても元気な様子を見せ、動き始めると大興奮から女性陣2人はジャンプをしていた。
自己紹介の後、「やっとみんなに会えたね」とMana、NoAは「ようやくこの日が迎えられて本当に嬉しいです。みんな待っててくれて本当にありがとう。」という言葉に続いて3人でファンに向けて感謝を送った。
この場で謝るわけでなく、感謝を伝える。「けものフレンズ」炎上以降、昨今では声優の盾という言葉が再び定着し、VTuber関係でも騒がれるようになったが、ファンが楽しむ場であるこのライブにおいて、間違った選択ではないだろう。
ライブの後、筆者と交流のあるファンはこの3人の「ありがとう」という言葉に「いや、おれたちの方がありがとうだよ」と開催をしてくれたことに感謝を返したいと言っていた。
ここで当日フライヤーも配られたイヤホンブランド・ZEENYでのコラボレーションワイヤレスイヤフォン発売を告知。このイヤホンは、当日17時5分にサプライズで発表されたもの。
本体のタッチ部分には、ユニットメンバーをイメージしたロゴがあしらわれており、充電ケースにはプロジェクトの名が施されている。
また、起動時に3人の音声が流れるシステムになっており、ブランドの公式サイトより予約販売を行っている(完全受注生産)。
紹介の中では「線がない!」などと紹介されていたが、すごく既視感のあるやりとりだった。なお、ここでYouTubeでの無料配信は終了。Z-ANでの視聴が必要になった。
3人はライブ前にエゴサーチをしていたと話し、NoAは「誰も来なかったらどうしようかって……」と声を震わせ心配をしていた。その様子に「まるでOFFですよAIDじゃない」と設定などを考慮していない配信シリーズみたいだとIoが突っ込んでいた。
3. 「Greedy!」
ここからはソロソングパート。椎名林檎のようなメロウなポップソング「Greedy!」をIoが歌う。
これまでのロックな雰囲気とは打って変わって、会場にはクールな雰囲気が流れる。生バンドに音源のブラスが合わさり、涙と興奮を隠せないファンたちも 落ち着いた様子で見守りながらサイリウムを振る様子が見られた。
Ioの歌声は中域がとても伸びる特性を持っており、こういったブラスジャズも連想させるような曲でも埋もれることなく、かつ雰囲気を出しながら歌うことが出来ていた。また、歌う最中に盛り上がる箇所で自分をステージで誇示するように、足を大きく開きながら動いており、本人が動くことで曲の盛り上げ方を変えていたのも印象的だった。
4. 「uranus」
Ioに続いて、今度はNoAのソロパート。披露するはストーリーにも関連する神の名を冠した「uranus」。
序盤は前曲よりも、さらに落ち着いた雰囲気から始まるのだが、「uranus」はサビに入ることで一気に牙をむく。Aメロ終わりのブレイクの後はハイハットのアタックと共に、日本語の歌詞から英語を基調とした詞に豹変。
「I can't handle this confusion」(参考訳: この混乱を処理することはできません)とまるで混乱したようだと思わせる歌詞とメロディーから力強い歌声とパフォーマンスを魅せる。このギャップがプロジェクトが持つ曲の中でも人気になっている秘訣だろう。
配信ではセンターカメラが曲のビブラートの盛り上がりと共に、小刻みに震えていたのだが、これが意図するものでも、しないものでもカッコイイと思わせる映像だった。コメントでも曲の人気から「ウラヌスだ!」といったコメントが複数みられた。
5.「革命のバラッド」
ここでソロはIoにバトンタッチ。今回歌われた「革命のバラッド」は、オリジナル楽曲トレーラーやポップアップストアで先行公開されており、フルバージョンはアルバムでお目見えした形となっていたため、フルで聞くのは今回で初めてだというファンも少なくなかっただろう。楽曲配信や投稿が待ち遠しい。
ライブでは、とにかくベースがエロい。それに負けじと歌うIoの様子も楽しく、アレンジが多数加わっていることでアルバムから聞いているファンも新たにフルバージョンを聞くファンにとっても楽しい内容になっているのが特徴だ。
サビでのドラムのアタック感、間奏のギター捌き、ラスサビのIoの裏返りした声の感じも生感があって楽しめた。
「ありがとう」いじりからのMC&メンバー紹介
「革命のバラッド」が終わった際にIoは決めポーズし、暗転。「ありがとう」といい、3人が再び登場したのだが、残り2人も登場し、「かっこつけおって」と言わんばかりにいじる。
MC中のメンバー紹介では、IoがBa.・まんまの紹介を上手/下手逆に紹介してしまい、焦る様子も見られた。また、プロジェクトの全曲の作詞作曲を担当するNoAを中心にメンバーは生バンド演奏であることに大興奮の様子だった。NoAは「自分の曲を生でやれるのは夢だった」と語っていた。
これまでの演目やプロジェクト内で投稿されてきた歌ってみたを参照しても、ロック調の曲が多いことから、Project A.I.Dと生バンドは相性のよいものになっている。
そして、ここで演目はラスト2曲に。ここで改めて、Manaがファンに感謝を示した。観客席や配信画面からは涙の雫は確認できなかったが、メンバーは少し涙声を出していた。
活動期間が空いたことで、不仲説なども杞憂された3人。Manaは「(ファンの)みんな心配していたと思いますが、(私たちは)みんな仲良しです」と仲良さげに話す様子が見れた。
Manaは感謝を示す中で「だからもう、まだまだやりたいことも沢山あるし、新曲、ライブを含めて今後はもっと活動を増やせるように今準備を進めているので、またみんなの力を借りることもあるかもしれませんが、その時は暖かく応援していただけると嬉しいです。」と話し、3人はファンに頭を下げた。Ioは「よかったと思ったら、僕たちのことをもっと広げてほしい」とのMCの後に、ライブでIo最後の出番となる「Feather」を歌い始めた。
6.「Feather」
「共に歌おう! 轟け! In the World!!」。
本来、新型コロナウイルスがなければ、このライブはうまく2020年に開催され、この歌詞に合わせてファンは大興奮の喝采をあげていたか。それは今となっては想像がつかないことだ。
しかし、ここまでついてきたファンがいる。「さぁ、最後までぶっ飛ばしていこうぜBaby」。ステージも終盤へと入った。
「"強くありたい" "歌いたい" 無謀に向かって羽ばたく!」や「響き合う ふたつのメロディー」などのリリックはまるで、NoAがProject A.I.Dそのものにあてたような歌詞で、2人の歌う様子は今のプロジェクトにかけている思いをぶつけているように感じた。
2人の掛け合いは本当に息がピッタリ。ハードロックを思わせる難易度が高い曲調にも関わらず、パートの移り変わりが美しく、ハモリは2人の全力がみられた。
NoAの独白
「Feather」が終わると、暗転後にNoAが1人で登場。「ちょっといいかな」と自身の思いを語り始める。
NoAは前述のとおり、プロジェクトの作詞作曲を担当するキーマンの1人であり、何よりもあまり活動が活発ではない時期でも1人動き、積極的に活動しようという思いを持ち続けていた。
「声が届くまで歌うよ」。活動が鈍った時期に、突然と表れたこの動画に当時のファンはかなりの衝撃を受けていたのは忘れもしない。
「この動画があるからこそ、今この場に立っている」というファンもきっといたことだろう。
NoAは、話し始めから泣き声で、時に鼻をすするような状況だった。「このProject A.I.Dに参加するまで、みんなに出会えるまでずっと1人でした」。そう詰まりながらも寂しげに感謝の気持ちを語りだす。
言葉がつまったときには、ファンの中からは「頑張れ」といった歓声も聞こえてくる。
そして、自分の気持ちを投影した曲だというラストナンバー「Stardust Rain」を紹介する。自分の気持ちと向き合うのが怖い、そう思う彼女がつづった歌詞、曲を入れ込むことで自分が傷つくのではないかと思いながらも、過去の自分と決別するために書いたという。
会場はNoAの勇気を振り絞った独白に、耐えた涙までこみ上げるファンもいた。
7.「Stardust Rain」
「Stardust Rain」はNoAがTwitterに投稿したあの楽曲。
等身大の歌詞に合わせ、アルバムのラストチューンをもとにライブはラストパートへ。これでProject A.I.Dがもつ全オリジナル曲が披露されたことになる。
NoAの背景には2年半前にクラウドファンディングを支援したファンたちの名前が表示される。
そのファンの中には、勿論離れてしまったものもいるが、しっかりとこの現地に訪れてその目で自分の名前を見つめたものもいる。
エンディング「まだ終わらせないよ」
最後、NoAは振り返るようにその場を去り、エンディングが流れ始める。
BGMと共に次々にクラウドファンディングのクレジットが表れ、最後には「THANK YOU」という文字列が表れた。
そして、突如Manaと金庫のような部屋が登場。
Manaは呟く。「まだ、終わらせないよ」。
その言葉が聞きたかった。オーディエンスは興奮と感無量に立たされ、明転しても皆一瞬放心状態だった。
配信は「ご視聴ありがとうございました」の文字が表示され、蓋へ。ライブ会場はオーディエンスによるアンコールの手拍子が多く聞こえたものの、むなしくもアルバム全曲を披露したこともあり、ここでライブは終了した。
「まだここにいたい」そんなことを呟く知り合いのファンたちに「はーい、皆さんここだと迷惑になるから出るよ」とライブ会場から出るように促す。
促して、外に出ても顔見知りのファンはほぼ全員が感無量の表情で、口数は少なかった。
通常、ライブが終わったら感想を話し合うもだが、あまりの感情に追いつかないものがおおく、後夜祭となったオフ会でもまるでお通夜にでも行ったような様子。
こうやって口数が少なくなるのは、それだけライブの内容に満足したからであり、やっと見たいものが見れたという喪失感などからくるもので、楽しくなかったとかそういうものでは一切ない。
通常のライブの常識では語り切れない、長い時間を過ごしてきた私たちファンだからの結果だ。
筆者はここまで1度たりと泣きはしなかった。ギリギリのところでこみ上げたものも引けて、泣くまでは至らなかったからだ。
風呂に入って、体をふき、一連の寝る準備をし終え、ベッドに腰掛ける。そして、1日の様子を思い出すと感情が込み上げてきた。こんなに泣いたのは、VIRTUAFREAKでワニとコーモリを見てファンでいることの楽しさを思い出した時だった。
Project A.I.Dも同じだった。自分がいち単純にファンとして仲間と笑い合って、一緒に同じものを見て、身内だけで面白いことをして……。
2年半前はまだライターではなかった自分。
その時の推す楽しさを少し思い出した気がする。
Discordでいつも通りボイスチャットをするときに私はVC仲間に言われたことがある。
「誰かのためじゃない。あなたのために。」そんなどこぞのエヴァンゲリオンのセリフが思い出されるが、確かに自分が好きなものに対して、好きなように接したことはこのところなかった。
キズナアイ、アイドル部、紡音れい。自分の中で存在が大きかったものがなくなっていく。その中で続くことを明示したProject A.I.D。
私はこの先、どう進むべきか。ひとまず、このレポートを書くことでProject A.I.Dについて再び知ってもらうことから始めよう。今はそう思う。
私はProject A.I.Dのおかげでnoteを書き始めた。間違いなく今ライターとして活動しているのはProject A.I.Dのおかげだと思う。
「まだ君たちは本当のProject A.I.Dに気づけていない」のは大衆においては今も変わらない。にじさんじ、ホロライブ、VTuber音楽シーンのアンセム。そこに居ていいほどの曲の良さを持っている。
まだだ、まだProject A.I.Dはこれからだ。
筆者がこれまでにProject A.I.Dで書かせていただいた記事
まだ君たちは本当のProject A.I.Dに気づけていない
Project A.I.D、1年を経て活動再開を発表 順次問い合わせについても返信予定
Project A.I.D、2年半ごしにライブ開催を決定 CFリターンの約束を果たす
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