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【祝15周年】「組曲『ニコニコ動画』」を振り返る。

6月23日、ニコニコ動画の人気動画「組曲『ニコニコ動画』」が投稿から15年を迎えた。

ニコニコ動画では、これを記念して動画にコメントし、イラスト状にする「コメントアート」や記念動画などが投稿されている。

本記事では、15年経った今だからこそ、「組曲『ニコニコ動画』」とは何かを改めて解説する。

組曲『ニコニコ動画』とは?

「組曲『ニコニコ動画』」は、2007年にニコニコ動画のユーザー、しもさんが投稿した音楽作品だ。

作品は、2007年当時にニコニコ動画内で流行していたアニメやゲーム作品に関連する楽曲やしもさんが趣味とする楽曲計33曲を繋ぎ合わせ、メドレー形式になっている。10分にもなるこの作品はニコニコ動画でも熱狂的な人気を獲得しており、11000万回以上再生され、コメントは490万回以上される驚異的な数字を記録している。

近年ではスマートフォンの流通による新規インターネットユーザーの増加などを起因に存在感が薄れてしまっているが、バーチャルYouTuber(VTuber)の歌ってみたや当時を知るユーザーの語り草もあり、15年経った今も支持を集めている。また、「組曲」の略称で親しまれてきた本作だが、経緯は不明だがVTuber界隈を中心に「ニコニコ組曲」の略称も近年広く浸透しつつある。

しもさんはこの他にも「ニコニコ動画流星群」「ニコニコ動画物語.wav」「七色のニコニコ動画」ほかを制作している。なお、しもさんのようなメドレーを参考にし、制作したメドレーないしそのシリーズは「ニコニコメドレー」と呼ばれ、現在のニコニコ動画でも制作が行われている(代表的なものでは「ニコニコ動画十年祭」「ニコニコ動画摩天楼」など)。

また、バンダイナムコグループのレーベル・ランティスでは「組曲『ニコニコ動画』」を参考に制作したものに「ランティス組曲 feat.Nico Nico Artists」「ランティス組曲 2014」がある。

「ランティス組曲 feat.Nico Nico Artists」は当時人気だった歌い手たちが多数登場して歌っている豪華盤。nayutaさんやJさんなどが登場し、ランティスの名曲を愉快に歌っている。

隠れた名作「ランティス組曲 2014」も魅力的。田所あずささん、nano.RIPEのきみコさん、ヒャダイン(前山田健一)さん、JAM Project他様々な豪華アーティストが参加してこのメドレーのために一堂にレコーディングしているのだ。

組曲はみんなの思い出だった

15年経っても「組曲『ニコニコ動画』」がなお愛されるのには理由がある。投稿当時のニコニコ動画は、2ちゃんねるからのユーザーの流入で荒れやすかった一方で、面白いコンテンツがランキングで可視化され、多数のユーザーが自分と同じ動画を見て、ついたコメントを楽しんだ……そんな経験を持つユーザーが多数いたとされている。

つまり、当時の動画の流行り廃りというものはサイトに設置されたランキングのページですぐわかり、流行った動画は多くのユーザーの記憶に残るものとなっていた。

「組曲『ニコニコ動画』」もその例外ではない。前述の通りニコニコ動画で流行した楽曲を多く取り入れてるこの作品だからこそ、いつ聞いてもあの頃のどこか懐かしさ、面白さが蘇ってくる。そんな作品になっている。

二次創作も熱かった

「組曲『ニコニコ動画』」には現在までに4000以上の派生作品が存在する。ニコニコ動画は二次創作品を制作する文化が活発であるが、中でも「組曲『ニコニコ動画』」の位置付けは特殊だ。

「組曲『ニコニコ動画』」二次創作の相関図イメージ/制作は筆者。

例えば、楽曲の元ネタに合わせて映像を付けたミュージック・ビデオ風のMAD作品をとあるユーザーが作ったとしよう。

このMADを歌い手が歌ってみたの映像に使用することがある。さらに、その歌ってみたの音声を他の歌ってみたを別の作者がミックスして合唱風動画を制作することもある。

さらにはその合唱動画と別の合唱動画を組み合わせ、演奏してみたの音源を合わせることで大合唱やフルオーケストラのように加工した動画をさらに別の作者が作ることがある。

このように1つの作品の派生作品が、また別の派生作品を生み、その派生作品がは製作品を生む、数珠つなぎ形成に創作が生まれるコミュニティが形成されているのである。

こういった数珠つなぎにコンテンツが楽しめることも「組曲『ニコニコ動画』」の魅力の1つであり、それが「ニコニコ動画らしさ」を象徴させている作品として愛されているのだと筆者は考える。

この数珠つなぎとなった相関図の間で活動していたクリエイターたちは、後に著名になった歌い手やダンサー、演奏家も少なくない。また、中にはプロとしてデビューしているものもいる。ニコニコ動画に限らないが、日本の二次創作文化は現場で働ける能力を生み出すことが出来ているのもまた事実だ。

培われてきたコメントの文化

ニコニコ動画のコメントの仕様は、恐らく読者もご存知の通り、基本的に画面上に右から左へと流れていく仕様になっている。これは2006年のニコニコ動画(仮)のサービスが始まって以降、細かい仕様はあれど、ほとんど変わっていない。そのため、「組曲『ニコニコ動画』」では、今なお「弾幕」や「コメントアート」の文化が残っている。

「弾幕」は音楽の特定の歌詞に合わせてコメントを打つようなことを指す。これは同じようなコメントが画面を右から左へと幕のように流れることなどから名前が付いたものかと思われる。例えば、アニメ「創聖のアクエリオン」の楽曲「創聖のアクエリオン」の歌詞「愛してる」に合わせて「愛してるううううううう」と赤く大きい文字でコメントを打つなどお決まりが存在する。このお決まりが少々荒れる原因になることがあるが、そういった喧騒さえもニコニコ動画らしさを感じるのが「組曲『ニコニコ動画』」のコメント・コミュニティだ。

一方の「コメントアート」は文字では伝えきることは出来ないと思うので、実際に動画のコメントを拝見していただきたいが、コメントでVTuberやゲーム「ウマ娘」など投稿当時にはなかったはずのコンテンツが動画画面上に出てきたら、それは「コメントアート」だ。すべてコメントで出来ている。「コメントアート」を得意とするユーザーがコメントを動画に打ち、イラストのようになるように投稿しているのだ。これが中々に至難の業。少しの仕様変更でそのイラストは崩れてしまう。「コメントアート」はよく「コメントアートを流さないためにコメントをするな」といった言説が登場し、動画にコメントをすることを自粛するように促すユーザーがいるが実はこれは間違い。「コメントアート」の作者たちの多くはもっと他のユーザーがコメントをして早く次の作品を作りたいと願っている。ここまで読み進んでいただいたニコニコ動画に詳しい読者にもこれを機会に知ってほしい。

15年経ってもなお……

6月23日で投稿から15年が経過してもなお「組曲ニコニコ動画」は愛され続けている。「組曲『ニコニコ動画』」の派生作品をこの日に目掛け、制作したユーザーが多数存在した。今後も「組曲『ニコニコ動画』」はニコニコ動画の象徴として多くのユーザーの記憶に残り続けることだろう。

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