現金勘定の範囲
『現金』と聞くと、硬貨や紙幣を想像する方がほとんどだと思います。 簿記ではこれらを現金勘定で処理しますが、これ以外にも現金の定義を広げています。具体的には、以下のとおりです。
-簿記上の現金-
・硬貨/紙幣
・他人振出小切手
・送金小切手
・普通為替証書/定額小為替証書
硬貨/紙幣以外のものを通貨代用証券(つうかだいようしょうけん)とよんでいます。漢字をそのまま訳すと通貨の代わりの紙切れです。つまり現金と同じような価値のある紙だといっているんですね。その証拠に、これらを受け取ったあとに取扱機関に持ち込めば、現金への換金がすぐにできます。
ひとつずつ見ていきましょう。
他人振出小切手
他人振出小切手(たにんふりだしこぎって)とは、他者が振り出した小切手のことを指しています。受け取った際には、現金勘定(資産)を増加させます。
ここで少し思い出してほしいのが、自己振出小切手です。これは、自社が振出した小切手のことで、当座預金を貸方に書くことで資産の減少を表すんでしたね。
お気づきになりましたか?
そうなんです。小切手は『誰が振り出したのか?』によって勘定科目が変わるんです。
・他社が振り出した小切手を受け取った・・・現金勘定の増加
・当社が振り出した小切手・・・・・・・・・・・・・・・当座預金勘定の減少
しっかり区別し、覚えておきましょう。
【例題3-4】①
うさぎ商店に商品10,000円を販売し、同店振出しの小切手を受け取った。
例題文では主語が省略されていますが、文脈から当社がうさぎ商店に商品を販売していることがわかります。収益の発生=売上を記入します。
代金は『同店振り出しの小切手を受け取った』とあります。この時の『同店』とは、この文言の直前に出てきた人を指しています。つまり 、当社はうさぎ商店が振出した(他人振出)小切手を受け取ったということです。資産の増加=現金を記入します。
仕訳を考えるときに、商品の販売は収益の発生=売上だから貸方だ!とすぐに分かればイイのですが、まだしばらくの間は厳しいかもしれません。そんな時は『現金・預金勘定は資産』と覚えてしまいましょう。
また現金・預金勘定が増えた!減ったというのは、取引の結果です。これを先に記入することで、その原因となる相手科目を探しやすくなります。
送金小切手
送金小切手(そうきんこぎって)は、振出人が銀行となっている小切手のことです。
当座預金口座を持っていなくても送金小切手を使えば小切手での支払いができます。ただ現在は、インターネットや ATMで簡単に振り込みができるため、ほとんど使われることはないようです。
【例題3-4】②
商品と引き換えに35,000円の送金小切手を受け取った。
代金を送金小切手で受け取っているので、資産の増加=現金を記入します。
商品を引き渡しているので、収益の発生=売上を記入します。
普通為替証書・定額小為替証書
普通為替証書(ふつうかわせしょうしょ)・定額小為替証書(ていがくこがわせしょうしょ)は、どちらもゆうちょ銀行が送金用として取り扱っています。
【例題3-4】③
きりん商店より手数料として2,000円の定額小為替証書を受け取った。
定額小為替証書を受け取っているので、資産の増加=現金を記入します。
手数料として受け取っているので、収益の発生受取手数料を記入します。
☆・☆・☆
通貨代用証券は、どれも漢字ばかりなので勘定科目っぽく見えますが、仕訳の際はすべて現金勘定です。検定試験時に選択肢として並べられると、ついうっかりそのまま選んでしまいがちです。注意しながら仕訳をしていきましょう。
今回はここまで。
ではまた。
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