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Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響②~造血幹細胞移植による影響~

この記事は白血病やリンパ腫などの血液がんで「造血幹細胞移植」を受けられる、受けられた方にぜひご覧いただきたい内容です。
Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響①も合わせてご覧ください。)

造血幹細胞移植による副作用や合併症には、性生活に影響を及ぼすものがあります。

しかし治療が終わった直後には気づかず、時間がたってようやく性生活に目を向けられるようになったときに「あれ…?」と気づくことがあるのです。

ちょうどそのころは、病院から離れてなかなか身近に相談できる人がいないかもしれません。

もしからだの変化を感じ、気持ちが前向きになれなくても、理由や対処法が分かっているのと分かっていないのとでは違います。

どんな影響が起こる可能性があり、どこに相談しにいくべきなのかを知っておくことで、予防したり、変化があった場合に行動できるよう自分自身の大きな力にしていきましょう。

まず造血幹細胞移植について簡単にお伝えしたいと思います。

造血幹細胞移植とは、通常の化学療法や免疫抑制療法だけでは治すことが難しい血液がんや免疫不全症に対して、完治させることを目的として行う治療のことです。

通常の治療法と比べて、強い大量の化学療法や放射線治療を組み合わせて移植前処置を行います。

なるべくからだの中の腫瘍細胞を減らして、患者さん自身の免疫細胞の力を弱めるためです。その後用意された造血幹細胞を静脈から投与します。

移植した造血幹細胞が血液の流れに乗って骨髄にたどり着き、そこで増殖を始め、白血球数が増えてきます。これを生着といいます。

移植後約1~数か月でドナーの血液成分に置き換わって、代わりに血液細胞をつくるようになります。

これが造血幹細胞移植の概要です。くわしい説明に関してはがん情報サービスをご覧ください。(がん情報サービス:造血幹細胞移植とは)

造血幹細胞移植はとても強い治療法です。今回は治療の副作用や合併症に伴う性生活への影響に特化してお伝えしたいと思います。

造血幹細胞移植により性生活へ影響をもたらす要因は主に3つあります。
・抗がん剤によって卵巣の機能が下がってしまう可能性があること
・全身放射線治療によって卵巣の機能が下がったり、膣粘膜への影響が起こる可能性があること
・造血幹細胞移植後の慢性GVHD(移植片対宿主病)で膣粘膜の癒着が起こる可能性があること

移植前処置のなかでも『全身放射線療法と大量シクロホスファミドの併用療法』や『大量シクロホスファミド・大量ブスルファンの併用療法』が特に卵巣の機能を下げてしまうとされています。

抗がん剤による卵巣の機能の低下に伴う性生活への影響は前回の記事で詳しくかいておりますので、そちらに説明を譲りたいと思います。


加えて考えておかなくてはならないのは、放射線治療慢性GVHDによる影響です。

●放射線治療による卵巣や膣への影響

卵巣は非常に放射線に弱い臓器で、成人女性であれば2Gyでも卵巣のなかにある原始卵胞が減少してしまうという報告があります。

ASCO(アメリカがん臨床学会)の調べによると全身放射線治療は卵巣への影響が非常に大きいハイリスクに分類される治療方法で、70%以上の女性が治療後無月経になるとされています。

治療後に月経が戻らない=卵巣機能がなくなってしまう、ということです。

前処置は卵巣に対する影響が大きい化学療法のお薬も合わせて投与するので卵巣への負担はどうしても避けられません。
(放射線治療に伴う卵巣機能の低下を防ぐために金属で遮蔽して、卵巣に放射線が当たるのを防ぐ方法がとられる場合があります。これは詳細に別記事で書きます。)

放射線治療によって卵巣機能が低下すると女性ホルモンの分泌量も低下するため、化学療法と同様の性生活への影響が起こり得ます。(上記の記事をご参照ください)

さらに放射線治療は膣への影響があります。膣の細胞に対して炎症を起こすのです。(もちろん膣の細胞に対してだけではありません。皮膚炎が起きるのと同じような副作用です)

この炎症はその後、膣細胞を固くする瘢痕化を引き起こします。そうすると膣が硬くなって伸びにくくなります。また炎症が治る過程で、膣が癒着してしまうこともあります。

●慢性GVHDによる膣への影響

GVHDとは【移植片対宿主病】のことです。同種移植後におこる特有の合併症のことで、ドナー由来のリンパ球が患者さんの正常の臓器を異物とみなして攻撃することによって生じます。

軽度のGVHDが起こった方が、白血病の再発が減り、患者さんの予後がよくなることが知られています。

GVHDは急性と慢性に分かれます。今回注目したいのは慢性GVHDです。

慢性GVHDは皮膚や口腔粘膜、眼球、肺などに起こりやすいとされています。

例えば皮膚だと、皮膚基底細胞が弱って乾燥しやすく薄い状態となることで非常に脆弱性の高い状態となることがありますし、口腔粘膜だと唾液腺の障害により、口腔内乾燥が強くなることがあります。

粘膜への影響ということで膣粘膜にも影響を及ぼすリスクがあります。膣が乾燥し硬くなったり、癒着しまうことがあるのです。

膣が硬くなると伸びにくくなり、セックスのときに痛みを引き起こす場合があります。膣の癒着があると最悪の場合挿入ができないという状況になる場合もあります。

しかし造血幹細胞移植による膣の変化は、骨盤内に重点的に放射線治療を行った場合と比較すると、まだ柔らかく、もし癒着が起こっていても治療の余地がある可能性が高いとされています。

さて、①と②を受けて、対処方法に関して次の記事でお伝えしたいと思います。

参考資料
・『小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン』2017 年版
http://www.jsco-cpg.jp/fertility/guideline/
・日本がん生殖医療学会ウェブサイト>一般の方・患者のみなさま
http://www.j-sfp.org/public_patient/fertility_treatment.html
・日本造血幹細胞移植医療学会>不妊
https://www.jshct.com/modules/patient/index.php?content_id=44

妊孕性に関する情報はこちら(日本がん生殖医療学会ウェブサイト)をご覧ください。



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