プライム市場再編、TOPIX再編は株式市場に何をもたらすか
新市場への上場基準や移行プロセスが明らかに
2020年12月25日、東京証券取引所は新市場区分への上場基準や移行プロセスを示した第二次制度改正事項の概要を発表した。合わせてTOPIXの指数見直しについても発表されている。
序盤は時価総額の足切り基準に関する未公表の重要情報が投資家にバラまかれて某証券会社が業務改善命令を喰らったりするなど前途多難な船出であったが、第一次制度改正事項で示したスケジュール通り年内に第二次制度改正事項を発表できた運びになる。
数多の変更点があるが、現在の東証一部に相当するプライム市場及びTOPIX指数に関する主要な変更点は以下の4つになるだろう。
①上場審査基準、上場維持基準に、「流通株式時価総額100億円以上」「流通株式比率35%以上」の基準が導入される
②流通株式の定義が変わる。従来は10%以上保有する株主に関してのみ控除されていた政策保有株(企業、金融機関などによる持ち合い株)が、全面的に流通株式から控除されるようになる
③新TOPIXについては、今までの旧TOPIXの構成企業が原則として継続的に組み入れられると共に、新たにプライム市場に追加された企業が入る。ただし、流通株式時価総額100億円未満は段階的に除外
④TOPIXの構成比率は浮動株時価総額に基づいて決められているが、浮動株の定義についても政策保有株を抜く形で計算しなおす(2022年4月~6月にかけて実施)
結果として、従来は東証一部とTOPIXの構成銘柄は原則一致していたが、今後はプライム市場の構成銘柄とTOPIXの構成銘柄に乖離がみられるようになる。
プライム市場に求められる一段高いガバナンスとは
今回の第二次制度改正事項では、プライム市場とスタンダード市場の両方で改正後のコーポレートガバナンス・コードの内容を反映したコーポレートガバナンス報告書を年末までに提出するよう要請されている。ただし、改正における記述において「プライム市場では他の市場区分と比較して一段高いガバナンスを求める」とされているため、おそらく今年の春に改訂されるコーポレートガバナンス・コードの一部の原則では、プライム市場に関してのみ適用が要求される項目があるのではないか、と推測する。
また、「政策保有株への批判と企業の防衛手段」のコラムに書いたとおり、政策保有株は市場の流動性を損ない価格調整機能を妨げるだけでなく、株主総会の形骸化というガバナンスの本質的な問題にも絡むトピックである。今回の市場再編は政策保有株の縮減を目指す方向性をさらに強調する形になったであろう。
ただし、安定株主という意味で日銀のETF買入分は本当に浮動株なのだろうか、という疑問符はつく。もちろん議決権行使という意味ではETFを組成する各運用会社が対応しているため、ある程度正当性は保たれるだろうが、マーケットメイクの観点で問題が生じている可能性があると、筆者は考えている。実際、みなし額面を用いて計算する日経225のウエイトが歪んでいることも相まって浮動株が極端に少ないと言われマーケットで話題になった銘柄もいくつか存在する。結局「本質的にガバナンス改善を考えるなら中銀が株買っちゃだめでしょ」という結論に至るのだが、それは東証をはじめどの企業も指摘できないため、僕らは過剰流動性相場の中で今日も生きていくしかないのだろう。