Diary - FUJI ROCK FESTIVAL'24 感想
フジロック2024に参加してきました。例年通り、聴いてきたライブの感想を残しておきます。形をつけて、記憶に留めて、後で思い出すための日記です。
なんだかんだでもう10回目くらいですね。積み重なったたなぁ。
前回はこちらから。
事前計画
まぁ計画どおりにいくことなんて無いんですが、タイムテーブル考えてる時間も楽しみのひとつなので。今年はこんな感じ。
こいつ、レッドからヘブンへの移動を諦めすぎてる……!
先に書いておくと、今年は疲れもありRoukie A Go Go一つも観れませんでした。「Nikoん」、「kurayamisaka」、「天国注射」見てみたかった。せめてそれぞれ当日のライブ映像リンクを貼っておきました。いやどれもメッチャ良いな……来年こそは体力をつけて臨むぞ(10年間言い続けてる)。
昨年は仕事の都合で金曜参加(ストロークスを)泣きながら諦めましたが、今年は無事に3日間参加できました。前夜祭から行ってる人すごすぎ。
今年もたどり着けた。
今回は、ひたすら観たアクトの感想を綴ります。フジロックの雰囲気については、きノみさんの記事をぜひご覧ください。
―― 1日目(7/26) ――
■家主 @FIELD OF HEAVEN
東京のインディバンド。TLではよく見かけており、先日ライブ盤『INTO THE DOOM』でコレは滅茶苦茶良いぞ、新譜『石のような自由』でもう歌詞もサウンドも大好きだぞと。奥田民生の粋と、初期中村一義の無敵感と、現代の何となくくたびれたリアルをあわせもち、The BeatlesはもちろんTeenage FunclubやRichard Lloyd(Television, Matthew SweetのGt.)もいる。
ライブもその魅力が存分に出ていました。もう田中ヤコブが弾きまくる。ギターロックが生活の全てをユルくマルっと全肯定する。ロックンロールの「ロール」の部分がひたすら溢れ出ているような、子供のころにサイダーで良い気分になるような。柄にもなく「俺たちの」なんて一言を添えたくなる、同世代にいてほしいバンドNo.1ですねこれは。
■FRIKO @GREEN
突然日本でブレイクしたシカゴのインディバンド。この人たちのエモ系ギターフレーズがストライクすぎて。Broken Social Sceneを思い出す「Crashing Through」、「IN_OUT」のアルペジオの絡み。影響源たるバンド全て日本人好みみたいな奇跡の融合体。
音源は確かに超良かったもののグリーンは違うと思ってました。実際出音はその通りだったんですが……このだだっ広いステージ、観客との空間を、あまりにも眩しく謳歌していて、インディロックファンとして心で泣いた。いや最高のタイミングでの大抜擢でした。「Where We've Been」はアンセム化していて、その光景に在りし日のHostess Club Weekenderを思い出したり……。
正直このバンドがこの先どうなるかは分かりません。フッと活動やめそうな気配も割とある。ただ今日のステージは記憶に焼きついた。
小休止。
今年一番うまかった、オアシスの「梅出汁茶漬け(冷)」。暑いので、「冷」なのが神です。夜は「温」も出来る。来年も出店お願いします。
この日はなんだかクッキリ前半・後半で2つに分かれていて。
FRIKOと家主は「これになりたい」すぎた。
そしてここからの3つは、「絶対こうはなれない(けど焦がれてしまう)」そんなアクトでした。
■THE SPELLBOUND @RED MARQEE
BOOM BOOM SATELLITESを通ってないんですが、22のフジ以来The Novembersに強く惹かれているので観てみました。
物凄い練度のライブ。ツインドラムによる打刻の壁、ブチ切れたシンセ、ド低音、ギターの暴虐。クラブミュージックにも強いレッドマーキーに響く、要塞たる音圧。もうね、なんで昼間にやってるんだと。深夜マーキーPlanet Grooveのテンションだろ。インディ耳たる自分は家主の着こなしの方に惹かれもしますが、文句なしに次元ひとつ違う、プロのカッコさでした。
ロックリスナーとしてはこの手の(?)「クラブ仕様の轟音シューゲ」に面白みを感じます。このバンドサウンド──空間いっぱいにドラムがあり、低音の全てをベースが出し、ズ太いシンセがいる場合──ギターはリフやソロを弾くでなく、基本的に高域に向かうしかなくてシューゲ的アプローチになるのかな、なんて。
★KING KRULE @RED MARQEE
今年一番観たかった。初来日から10年もの月日を経て待望の再来日。結果的には『Space Heavy』発表後の最強体制での凱旋でした。
まずアーチー・マーシャルの存在感!天井に唾を吐き捨てるのも、Stone Againラストでマイクと倒れこむのも、青白いスポットに1人照らされる姿も、すべてが画になる。「アンタがオレらのオルタナ・ヒーローだ」と後方腕組面でした。Sax. Ignacio Salvadoresもキレてて、全員がストリート感強くてカッコよかった。
King Kruleの和音感覚には独特の濁りがあり(ジャズ由来でしょうが間接的にSonic Youthやノーウェーブを感じる)、そこにアンチ・メジャー、InstagramなどのSNSとは違う、腐食したリアルが浮かんでいる。その濁りがバンド全体から放出される様は圧巻でした。
彼の音を自分の語彙で引っ張るなら、「フェイクジャズ」でしょうか。Swell Maps(2nd)のノーウェーブ感もある。あるいは一番厄介だった90年代中頃Sonic Youthのポップ・ロック脱構築と不感症。ともかく全てが一層違う場所から鳴っている。この感覚をなんて呼べばいいか。あぁそうだ、「ポスト」「オルタナティヴ」、正しくそう冠すべきものです。
そこに一抹の甘味、People Get Readyを拝借した「Flimsier」などのスイートソウルが挟まれるんですよ。食べてはいけない果実のように。エンディングはストリートアンセム「Easy Easy」、彼が16歳で描いた「Out Getting Ribs」。まるでロードムービーみたいなセットリスト。10年の空白は完璧に埋められた。
来年は単独公演でお願いします。
★FLOATIONG POINTS @RED MARQEE
もうすっかり大御所となったUKのDJ、宇多田ヒカルとのコラボでも存在感を見せてます。2019年『Crush』が好きで(Pharoah Sandersのはよく分かってないです……)、当時の年間ベストでは5位に選んでます。SPELLBOUNDといい今年は深夜マーキー的アクトが夜にいて面白いですね。
1時間、すごいプレイでした。
前半中盤はかなりフロア仕様で、新曲中心にフィルターワークで緩急とピークを錬成するスタイル。この時点で大分アガってましたが、個人的なハイライトは後半20分くらいの展開。これまで支配的だったキックが消失し、ウワものがサイケデリックに展開したあと、そのままダブステップに流れこんで、生ドラムサンプル音のフィルインでクローズ。未知の地平に連れていかれた。
話は変わりますが、この前『最高の体調』という本を読んでいたら「"畏敬"を体験すると幸福になれる」的な下りがあり(第7章です、読んでみてください)。King KruleもFloating Pointsもコレでした。「音楽、すごすぎる」。あまりに満足したのでこのまま帰りました。
―― 2日目(7/27) ――
★トクマルシューゴ @FIELD OF HEAVEN
日本のオルタナ・ポップ・マエストロ、8年ぶりの新譜『Song Symbiosis』を携え7年ぶりの登場。初めましての方はぜひKEXPの動画を観てください。
この人のステージは楽器もとい「音が鳴るモノ」がとにかく多い。それぞれのモノが鳴らすそれぞれの音、が合わさって何かになること──前作の最終曲「Bricolage Music」は、ユーザーが自由に投稿した1000の音から生まれた、まさにそうした試みの集大成でした。一種の最終回であり、もうこの先どうするんだと思っていたら、8年越しの新譜で「この遊びには終わりがないね」と歌われました。永遠のエピローグが始まった。
そのライブがこんなにピースフルで楽しいのは当然です。風船を膨らませる音、謎の楽器たち、様々な国の音階・リズム、チラ弾きクラフトワーク(電卓!)、ちいかわ合唱。それすべて音楽という遊び。今年イチの大名曲「Counting Dog」の最後、ボイパ~口に謎の笛をくわえる~鍵盤ハーモニカを取り出して合奏が始まった時、あまりに見事すぎて拍手しました。
この人の音楽観を自分は心から信じます。今回も最高のステージでした。余談ですが、最前の海外カップルが超楽しんでて、超ベタに「国境をこえるんだぁ」、なんて。。そらそうだ。音楽だぞ?このライブの後ならそう言い切れる。
■syrup 16g @WHITE
このバンドはある時期における自分の人生の全てであり(挨拶)、五十嵐がまだ生きる方を選んでいるから自分も生きているという存在なので(ワンツーパンチ)、マトモに観れません。
対バンでも新曲ラッシュするバンドですが、20年ぶりのフェスは””ザ・ベストヒッツ””。お、大人……!!。でもパープルムカデで始めたのには意図を感じざるをえない。
この日の五十嵐コンディションは決して良くなかったです。ただあらためてライブを見て、その歌詞は驚くほど今も切実に叫ばれていました。50歳になった五十嵐、30台になった自分な訳ですが、歌われる内容が中年以降のリアルでもちゃんと響いてくる。ただの慢性的不調。時間が解決しない現実。日々の感情をドラマチックに着飾らなかったSSWだからこその凄みです。
あからまさまな代表曲メドレーに笑い、中畑さんのMC「まあこれは20年呼ばれないよなって感じのライブになるかもだけど」に吹き出し、完全に空気が和んだ後に放たれた『明日を落としても』でふつうに泣きました。
年齢を重ねたことでむしろ重い。「どうしようもなさ」のベクトルがまるで違う。
それでもこれが「バンドで歌われる」ことに何かしらの救いになっている。バンドを続けるということは、つまり生きていくことなので。
そして名曲「Reborn」
「時間は流れて 僕らは歳をとり」。いつもより長めにとられた「汚れて傷ついて生まれ変わっていく……………………のさ」。この「……のさ」に全てが込められている。シューゲイザーが、音楽がその全てを照らす永遠の名曲。
やっぱり自分がこの世で一番好きなのは、五十嵐隆のがなり声です。3人とも末永く健康であれ。再結成後の大名曲「うつして」も聴きたかったですね。ただ、今のシロップには不思議とこんな言葉も似あうと思うんです。
また今度!
小休止。
舞台は移ってこれはハイジのトッピング全乗せカレー。チーズと温玉、夏野菜の追加はオススメです。
■折坂悠太 (band) @WHITE
前回「すごいとは思うが馴染めない」などほざいてましたが、先日のFRUEZINHOで晴れてファンになりました。
前回出演時の緊張感、彼の「出ることが正しいのか」という葛藤は記憶に強く残っています。しかしこの日の折坂悠太は「何が言いたいかというと……フジロック、大好きです!」のMC通り、解き放たれたように軽やかで瑞々しかった。それはコロナを忘れたとかではなく(進行形です)、新譜の一曲「ハチス」が代弁しています。
世界の肯定。こう歌い終えた今、"ひと"としてものすごく強い。
そしてその音楽はどこまでも自由になっている。ジャズ、フラメンコ、一瞬メタルやハードロック、ポストロックのアンビエンス、ファズギターとサックスのソロバトル……新譜の「凪」「努努」のように、「良い曲をつくろう」という発想から抜け出たバンド演奏の楽しさが広がってきている。
今年の大名曲「スペル」。これはひとの営みにおけるアンセムです。「おまじない」とは、何かを祈って願うこと。願うことがある人の表現は、響く。
★BETH GIBBONS @GREEN
偉大なるPortisheadのボーカリスト、25年越しの初来日。絶対に観たかった(昔ブログも書いてます)。『Dummy』(94)リアルタイム世代もこの場にいると思うと……呼んでくれて、来てくれてありがとう!!
新譜『Lives Outgrown』はゴシック・フィルター通したチェンバーポップ、トラッドフォークと受け止めています。バックビートのスネアを排した呪術的なリズム、異形のパーカッションで織りなす異常音響が、聴き手を見知らぬ世界に飲みこむ。そこに一筋の光を擬態したベスの歌声が、より深い場所に導いていく。最終曲で「Whispering Love」(名曲)に至る構成や音楽性は、Radiohead『A Moon Shaped Pool』に近い一作でもあるでしょう。
歌い始めた瞬間、もう動画で見たきた「Beth Gibbons」そのものであり震えました。発声から息遣いまで、ある種の呪いを感じるくらい今もそのままだった。立ち姿も59歳とは思えないほどクールで。一方MCになると年齢相応の圧倒的「近所の気さくなお婆ちゃん」で、ギャップと情緒の反復横跳びがエグい。この人が今幸せそうで本当に良かった。ダメだ、この文章も情緒が……。
この音でグリーン?と思ってましたが、フェスでこそ異端さが際立っている。昨今のロックフェス……DJアクトからバンドからまで内臓に押しこむような低音キックを打ちならす所、この中世ヨーロッパの室内楽団編成はヤバすぎる。だってひとつ前のアクトMAN WITH A MISSIONなんですよ!?「巷の音楽がくだらなすぎて」と『Third』を放ったのはジェフ・バーロウですが、「最近のビートにはイラつく」と本作をぶつけてきたベス・ギボンズ。いや、偉大なりやPortishead、ブリストル。特に「Beyond The Sun」は広大なグリーンステージを飲みこみきっていました。
この日の「Roads」で成仏した全ての魂に、Big Love……。そして「The Rip」まで披露する日もあったから内心期待していた全ての魂に、Please come again…。
■KID FRESINO @RED MARQEE
実は今回一番期待値が高かったアクトです。が、タイムテーブル的に30分弱しか観れず。
期待の理由は、『20,Stop it』が超カッコよかったのと、ラッパーでありつつバンド形態に非常に意欲的で、異種混合がものすごいから。生演奏とヒップホップでいうとThe Rootsがいますが、彼らがサンプリングでなく生演奏の敬意でもってルーツを鳴らし直したのに対して、KID FRESINOは、縦横無尽にオルタナ・ポストロックなどを織り交ぜて、未踏の地を突き進んでいる。音楽性は違いますがRadiohead『TKOL』時のFrom The Basementに近い可能性を感じています。
途中参加だったとはいえ、演奏は凄まじかったです。丸被りのSAMPHAも素晴らしい演奏を繰り広げていたようで、日英で最高のミュージックが奏でられていたと誇れるはず。
ただ……門外漢ながら「難しいな」と思ったのは、オーディエンスの反応でした。例えばヘブンステージならこのバンド演奏に「フォー!」の声が上がっていたと思うんですよ(実際SAMPHAでもそう)。でもKID FRESINOはそうした演奏の興奮があまり観客に届いてない気がして、しかもゲスト参加のトラックが一番湧いてて……気のせいかな?ともかく、このバンドは凄いことをやっています。今度はフルで観たい!
■KRAFTWERK @GREEN
あまりに偉大なレジェンド。すこし羅列してみましょう。テクノポップの始祖。ニューウェーブのイデア。日本ではYMOが芽吹いた。打ち込みリズムの革新者で、エレクトロファンク、デトロイトテクノやヒップホップ(名著『ブラックマシーン・ミュージック』に詳しい)の礎を築いた。「現実の建築物」という作品コンセプトを提示し、インダストリアルのジャンル発展に貢献した。そのビジュアルイメージで世界中のポップカルチャーに影響を与えた……まだまだ沢山ある。これらの言葉よりも強く深い影響がこの世界に溢れている。
セットリストは、そんな彼らの遺産をひとつずつ辿っていくものでした。
削ぎ押された楽曲の音数やVJには「ある一時代の化石」を感じます。タイムマシーンの体感であり、広大な川の源流を五感で知る体験です。そして最新型の音響でその音楽に対峙した時、今にも通じて響くものがあると理解る。
ハイライトは「ヨーロッパ超特急」パートです。超音圧「Metal on Metal」の金属的な音響は自分がその空間に飲み込まれる体験で、インダストリアルの極地でした。「Pocket Circulator」の超ファンキーなリズム、子供が遊ぶような打ち込み音のポップさ!電気グルーヴと同日に演奏してほしかった。クリックハウスもあるよなぁ。
エンディングがまた痺れるんですよね。舞台から一人ずつ去っていき、最後にはステージ上から人間が消える。それでも機械が「Musique Non Stop」を鳴らし続ける。クラフトワークが偉大なのは「"人間"が表現したいことのため機械を使った」のではなく「"機械"が可能な表現を突き詰めた」ことです。主体は機械にある(放射能やヨーロッパ超特急も同様で、モチーフや主体は人間でない)。ゆえにこのエンディングが完璧な幕引きであり、これこそクラフトワークなのです。
最後に。だからこそ、ですね。この完璧さに対して、日本でだけ披露された、坂本龍一を追悼する「戦場のメリークリスマス」の演奏はひじょうに人間的なものでした。ありがとう。
―― 3日目(7/28) ――
ラスト。もう少しおつきあいください。
■WEEKEND LOVERS 2024 “with You” (LOSALIOS/The Birthday) @RED MARQEE
まぁこれは、絶対観ようとしたやつですね。自分自身、チバユウスケに対して3つの記事で追悼したところだったので……。
リハから中村達也さんが楽しそうに暴れていて、ブランキーファンとして既にワァ……と感動してたたら、開演前にWEEKEND LOVERSのテーマ曲がかかり、チバの声が響きました。。
まずはLOSALIOS。感傷をぶっとばすハイテンション、フリーキーなジャムセッション。最後に披露されたのはミッシェルの「CISCO」!爆発するフロアからThe Birthdayへ。
端的に言うと、メンバーがチバの代わりにボーカルを取りました。生前最後の楽曲となった「サイダー」「I SAW THE LIGHT」はハマっていた。最後はYONCEが出てきて「ローリン」の大団円。
両者とも力演で、感傷は「サイダー」にしかなかった。「楽しもうぜ!」ってパーティでした。それがとても嬉しいような、苦しいような。BUCK-TICKファンなので倍で複雑な感情になる。正直にいって自分の折り合いはつかなかったですが、ともかく立派、誠実だと思いました。「ロックンロールとは転がり続けること」なんて使い古された言葉ですが、現実はもっと無機質に重くて、ただただバンドは、ひとは転がり続けるしかない。そういうことなんですよね。
今の自分にはまだ、失ったこと、残されたものへの気持ちが強い。
あとは他の方の記事に託します。
小休憩。
■THE JESUS AND MARY CHAIN @WHITE
UKレジェンド。10年前の初期からブログに書いており、思い入れは深い。日陰より無意味な騒音をまき散らした『Psychocandy』(アルバム)から、騒音を太陽に向けることで意味に至った『Sundown』(曲)への道程を愛しています。
とはいえ自分はだいぶ歪なファンで、第一には「彼らの楽曲が大好き」ですが、第二には「このプロ意識加減で40年やっていけている」ことが来ます(語弊)。なのでライブ期待値はそこそこ。
実際に演奏はヘロヘロであり(悪いのは主にGt.ウィリアムです)、歪んだ笑みで「あぁJAMCだなぁ」とウンウン頷いてました。流石に恋人とギュッ♡と手つなぎデュエットする姿を見せつけてくるとは思いませんでしたが……。そこから繰り出される大名曲『Daraklands』の説得力のなさよ笑!オイ!
ただこれだけは書いておきます。セトリを見ればJAMCが「偉大な(楽曲を残してきた)バンド」なのは一目瞭然です。あらためて生で聴くと、やっぱりコロンブスの卵だなと強く感じる。パンク以降のビート感覚とノイジーなギターで、フィル・スペクターやビーチボーイズを「危険物」のように仕立て上げた、その「服の着こなし」みたいな楽曲センス。そこから更にインダストリアル、マンチェと沿って4thまでこぎつけたのが素晴らしいのです。
今年のホワイトは全体的に音量控えめで、せっかくの1st曲「In A Hole」すら大人しかったのは不完全燃焼(そういえばNever Understandやってないじゃん!)。まぁでも成仏しました。サンキューフォーエバー。
小休止。
フジで一番健康的なメニューは苗場食堂の「きりざいめし」「けんちん汁」(合わせて1000円)です。みんな食物繊維も大切に。
■toe @WHITE
邦マスロック、叙情派ポストロックの雄。何だかんだここ10年で3回くらい観てますが、驚くのはその演奏が未だ研ぎ澄まされ続けていることです。奏でられるすべての音がひとつひとつ粒だって聴こえる。こんなに繊細で雄大なアンサンブルが聴けるのはtoeだけでしょう。
情熱的な演奏もいいですが、抑えた演奏でを聞かしている時が一番好きだったりします。この日の「孤独の発明」は初期Battles(EP C / B EPあたり)の感触があってカッコよかった。静かな微熱。新譜はその毛色が強かったので1曲だけしか披露されなかったのは無念でした。
★CELEBRATION OF THE METERS @FIELD OF HEAVEN
泣く子も黙るニューオリンズ・ファンクの伝説ことミーターズ、Ba.のGeorge Porter, Jr. による記念ライブ。いやマジで最高でしたね。粘っこいカッティングにバックビートが乗った瞬間、たった2音で"神"を確信しました。当日の演奏、空気はこんな感じ。やっぱヘブンは最高すね。
代表曲のひとつ「People Say」の演奏が本当に素晴らしくて。ファンク以前に最高のブルーズであることに気づいて感動しました。御大の吐き捨てる歌唱がクールすぎた。こんなオジになりたい。にしても改めて凄い歌詞ですね。ブルーズとは、ファンクとは、ファンキーとは!その神髄にふれた気がします。
あまりに完璧で粋な演奏、ヘブン観客のバイブスあいまって、「もしかしてだけど音楽ってやつでラブアンドピース実現できるのでは?」ってくらいの幸福感がありました。離れたくなかった。まぁ僕はラブもピースも捨てて次アクトに向かったわけですが……
★KIM GORDON @WHITE
自分にとってSonic Youthは特別な存在です。SYによって音楽観が歪められ、拡張され、支えられている。サーストンとシェリーには2014年のHCWで会えました。あとはリー、そしてキム・ゴードンなのです。
ベスもそうですが、リスナーの「とりあえず見ときたい」というナメた予防線を、"新譜"で叩き潰し、2024年の今"現役"でフェスに臨んでいるのが凄すぎる(そのタイミングで観れることにも特大感謝)。意気揚々と「キム・ゴードンはどこがすごいのか?」「『The Collecrive』は何故ロックリスナーにも響くのか?」と書いていたら3000字を超えたので、それは別記事にしましょう。
ライブの話。
いや、こんな71歳おる?凛としすぎだろ。年齢に対する立ち姿の美しさに驚いていると、ここ10年位のホワイトステージ・ヒップホップアクトなド低音に足元がグラつき。ロックバンドたる暗黒轟音ノイズによって彼方までブッ飛ばされる。あまりに現役すぎる開幕「BYE BYE」は圧巻よりも呆然に近かった。
ふれておきたいのはバンドメンバー。多分Gt. Sarah Registe(グラミー賞ノミネートエンジニア、Shame、Big Thief『Masterpiece』など)、Dr. Madi Vogt (Mal Not Badほか)、 Ba. camillabasskilla(レニー・クラヴィッツ)。見た目が若くラフなので「近所の才能ある子を集めた感」あるでしょう。いや恐ろしい精鋭です。そしてキム・ゴードンが一番すごいのは「触媒」である点です。この音楽性にバンド編成で臨み、出音のほぼすべてをバンドメンバーに託して、自分は「キム・ゴードン」を全うする。だからここまでカッコ良い。
新譜でもベストトラックである「The Believers」は最早ブラックメタル。ブルーズの換骨奪胎たる「Grass Jeans」に唸り、ラスト、おかわり「BYE BYE」!禁じ手なのに何故か死ぬほどカッコイイ!!向井秀徳は正しかったんや……。アンプにギターを擦り付けるキムの姿が観れてSYファンとしても成仏した。
カッコイイとか憧れよりもう「生きざま」が在りました。オルタナ、ライオット・ガール永遠のゴッドマザーに敬服。
■THE ALLMAN BETTS BAND @FIELD OF HEAVEN
泣く子も黙るサザンロックの伝説ことオールマン・ブラザーズバンド、の息子たちによるバンド。この日の移動は意味わからんくて、「toe→The Meters→Kim Gordon→Allman Betts Band」。でもこのムーブのひと割といましたよね?これがフジロックだ(?)。
ただ、流石にキム・ゴードン食らった後にこのルーツ・ミュージックにピントを合わせなおすのは難しかった。自分としてもヘブントリ辺りのアクトへの期待値って物凄く高くて(Cory Wong、Dawes、Greensky Bluegrass、Kamasi Washingtonなど)……ベッツ・バンドは間違いなく「すごく良い」けど、「ヤバい」と「ファンキー」がすこし足りなかった。自分の根はパンクとエモ、そして理解を超えたものへの畏怖なんです。
とはいえ演奏と出音はやはり最高で、何よりこの日一番の大音量(轟音とは違う物理)が浴びれて、ホワイトで物足りなかった分を摂取できました。「Blue Sky」のツインギターハモリが聴けて嬉しかった!
■TURNSTILE @WHITE
嵐を呼び込む新世代ハードコア風バンド。今回来日に合わせて猛プッシュされてましたね。音源はハマらなかったのですが目撃してみました。
個人的にはライブの出音──スネアの音、Vo,. Drとその他の音量バランス──に違和感が強かったですが(やはり今年のホワイトは例年より音量を抑えていたと思う)、以下の記事やs.h.i.さんのツイートをみてすこし納得しました。
演奏姿勢はめっちゃカッコよかった。感じたのは、ハードコアパンクやニューメタルのフォーマットを借りつつ、その正統派ではないということ。凄いのは、それでいて「良いとこどり」の嫌味を一切感じないことです。これはなんでだろう、もう「人柄」によるものじゃないかと。だって彼らはどう見ても本気(マジ)です。観客をステージに上げることもバンド側がリスクを負っている。誠実な暴動。「盛り上げ上手」以上に「一緒に盛り上がろうとしている」身近さがあって、そこが彼らのライブの魅力に感じます。
これを機にDCハードコアの歴史なども振り返られたりしたら嬉しいな、なんて。モッシュ、ダイブやサークルは、何より思いやりがあって成り立ります。Turnstileと観客が作り上げる空間は奇跡的なものです。自分が暴れたいだけの門外漢に侵されず、願わくばこの奇跡が続いていきますように。
ということで2024年フジロックでした。
最近は終わるたびに「また来年!」とそう言える楽しみがある嬉しさを嚙み締めます。SEE YOU IN 来年~~
サポートがあると更新頻度が上がります。